会場探し2

サマリ

  • 株主さんの席数は会場側が示す収容人数よりも減る

  • 必要性の高い設備が会場費に含まれるかどうかを確認する

  • 本予約する場合はキャンセルポリシーに注意する



今回は、株主総会の会場探しのポイント(後半)3点を書く。
(前回の記事、こちら)

5. レイアウトの確認

会場の収容人数は、レイアウトに左右される。多くの会社さんで使用されるレイアウトはシアター(椅子だけ)、次いでスクール(机と椅子のセット)といわれる。スクールの場合、シアターの場合に比べて、会場に配置できる椅子の数は50%から70%程度になる。来場する株主さんの数を推測しながら、適切な会場を選択したいところである。

レイアウトを決めたら、そこから差し引く席数を見積もる。ポイントは次の3点である。

(1) 役員席と事務局席

役員席は、机と椅子のセットで、会場前方に株主さんと正対する形で水平配置される。役員の顔を株主さんによく見てもらうためだ。役員数が少ない場合は、議長席と発言席を中心として、左右に一列ずつ役員席を配する。このとき、雛壇を使用して会場の後ろの方の株主さんにも役員の顔が見えるようにするか、雛壇を使用すると株主さんに対して上から目線の印象を与えるため避けるかは、好みで判断すればよい。他方、役員数が多い場合は、役員席を左右に前後二列ずつ配する。後列の役員席は、雛壇を使用して一段高くするか、前列の役員席と互い違いにするか、どちらかを選択する。会場の横幅の関係で、役員席を水平に配置できない場合には、役員席を株主さんの方にせり出す形で斜めにすることもある。

事務局席は、机と椅子のセットで、株主さんの席から見て役員席のすぐ後ろ側に配置される。株主さんとの質疑応答時などに、事務局が役員に対して直ちに補助や助言を行うためだ。配する机の数は、事務局の人数による。事務局の人数が多い場合は、会場前方に対して直角の形にする。事務局の背中を株主さんに見せないためだ。

ちなみに、株主さんの席は、必ず役員席の前方(事務局席の反対側)に配置する。役員席の横手や、役員席の後方(事務局席側)への配置はお勧めしない。株主さんが役員に詰め寄るなど不測の事態への対応が困難となるからだ。

机は一間(いっけん)テーブル(1800mm x 900mm)を使用、議長席と発言席を中心として役員席を左右に一列ずつ水平配置、事務局席を会場前方に対して直角配置する場合、会場前方に、4メートルから5メートル程度のスペースを確保する計算である。この分だけ、株主さんの席数は少なくなる。

(2) ビデオ撮影スペース

株主総会をビデオ撮影することがある。撮影目的は、社内記録、またはバーチャル株主総会での配信である。会場最後方の議長席や発言席と正対する場所で三脚を広げる場合、2メートルから3メートル四方のスペースを確保する。シアターの場合、6席から10席程度、株主さんの席が少なくなる計算である。

(3) 縦長会場

会場の中程にモニターを設置することも一案である。縦に長い会場の場合、会場の後方にいくにつれて、前方のスクリーンに投影される文字や役員の顔が判別しづらくなるためだ。モニターを会場の横手に設置する場合は、1席から4席程度、株主さんの席が少なくなる。他方、モニターを株主さんの席の合間に設置する場合は、注意が必要である。モニター設置スペースの分だけ、株主さんの席数は少なくなることに加え、「目がチカチカする」、「邪魔だ」といった苦言を株主さんからいただくことになる。

もし、役員用の前室(控室)も確保する場合は、控室の場所と、控室から会場までの導線も確認する。控室が会場と同じフロアにないときは、控室を出てから会場にたどり着くまでの時間と、道中で株主さんと鉢合わせしないかを確認する。株主総会の開催時刻に遅れないようにするためと、株主さんによる不測の事態を生じさせないためだ。

シアター、役員席を左右に一列ずつ、事務局席を会場前方に対して直角の形、ビデオ撮影スペースあり、縦長会場のレイアウトイメージは、次のとおりである。

6. 会場の設備確認

(1) どの会社さんでも必要性の高いもの

会場の利用料(会場費)には一定の設備や機器の利用料が含まれる(別料金が発生しない)。例えば次のものである。肌感覚では、ホテルの場合はすべて会場費に含まれ、貸会議室の場合は下の項目にいくにつれて別料金となる。

  • マイク(無線)3-6本
    議長や発言する役員、役員に質問する株主さんが使用する。株主さんが使用するマイクは、マイクスタンドを使用して一定の場所に固定する場合と、会場内によるスタッフが株主さんの席まで運ぶ場合がある。後者の場合は、スタッフ1名がカバーできる範囲を検討し、それに応じて必要なマイクの本数を決めるのがよい。質問する株主さんが多いのに、マイクの本数が十分でないと、マイク運びの時間だけ株主総会の開催時間が延び、株主さん、役員ともに、不満が蓄積する。

  • スクリーン
    会場前方にあり、プロジェクターを使用して事業報告などのスライドを投影するためのもの。スクリーンの面の数は、会場の設備状況と、レイアウトによる。横長会場の場合は、スクリーンが2面あるかどうかを確認する。左右の株主さんにとってスクリーンに投影されるスライドが見づらいといった不都合があるためだ。

  • 案内板(サイネージ)
    株主さんへの案内と、部外者が会場に近づくことを避けるために使用する。案内には「株式会社xx 第x期(回) 定時株主総会」と表示される。会場のエントランスやフロアマップの近くに置かれる。

