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神戸シェアサロン大戦争!

「シェアサロン」とは、時間単位または日単位でスペースを貸し出すハコモノビジネスです。ちなみに同義語である「レンタルサロン」もありますが、レンタルサロンはどちらかと言うと施術ベッドが置かれており、エステ、整体、リラクなどに適したスペースを指します。一方、「シェアサロン」は主に面貸しの美容室を指す言葉として浸透しています。

そんなシェアサロン業界で今回、知名度・店舗数ともに実績があるGO TODAYとSALOWINの両社が、三宮の一等地であるTHE PEAK KOBE SANNOMIYAビル(兵庫県神戸市中央区三宮町1-4-8)の同じフロアに出店することが決定しました!

今後、両者は壮絶な競争を繰り広げる事になると思いますが、第三者として俯瞰して見てみると、この立地で高い収益性が見込めるのかは懐疑的です。

何故なら神戸で月間100万前後の売れっ子美容師は少ない事、また転貸ビジネスである以上、差益商売であるのに家賃相場が高いこの物件では損益分岐がどうしても高くなってしまうからです。

さて、ここで日本の美容室業界において「シェアサロン」が誕生した経緯について簡単に解説します。

1990年代後半の「カリスマ美容師ブーム」、そして木村拓哉さん主演ドラマ「ビューティフルライフ」により、美容師の数は爆発的に増加しました。

当時、美容室のビジネスモデルは一人の美容師にアシスタントを2〜3名つけて同時施術を行うことで高い収益率を誇っていました。

しかしそれは顧客満足度の低下という弊害も生んでいました。そこで、アシスタント制度を廃止しながらも高い給与で美容師を集めるために生まれたのが、業務委託のシェアサロン(面貸しサロン)です。

大阪では2002年に最初の面貸しサロンとしてDsalonさんが誕生し、同年には私が現在勤務する会社でもサイドビジネスとして面貸しサロンを開業。

私は事業開始の翌年にジョインして財務等を担当することになりましたが、蓋を開けてみればカット面10台の美容室で損益分岐が800万円という異常な状態でした。すぐに全員の歩合を10%下げたことで、私は恨まれたと思います(笑)。


当時の状況はこんな感じ。

原価   40%(業務委託)
薬剤   10%
光熱費 10%
家賃  10%
雑費  10%(決済手数料5%等)
償却  10%
ーーーーーーーー
利益  10%

なお当時シェアサロン(面貸しサロン)では、サロン側が集客を行い施術単価もある程度コントロールしていました。

しかし現在のGOTODAYさんやSALOWINなどは美容師さん自身が集客を行い施術単価を決定出来ます。

これはSNSの浸透で顧客がサロンを指名するのではなく、施術者を指名する流れが加速した事で、フリーランスとして独立開業しやすくなった事や、ホットペッパービューティーに掲載しても店舗単位では集客が難しくなった事が挙げられます。

ちなみに、最近は独占的に1つのスペースを専有できるタイプと共用タイプがありますが、専有的に利用するには美容師さんが美容所登録する必要があります。(1つの区画にカット面とシャンプー台がある場合)

しかし店舗物件を借りる際、賃貸借契約上は転貸が認められない場合がほとんどです。
そのためGOTODAYさんの様なビジネスモデルだと、美容師さんと業務委託契約することで転貸とならない様に配慮しています。

また業務委託契約の場合は、勤務時間の拘束や施術に必要な薬剤等の無料供給はできませんし、常に2名以上の美容師がいる場合には「管理美容師」を置かなければならないと美容師法で定められているため、シェアサロンといっても従業員の美容師さんも所属している場合がほとんどです。

このあたりからも業務委託契約として運営されていると推測できます。

次に保健所には、入退社ごとに保健所に届け出が必要ですが

業務委託とは従業員ではないですし、保健所は地域ごとに見解がことなるため、最寄りの保健所に確認が必要かと思います。

そんなわけで、GO TODAYとSALOWINさんは美容室を経営している訳ではなく、百貨店と同じテナントビジネス(転貸)であると言えます。

このあたりは、この記事も参考になります。

で、このシェアサロンというビジネスモデルが今後も活況を続けられるのかというとそれは簡単ではありません。

1つに、少子高齢化で美容師のなり手が不足している事、また美容学校を卒業してすぐに見習い期間がなくデビューできるマツエクに流れてしまう方が多いからです。

もう1つ構造的な問題として、カリスマ美容師ブームの頃に美容師となった方は既にドロップアウトしているため、技術継承する機会が少ないという問題もあります。
つまり、シェアサロンとは人を育てる場所ではなく、ハコモノビジネスであるため誰かが優秀な人材を育ててくれる必要があります。

しかし、多くの美容室でサロンオーナーを除いて30代後半以降の男性スタイリストを見ないのは多くが佐川など運送会社などホワイトカラー以外に転職しているからです。その理由は単純で美容に関して年齢が高い男性に触れられたくない女性が多いのです。

つまり、美容学校を卒業しても接客や技術を身につける場がないため、フリーランスとして成長できる機会が失われているのです。

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