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「魅惑の心理」マガジンvol.94(否定人の心理学)

他人の行動をすぐに否定したり、多くの人が楽しんでいるものを否定する。昔からそういう人はいましたが、最近、何でも否定する人が増えていると思います。 10人10色と言われるように人は多様な嗜好を持ちます。たとえば、あるテレビドラマを見て、「面白い」「好き」と考える人がいたら、「つまらない」「嫌い」と考える人がいることは自然です。人は経験もそれぞれ違うし、その経験に紐付く感情も異なるからです。

しかし、みんなが「面白い」とつぶやくとそれを否定する「あんなのつまらない」とわざわざ意見を送ってくる人がいます。本来ならば面白くないと思えば、スルーすれば良いのに自分の意見をぶつけないと気が済まない。こうした人が目立つようになりました。こうした人はどんな心理によって突き動かされているのでしょう。

今回の「魅惑の心理」マガジンは、何でも否定する「否定人」の心理メカニズム、自分が否定人にならない方法、否定人とうまく向き合う方法を考えていきたいと思います。

○何でも否定する心理

では否定する人の心の中はどうなっているのかを見ていきたいと思います。何でも否定する人の心理は複雑で、複数の原因があると考えられます。その原因をひとつひとつ丁寧に見ていきたいと思います。

・尊厳欲求の歪み
人は誰でも尊敬されたい、すごい人と思われたいと考えます。本来ならば努力をして成果を出し、その成果をほめられることで気持ちよくなりたいと考える欲求です。ところが最近は、この努力をしないで、安易に尊敬されたいと考える人がいます。すると自分以外の人や物を否定して、対象物の価値を下げ、相対的に自分の価値を上げようとする人かいるのです。

努力をすることは大変なことです。時間もかかりますし、ときには苦痛も伴います。一方、否定することはとても簡単なことです。具体的に、論理的に何が悪いか良くないかを説明しなくても「僕は悪いと思うんだよね」「私は嫌い」と言ってしまえば良いのです。そのため、何でも否定する人は明確に何が悪いかを把握していないことが多くあります。

何でも否定して自分を安易に高めようとする行為は決してほめられたものではありません。なぜなら、不快に感じる人がいて、その不快のおかげで自分の欲求を満たす構造をしているからです。ただ、否定する人が全て悪いかといえばそんなことはないと思います。今の社会は人の努力を認めない。頑張っても評価されず、努力することに価値を見出せないような社会の構造もまた悪いと思うのです。私たちは努力しても認められないかもしれないけど、そこで負けないで努力ができるようにならないといけませんし、この社会の構造を頑張った人が認められるような形にしていくことも必要かもしれません。

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