  • プロジェクター
    事業報告などのスライドを投影するために使用する。

  • 演台
    議長席と発言台として使用する。役員席と同じテーブルを使用することはお勧めしない。手元の資料を読むために目線を下げる結果、声量が小さくなりがちになるからだ。

(2) 会社さんごとに必要性が異なるもの

他に確認する設備には、次のものがある。肌感覚では、ホテルの場合はパーテーション、受付台、案内係(会場側)とクロークは会場費に含まれ、貸会議室はいずれも別料金となるか、設備自体がないかのいずれかとなる。

  • パーテーション
    控室から会場までの導線を隠すために使用する。株主さんによる役員に対する不測の事態を回避するためだ。裏動線を使うため株主さんとの接触がない場合、導線が短い場合、そもそも不要と考える場合は、パーテーションは不要である。

  • 駐車場
    主に株主総会を開催する会社さんの役員のため。会場(または控室)までの導線も確認する。ホテルの場合、駐車場から搬入用エレベータ、また直通エレベータを使用して目的の階に降り、裏動線を使って会場(または控室)入りできることもある。

  • 喫煙スペース
    主に株主総会を開催する会社さんの役員のため。会場備え付けの設備である場合、会場(または控室)までの導線や各設備の利用時間帯のほか、利用時のカードキーの要否も併せて確認しておく。セキュリティ対策で、そのキーなしには利用できない設備もあるからだ。公共施設を利用する場合は、役員が迷子にならないように、また開催時刻前に控室などに戻ってくるように、念押しするか、秘書など見張り役を付けるのが安全である。

  • 受付台
    株主さんから議決権行使書を受け取り、会場に入場する資格があるかどうかを確認するために使用する。ホテルの場合、受け取った議決権行使書の数が一定程度になったら、それらをまとめて集計係に運ぶために使用するお盆を用意してくれるところもある。

  • 案内係(会場側)
    ホテルの場合、ホテルの他の利用者が会場に近づかないように、ホテルの敷地内に、会場までの案内係を2、3名割いてくれる。

  • 水差しとコップ
    議長が喉を潤すためと、気分を落ち着かせるために使用する。水差しに入っている水の量が多いとコップに注ぐのが大変なので、水差しの3分の1から半分くらいまでの量に抑えるのがよい。議長席に置く。株主総会で話す言葉は独特である。「招集『ご』通知」という言葉を噛む議長、シナリオ(台本)を無視する議長は少なくない。プレゼンに慣れている議長であっても、普段どおりに話してもらうために、水は重要である。

  • 卓上モニタ
    議長席に乗る程度の小さなモニタである。モニタにはスクリーンに投影されるスライドと同じものを映す。議長が都度スクリーンを振り返らずに済むようにするためだ。卓上ではなく、議長席の前に大画面モニタを置くこともある。その場合は、議長の目線が下がって声量が小さくならないように注意する。モニタの設置場所を確保するため、会場前方の株主さんの席数をさらに差し引くことも要考慮である。

  • テーブルクロス
    ホテルや一部の貸会議室の場合、役員席のテーブルにクロスをかけることも検討する。見栄えの問題である。

  • スイッチャー
    複数台のPCをつなぎ、スクリーンや卓上モニタに投影するスライドを適宜切り替えたいときに使用する。スクリーンと卓上モニタとで別のスライドを投影することも可能である。具体的には、①事業報告や議案の説明時などはスクリーンと卓上モニタとで同じスライドを、②質疑応答時はスクリーンには「質疑応答」のスライドを、卓上モニタには想定問答集のスライドを投影するといった形で使用する。スイッチャーを使用する場合、会場選定または自社選定の機材業者さんに確認する。

  • 緞帳(どんちょう)
    ホテルの場合、会場前方の内装を布で覆うことがある。見栄えの問題である。

  • クローク
    ホテルや一部の貸会議室の場合、貴重品を預けられる場所がある。受付係は株主さんの貴重品を預かってはならない。トラブルの種となるためだ。

  • 姿見(鏡)
    役員の上半身は会場の自席に着席した後も株主さんによく見える。髪型や服装の乱れがないか、会場に入る直前、または控室を出るときに必ず役員に確認させる。

  • コーヒーポットサービスその他ケータリング
    控室にコーヒー数十杯分を運んでもらうことが可能である。ホテルの場合は自館の飲料部門で、一部の貸会議室の場合は同じ建物内のコーヒーチェーン店で調達する。加えて、ホテルの場合は飲料水、お湯、ティーバック(緑茶など)も用意してもらえる。軽食を希望する場合、ホテルでは自館のレストランを、一部の貸会議室では提携のケータリングサービスを案内してもらえる。


7. 会場の予約

予約の方法には2つある。仮予約と(本)予約である。仮予約は実際にその会場を使用するか未確定である場合に行う。もし他の会社さんがその会場の使用を希望する場合は、その予約完了前に自社に連絡してもらうようにする。仮予約の期間は短い。「自社で必要な決裁を取らなければならない」と説明しても、3週間から4週間程度が限度である。会場側に迷惑をかけてはいけないので、仮予約の期間を無理に引き延ばしてもらうのは、避けるべきである。

(本)予約をすると、自社がキャンセルしない限り、他の会社さんがその会場の使用することはできない。他方、キャンセルする場合には、キャンセル料が発生する。キャンセル料が発生するのは株主総会の開催日の何日前からなのか、キャンセル料(料率)はどれくらいか、(本)予約前に必ず確認する。


以上が株主総会の会場探しのポイントである。会場に関することは、株主総会に関する他の記事の中でも触れていく予定である。


記事の目次は、こちら


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