見出し画像

世界史漫才再構築版23:宗教騎士団編

 苦:今回は十字軍運動の中から出現した騎士団です。
 微:ああ、少しのコードしか弾けないリーゼントの馬鹿バンドだな。
 苦:それは氣志團だろ! さて1096年から聖地で活動する騎士団あるいは騎士修道会が結成されますが、ヨハネ騎士団、ドイツ騎士団、そしてテンプル騎士団が三大騎士団に数えられます。
 微:ゴジラ、ラドン、モスラでキングギドラたるイスラームに挑んだようなもんか。
 苦:いや、騎士団側が侵略者というか迷惑かけた側なんで逆ですね。
 微:じゃあ、その凶悪犯罪集団のプロファイリングだな、今回は。
 苦:聖ヨハネ騎士団は現在もあり、今の正式名称は「ロードスおよびマルタにおけるエルサレムの聖ヨハネ病院独立騎士修道会」です。まあ、マルタ騎士団の方が通じるでしょうが。
 微:ワタシも2008年の年末をそこでお世話になり、無事に新年を迎えました。
 苦:キミは日比谷公園だろ! 聖ヨハネ騎士団は1023年ごろ、アマルフィの商人がイェルサレムにある洗礼者ヨハネ修道院跡に病院を兼ねた巡礼者宿泊所を設立したことに始まります。
 微:十字軍より70年以上早いな。サンダーマスクみたいに早く着きすぎたんかな?
 苦:手塚治虫原作とはいえ、そんな無茶苦茶なC級特撮番組、誰も覚えていないよ!地道に活動を続け、1113年に教皇から騎士修道会として正式な承認を得ました。
 微:認可に90年かかったのか。オレの年金記録の復元もそれくらいかかるだろうな。
 苦:笑えねえよ! それよりも、90年間活動できるだけの巡礼者が11世紀に継続していたことに驚くべきです。相続からあぶれた騎士や貴族の次男三男だけが十字軍じゃないんです。
 微:そうだな、そいつらを食いものにする業者こそがオリンピックの本当の主役だと2021年に日本国民というか、納税者というか、ボランティアも気づきました。
 苦:オマエ、相当IOCを恨んでるな。
 微:いや、電通とかパソナとか「中抜き」企業に怒ってるんです。そしてジェノヴァに中抜きされて、貧相な食事に我慢した巡礼者にも心から同情しています。
 苦:他にもピサとかヴェネツィアとかあくどい商売していたイタリア都市あるだろ。キミは映画『キングダム・オブ・ヘヴン』を真に受けてないか?
 微:それはないけど、この前食べた冷凍スパゲティのジェノヴィエーゼが不味かったんで。
 苦:それはただの八つ当たりです。食あたりよりはまし、ということで流しますね。
 微:素麵かよ!!
 苦:どんどん明後日の方向に行ってるので本筋に戻しますね。
 微:おいおい、明後日の方向に行ったのはヴェネツィアが誘導した第4回十字軍ちゃうんか。
 苦:オマエは大木こだま・ひびきかよ!! ヨハネ騎士団がパレスティナから撤退したのは1291年にアッコンが陥落した、つまり十字軍運動が完全な失敗に終わった時です。
 微:まあ、十字軍国家自体が不意打ちな上に不法占拠だからな。
 苦:キプロス島に一旦逃れ、1309年にビザンツ帝国領ロードス島を奪って本拠地とします。
 微:この時の顛末をまとめたのが『ロドス島戦記』です。
 苦:それは20世紀末のラノベ! 1522年にオスマン帝国のスレイマン1世がロードス島を奪うと、ローマ教皇と皇帝カール5世の斡旋でマルタ島に移り、以後マルタ騎士団と呼ばれるわけです。
 微:仲介料として双方から月額家賃1か月分と礼金を請求され、泣く泣く払ったそうです。
 苦:悪徳不動産屋かよ!! ちなみに1571年のレパントの海戦にマルタ騎士団の船も参加してます。
 微:でも、自国の船舶の保護しかできないから、何もしなかったんだろ?
 苦:それはソマリア沖の自衛艦だよ! 一方、ドイツ騎士団の前身は、第3回十字軍にあります。
 微:まあ、『遅れてきた国民』だから、仕方ないな。
 苦:ナチスとは関係ないです。参加したドイツ出身の戦士たちを保護するため、ハンザ同盟の貿易商が資金を提供して設立された「ドイツ人の聖母マリア病院修道会」がその起源です。
 微:騎士団メンバーって、実は入院患者で、騎士団は体のいい隔離病棟だったのか? そう考えると気が狂ったとしか言えないような異教徒への憎しみも理解できるが。
 苦:似たようなもんかも。この病院修道会は12世紀末にテンプル騎士団をモデルとする騎士修道会に再編成され、教皇インノケンティウス3世によってドイツ騎士団として公認されました。
 微:それって、フリードリヒ・バルバロッサに参加しろ、という誘い水?
