春の端から。


杪春の候という曲のMVをリリースしました。
びょーしゅんのこーと読みます。

友人でもあるSHUN+PEI氏によるディレクションで
3月27日にパンゲアにて行われたライブの映像をそのままMVに落とし込んでもらいました。
いい仕事。ありがとう。

杪春の候とは、手紙の書き出しの挨拶なんかで使われる表現らしく
春の終わりにいかがお過ごしですか?
的な意味らしいですよ。

近頃はなんだか季節も曖昧で、寒いと思えば暑かったり。
春って短くなってる気がするな。
なんて、毎年言ってたっけ?

街をふらりと歩いて、すれ違う人の波。
ほとんど全員知らない人だけれど、みんなに人生があって
親があって友達もいて。
愛称なんかもあって、誕生日にはお祝いしてもらったりして。
そんなことがすれ違う全員分、ストーリーとしてあるなんて考えたら気が遠くなってしまうな。
けど、紛れもない事実で。
すれ違う誰かはもしかしたら親戚かもしれない。
もしかしたら前世のあなたかもしれない。

やたら甘い香水の匂いがして、なんだか脳裏によぎることがあって。
記憶の端にチラつく情景が目の前の景色の上から何かを伝えようとしている。
靴紐が解けて、でも人の波が気になってなかなか自分のタイミングでしゃがみ込むこともできないでいる。

大きな流れが生み出す渦の中で、確か手を繋いでいたような。
でも、それは誰だったんだっけ。

記憶、記録、朦朧としてぼやけてゆく「何か」にも
もう何も思わなくなって
手放すことによって得た幸福を手放すこと自体が産む苦痛で中和した後に残ったものは、どこか不純な物のようで完全に結合しきらないで、はみ出した断片が透明の中にあるようで。

知覚できないはずの違和感を手応えに生きる日々の危うさに、復讐の意味を込めてしたためた手紙のような曲です。

ぜひご一聴ください