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知らないと損する「損失回避性」とは?(行動経済学)

最近、人の心理で顕著な変化があるものに「損失回避性」が高まっていることがあげられます。人は「得をしたいと」考える人よりも「損をしたくない」と考える人のほうが多く、損失回避性とは得よりも損を高く見積もる傾向のことを言います。多くの人は得をしたときに得る喜びの感情よりも、損をしたときに感じる感情のほうがより大きいのです。この損失回避性は人の本質的な心理で非常に強い心理効果です。この性質を知らないと企業の商品開発やサービス考案、政治の施策、人間関係までうまくいかない可能性があります。

ポーポー・ポロダクションでは損失回避性の研究を続けており、日本でもっとも詳しい研究者のひとりです。本コラムは損失回避性の説明に加え、いくつかの関連効果を解説しています。「損をしたくない」と思う消費者、不安により冷静な判断ができないと思う方、商品開発、サービスに携わっている企業の方はぜひ知っておきたい心理効果です。

もくじ

1 人の「損失回避性」とは?
2 なぜ若者はギャンブルをせず、車にも乗らないのか?
3 「得をしたい気持ち」と「損をしたくない」気持ちの差はどの程度?
4 損失回避性の関連効果を知らないと損をする
 ○女性の「紙幣効果」を知れば男性はもてる?
 ○夫の「保有効果」を理解して夫の荷物を整理する
 ○「松竹梅効果」を活用すると人の選択を誘導できる
○「コンコルド効果」を知ってムダな投資を捨てる
5  ある企業の失敗例に学ぶ


1 人の「損失回避性」とは

たとえばこんな状況を考えてみてください。
会社の業績が好調で社長が気前よく来月から社員の給料を一律1万円上げてくれることになりました。仕事の評価と関係なく給料が上がるのですから、とても得した気分になるでしょう。
では逆に、会社の都合で来月の給料から1万円下がったとしたらどうでしょう? 1万円上がったときと同じだけ悲しい気持ちになったでしょうか? 

多くの人は1万円上がったときよりも1万円下がったときのほうがはるかに嫌な気持ちになります。同じ1万円なのになぜなのでしょう?
人は得をしたいと思うよりも、損をしたくないと考えるからなのです。

人は損失を回避しようとする強い感情を持っています。この傾向は本来はシニア層に強く、男性よりも女性が強く持ちやすい傾向があります。2015年、住民投票で大阪都構想が否決されました。これに反対した多くはシニア層だったといいます。シニア層に変わることのメリットを言っても効果は薄いのです。「今に満足しているわけではない」「でも今よりももっと悪くなったら嫌だ」そんな心理が見えてきます。政治の世界でもこれからは人の損失回避性を知って、対策をとっていかないと多くの人から賛同は得られません。

そして最近、この損失回避性にも変化が見られるようになりました。

それは…

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