見出し画像

革命

パクチーハウスはスタッフやゲストの後押しとさまざまな偶然を掴んだことによって図らずも革命的な店となったけれど、パクチー銀行はさらに強力な周囲の後押しと偶然を楽しむゲストの影響で革命を起こすかもしれない。そんなことを感じた1日だった。

新年から数えて89日目の今日(正確に言うと閏年なので昨日が89日目だったが、2月29日は都合によりカウントしなかったw)。この日を「セントパクトリックデー」に制定してから9年だ。

平和(PAX)に関するトリックをしかける日として、くそまじめにではなく気軽に世界とその平和について話ができればと思って制定した。1回目はたしか、投稿に呼応した国際協力系の友人の声がけで、紛争中のシリアから逃れて来た方と飲むことになった。今年はなにをしようかと思いつつ、思いついたのが「ただコーヒー/ただビールを飲もう!」というイベントだ。

パクチー銀行で1年半ほど前からペイフォワードの仕組みを取り入れた。パクチー銀行券またはコーヒー回数券を買って壁に掲示してある。誰でも買えるし(オンライン含め)、誰でも使える。買う人に比べて、使う人が少ない。「そのチケットをちぎれば、ただでコーヒー飲めるよ」と提案しても、多くの人は恐縮してしまうか、使ってみてそれ以上の額をペイフォワードに費やす。

単純に言うと、ペイフォワードの受け手が不足しているのだ。そこで、コーヒーとビールを無料に(強制ペイフォワードチケット適用)しようというのがこのイベントの趣旨だ。イベントページを作ったのでただでコーヒーやビールを飲む友人たちが賑やかしで来てくれるだろうと思ったけれど、それはほとんどなかった。友人たちが何人も来たが、そのことを知らずに来ていた。一生懸命告知しても伝わらないことを実感。

まぁ、知っていても知らなくても、会計時にコーヒーとビールはすでに支払われているため無料であることを伝える。趣旨を説明した紙を手渡し、「今日はラッキーですね」と伝える。ゲストは紙をじっと見つめて熟読する。一緒に来た友人となにやら話をしているようだが、僕はすでに遠くに離れているのでよく聞こえない。注文したものの「代金は不要」というのだから驚くのは当然か。

「本当に・・・いいんですか」とか「いや・・・払いますので」という反応が多いと予想していたが、実際はそうではなかった。説明文を理解し、恩送りのコンセプトを実体験し消化したようだ。次につなげたい方はパク天神に喜捨するか、どこか別のところで誰かにパスしていただければということが、きちんと伝わったようだ。

ゲストの様子はいつもと少し違った。読んだ後、ほとんど全ての人が、僕に話しかけてきた。ペイフォワードに関することではなく、鋸山の感想や自分が社会に対して思っていること、など。僕はいつも、隙あればゲストに問いを投げ、その人となりをできるだけ知ろうと努力している。が、今日はみんな自主的に語り出したのだ。

「お金を払う」「お金を受け取る」という垣根を壊して、お金の概念を壊す。そして、店と客という境目も無くす。それが結果として現れたのが、ゲストからの積極的な語りかけだったのだと思う。1人ひとりとの会話が特別にいつもと違ったわけではない。しかし、約30人のゲストの思いや眼差しを直接吸収しているうちに、ちょっとした発想や行動を転換するだけで「革命」は起こせるのではないか。そう感じた。

今日最後のゲストは、ロシア人の4人組だった。先日、ロシア駐在経験もある新聞記者の友人に、「戦争はしているけど、ロシア人は結構観光で来てるよ」と聞いた。ロシアとウクライナの戦争が始まって以来、旅仲間と「シベリア鉄道にはもう乗れないかもね」なんて話をしたことがあるが、国家とその行為と人々はきちんと分けられているのだということを目の当たりにしてホッとした。お金も国家も、徐々に溶かしていきたい。

佐谷恭の「パクチー起業論」2024年3月30日号より


当日、ゲストに渡したカード(日本語/English)



この記事が参加している募集

仕事について話そう

パクチー(P)コワーキング(C)ランニング(R)を愛する、PCR+ な旅人です。 鋸南(千葉県安房郡)と東京(主に世田谷と有楽町)を行き来しています。