向日葵は心に咲く花である

「向日葵の ゆさりともせぬ 重たさよ」

明治、昭和初期を代表とする詩人・作家の北原白秋は、向日葵を題材にこんな句を詠みました。風にも動じない堂々とした向日葵の強さを表現しています。夏に太陽なような大きな花をつける向日葵の花、太陽のような鮮やかな黄色です。洋名でサンフラワーともいいます。原産は北アメリカ、向日葵は様々な作品のモチーフとしてもよく使われます。

歌人の若山牧水も『樹木とその葉』夏のよろこびで、「向日葵の花、磨き立てた銅盥（かなだらひ）の輝きを持つて、によつきりと光と熱との中に咲いてゐる。歩み移る太陽の方にかすかに面を傾くるといふにもこの花のあはれさが感ぜられる。づばぬけて大きいだけになほ」と表現しています。真夏の暑さの中で、それでも太陽に顔を向ける向日葵を「あはれ」といいます。ここでいう「あはれ」は現代で使われるネガティブな表現ではなく、しみじみとした情趣をうつし出す表現のひとつです。他にも、夢野久作、森鴎外、岡本かの子の作品などにも登場し、多くの歌人や作家にも愛された花であることがわかります。

宮沢賢治の作品にも登場します。ファンタジーの世界の中にも向日葵はよく似合います。

アニメにも向日葵はよく登場します。「ひまわり」という名前は女の子の名前の王道です。『クレヨンしやちゃん』のしんちゃんの妹は野原ひまわり。父ひろし、母みさえの長女として野原家に降臨したまさに太陽のような存在です。『NARUTO -ナルト-』の七代目火影となったナルトとヒナタの娘はうずまきヒマワリ。マイナーなところでは『ビビッドレッド・オペレーション』の主要メンバーのひとり四宮ひまわりは黄色を纏います。ストレートに日向ひまわりを主人公とする『ひまわりっ!!』という作品もあります。

個人的には向日葵がひとつキーになっている「ひまわりの匂いのする侍」を探して旅をする『サムライチャンプルー』という作品がお洒落で面白くて好きです。江戸時代なのに主人公のひとりはスタイリッシュなメガネをしています。映画でも『いま、会いにゆきます』『星守る犬』など向日葵が印象的な作品もあります。何か心を動かすモチーフとして、心を動かす演出道具としても使われます。映像的にも一面の黄色は見栄えがします。

絵画の世界にも向日葵はよく見られます。向日葵の絵を思い出すとまず思いつくのがゴッホではないでしょうか。