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「魅惑の心理」マガジンvol.46(他者も自分も救う「余裕術」)

買い占め行動に見られるように、今の人は不安がいっぱいです。今の生活を維持できない恐れ、変化への不安、自分だけ損をするのではないかと感じてしまう。そんな感情があると、他者のことに構っている余裕もありません。何しろ現代人は余裕がなさすぎです。

買い占めをしてしまう人の心理は、前回詳しく解説しました。こちらも参考にご覧ください。

現代人はなぜ余裕がないかというと、いろいろな問題があり、長年の社会環境がそうした性格を形成したと考えられます。もっとも大きな理由は、「魅惑の心理」マガジンでも何度も出てきていますが、人の損失回避傾向が高まっていることがあります。損失回避が高まっている理由もいろいろとありますが、社会全体が失敗を許さない環境になっていて、ひとつの失敗が致命傷になるという錯覚を持ちやすくなっていることも大きいと思います。テレビでは毎日、不安を煽る報道が続きます。こんな環境では誰も余裕がなくなるのは当たり前です。つい流されてしまいます。

余裕がなくなり、損失回避性に支配されると、人は自分が損をしたくないので、損を回避しようとする行動に出ます。ところが、この行動には不合理なものがたくさん含まれていて、必ずしも自分が得をするとは限りません。超短期にみると確かに得をするかもしれないのですが、その行動は中長期では自分の首を絞めていることもあるのです。

今の私たちに必要なのは「不安感」「焦り」ではなく、「余裕」です。この余裕は自分の未来を救うことにもつながります。最強の余裕術を身につけて、トータルで得をしましょう。そんな話を後半していきたいと思います。

○人にものを譲るのは、損をするの? 得をするの?

私たちの周りには、不足しているものと過剰にあるものが混在しています。人によっても足りない人と余っている人がいます。余っている人は不足している人にものを譲ったほうが良いのでしょうか? それとも未来のために抱えておくほうが良いのでしょうか?

新型コロナウイルスの不安感から、マスクとトイレットペーパーは同一素材でできているから次に無くなるといったデマがきっかけで、市場から一瞬、トイレットペーパーの関連商品が姿を消しました。この爆発力は強烈でしたね。私も何人も両手で抱えられないほどのトイレットペーパーを抱えた人とすれ違いました。人の不安感の大きさを物語っています。

こんな中でツイッターでは譲り合いの精神を賞賛するものを見かけることもありました。トイレットペーパーが無くなりそうな店がトイレットペーパーを持ってきてほしいと呼びかけたら、たくさん集まり、逆に足らない人に配ったり、薬局に行ったら無くてがっかりしたら、店主が訳あり商品を1ロールくれたりというツイートを見つけてほっこりしました。こうした対応をしたお店は良い印象を持った人も多くいると思います。常に潤沢に抱えようとすることと、人に譲ることそれは、本当には抱えたほうが得なのでしょうか?

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