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「魅惑の心理」マガジンvol.97(行動経済学入門)

「魅惑の心理」マガジンvol.92では「コロナ禍での行動傾向」という内容で、行動経済学の視点でマガジンを書きました。連動してセミナーも行いましたが、ご覧になった方が行動経済学に興味を持っていただき、詳しく行動経済のことを知りたいと言われましたので、今回は行動経済、経済心理の入門として「行動経済学入門」というものはどういうものかをまとめたいと思います。

【行動経済学って何だろう?】

経済学というと「難しいもの」と思われているかもしれませんが、実は「貯金」「買い物」「給料」などの身近なものも扱います。そして経済学で語られる人は完璧で間違いや思い違いをしませんが実際の世界ではそんなことはありません。雰囲気に流されて間違った買い物もしますし、計画的に貯金もなかなかできないものです。行動経済学はこうした人の「心理」「行動パターン」を研究して導きだされた経済学です。理論とは違うおもしろくてリアルな経済学なのです。

[目次]
[CASE1]突然、給料が下がったら 〜下がるダメージと上がる喜び〜
[CASE2]同じ店でランチをしたくなる心理 〜失敗したくない心理〜
[CASE3]98円を安いと感じる理由 〜端数の秘密〜
[CASE4]妻の行動経済学 〜妻が虜になるお店の場所〜
[CASE5]夫の行動経済学 〜夫がつまらないものを買ってくる理由〜
[CASE6]日常に潜む不合理な経済活動 〜無料の魔力と危険性〜

6-1のコピー

[CASE1]突然、給料が下がったら 〜下がるダメージと上がる喜び〜
勤務先の会社が好調で月の給料に1万円追加してくれることになりました。評価と関係なく突然報酬が上がるのですから、とても得した気分になるでしょう。では逆に、会社の都合で給料から1万円引かれることになったらどうでしょう? 1万円上がったときと同じだけ悲しい気持ちになったでしょうか?

多くの人は上がったときよりも下がったときのほうが嫌な気持ちになります。同じ1万円なのになぜそう感じるのでしょう?

6-2(修正)

人は得をしたいと思うよりも、損をしたくないと考える心理があります。損をしてしまうと得をしたときよりも大きなダメージを受けます。これを人の「損失回避性」といいます。標準的な経済学では同じ1万円ですから上がったときの喜びも下がったときの悲しみも同じととらえます。しかし実際は大きく違うのです。行動経済学ではこうした理論の経済学から離れて、人間は感情でものを判断するという前提の基で、様々な感情傾向や行動傾向を知ろうとしています。

では様々なケースを見ていきましょう。


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