 苦:可能性はないとは言えません。でもドイツ騎士団は早くから中東を離れ、ハンガリー王の招きで1211年にハンガリー領トランシルヴァニアに移ります。
 微:ここでヴラド・ドラクラに残忍な処刑方法を伝授したそうです。
 苦:また時間軸が狂ってます。そして1225年にポーランドのバルト海沿岸に移り、異教徒からのカトリック世界防衛を担いました。
 微:騎士団業界のトルコ民族って感じだな。アルタイ山脈から流れ流れて。でも侵略もたいがい「自衛のため」「防衛のため」「攻撃を受けたのでやむなく反撃した」で始まるがな。
 苦:それは民族移動です。1230年には教皇グレゴリウス9世から、異教徒たちを倒すことは神意に適うと同時に、罪を贖う救済行為だとする教勅を与えられます。
 微:それを言ったのは稲田防衛大臣じゃないのか?
 苦:あの人には大概の日本人は異教徒ですからね。お墨付きを得て、ドイツ騎士団は遠慮なくプロイセン人の土地の征服に邁進します。聖戦思想はバルトの地で現実化したのです。
 微:当時の人々は”13世紀のイラク戦争”って呼んだそうです。
 苦:んなわけねえよ! しかし1385年にヤギェウォ朝ポーランド・リトアニア連合王国が成立し、リトアニアがカトリックに改宗すると、ドイツ騎士団国家は存在理由を失ってしまいます。
 微:存在理由を失うどころか、ヤギェウォ朝ってやばいんじゃないの?
 苦:その通りで、1410年にヤギェウォ朝とのタンネンベルクの戦いに大敗を喫し、ポーランド王の臣下となったのです。ただし、自治国に等しいので「公国」です。
 微:逆にプロイセン的な問答無用の暴力と農民を奴隷以下に扱うメンタリティが強化されたと。
 苦:エルベ以東がユンカーとグーツヘルシャフトの本場ですから。しかも大戦前のブラジル日系人が「日本人より日本人らしく」あるような強迫観念を生み出したのと同じ心理機制も。
 微:なるほど。じゃあ、こめかみじゃないや、テンプルに行こう。
 苦:最後に登場のテンプル騎士団は今は存在しません。フランス王フィリップ4世によって解体されるんですが、多くの伝説があり、今なお存続していると思っている人が多いんです。
 微:日本じゃ情報少ないからフリーメイソンを秘密結社と思っている奴も多いが。
 苦:フィリップ4世は13世紀末からのイングランドとフランドル伯との戦争費用の調達というか支払いに苦しんでいました。
 微:ああ、色々新しいことやって受験生を困らせている王様だな。
 苦:1306年には国内のユダヤ人を一斉に逮捕・資産没収・追放の暴挙に出ます。
 微:ユダヤ人は国王の所有物であって人間ではない、というあの理屈な。
 苦:それでも足りず、フランス内の教会に課税しようとして教皇ボニファティウス8世と対立したわけです。
 微:京都市も寺院に「古都税」を課そうとして仏教界を敵に回したな。福祉目的税か、巡礼路整備費用税名目にすれば良かったのに。
 苦:ガソリン税かよ!! 正しくは教会が所有する農地というか財産に課税しようとしたんです。
 微:確か、1122年のヴォルムス協約での私有教会存続はドイツだけだったよな。国王とはいえ、人間が神に課税することは許されるんか?
 苦:室町幕府も土倉役とか、寺社のフロント企業である金貸しに課税しましたよね。同じです。そして1309年には保養先のアナーニで教皇を捕まえて幽閉する事件を起こします。
 微:でもこれらの前に三部会を開催して承諾を得ているあたり、大胆なだけでなく計画的だな。
 苦:その通りです。それに必要な官僚機構もギョーム・ド・ノガレを使って整備しました。財政再建の最後の手段として行われたのがフランス王室最大の債権者テンプル騎士団解体だったのです。
 微:フィリップ4世の債務返済計画発表の記者会見に、テンプル騎士団が専用飛行機でやってきたことがフィリップ4世を激怒させたそうです。
 苦:それはアメリカの自動車会社のバカCEOだよ! そもそも、テンプル騎士団の正式名称は「キリストとソロモン神殿の貧しき戦友たち」で、聖地への巡礼者を保護する目的で活動を開始しました。
 微:貧しいふりをして物乞いで資金を集めたんだな。1980年代の統一協会のように。
 苦:あれは別団体です。初期の本部がソロモン王のイェルサレム神殿の遺構の上にたてられたため、一般にはテンプル騎士団と呼ばれました。警視庁が桜田門と呼ばれるのと同じ感じですね。
 微:ってことは、テンプル騎士団解体は「桜田門外の変」か?
 苦:譬えだよ、譬え! テンプル騎士団の最大の特色は、参加した王族や貴族たちから預かった財産を使って為替・金融システムを発達させ、最初の国際銀行ともいうべき役割を果たしたことです。
 微:途上国を食い物にするIMFとアメリカの投資銀行みたいなもんだな。
 苦:それだけではありません。テンプル騎士団は敬虔かつお金を持っている巡礼者の預金証を作成し、彼らの資産を預かるサービスも発明したのです。
 微:楽天並みのあくどさ! イタリアの信用金庫がピエタ、「慈悲」として始まったのとはえらい違いだな。
 苦:多くの寄進を集めたことによって12世紀から13世紀にかけてテンプル騎士団は莫大な資産をつくり、それによってヨーロッパから中東にいたる広い地域に多くの土地を保有しました。
 微:それって本社はアメリカだから、って各国の課税を逃れるamazon並みのあくどさだな。
 苦:そこに自前の教会と城砦を築き、自前の艦隊まで持ち、最盛期にはキプロス島全部を所有していました。ある意味、アメリカ軍の原点とも言えます。
 微:いっそのこと、テンプル騎士団に竹島というか独島買ってもらったらいいんとちゃうか。日本と韓国の関係もすっきりするぞ。ついでに尖閣諸島や南沙諸島も買ってもらった方がいいかも。
 苦:テンプル騎士団のパリ支店、いやパリ支部は何度もフランス王に財政援助を行い、フランスの非公式な財務省ほどの規模になりました。というか、引くに引けない状況になったのです。
 微:今の時代だったら、借りた方が偉そうに出られるのにな。楽天とかソフトバンクとか。
 苦:そのため、フィリップ4世は債務の帳消しをはかってテンプル騎士団の壊滅と資産の略奪を計画したのです。
 微:今の日本なら計画段階で発覚しそうだけど、ある意味全員仲間か。
 苦:そしてどこまで本気か知りませんが、テンプル騎士団と聖ヨハネ騎士団を合併し、自らがその指導者の座について聖地を再征服する夢を持っていました。
 微:かろうじて成功したのはオリックスと近鉄の合併だけでした。
 苦:オマエは宮内か! さらに自分の子孫にその座を継承していくことで自らの一族が世々にわたって全ヨーロッパの支配者になるという夢さえ抱いていたそうです。
 微:日本相撲協会が世界征服をする以上に無謀な夢だな。
 苦:まず、手始めにフィリップ4世は聖ヨハネ騎士団との合併をテンプル騎士団総長ジャック・ド・モレーに提案しますが、即座に拒絶されました。
 微:そんな提案したら、今はロケットに入れ込んでいるホリエモンがしゃしゃり出てくるぞ。
 苦:そこでフィリップ4世は匿名証言と拷問も使える「異端審問方式」を用いることにしました。
 微:一反木綿方式?
 苦:それは『ゲゲゲの鬼太郎』の妖怪! テンプル騎士団の入会儀式が非公開だったことが告発に利用されました。
 微:赤木ファイルには事細かく記されていたそうです。
 苦:異端審問には教皇庁の認可が必要なのですが、当時の教皇はフランス王の意のままに動くクレメンス5世なので何の問題もありません。
 微:森元とバッハだな。
 苦:テンプル騎士団は入会儀式におけるソドミー行為、反キリストの誓い、悪魔崇拝といった容疑で起訴されたわけです。
 微:まさにアメリカ大統領選挙のネガ・キャン!! 後になるほどエスカレートし真実度ゼロ。
 苦:1307年10月13日(金曜日)に、フィリップ4世は召還したテンプル騎士団総長ジャック・ド・モレーを始めとするフランス内のテンプル騎士団員を一斉に逮捕させました。
 微:タリバーンの戦闘員に依頼したそうです。
 苦:そして教皇クレメンス5世にテンプル騎士団を解散させました。国内の資産を没収し終えると、フィリップ4世は口封じのために投獄されていた4人の指導者たちの処刑を指示します。
 微:バカなことにケータイのメールで指示したもんで、履歴から足がついたそうです。
 苦:1314年、ジャック・ド・モレーら最高指導者たちはシテ島の刑場で生きたまま火あぶりにされました。
 微:その恨みか。2020年にシテ島にあるノートルダム大聖堂が燃えたのは。
 苦:火刑の際、モレーは、フィリップ4世と教皇クレメンス5世に呪いの言葉を発したそうです。その効果なのか、同年中にフィリップ4世もクレメンス5世も亡くなりました。
 微:その言葉、『この恨み、晴らさでおくべきか・・・』だな、間違いない!
 苦:それじゃ、『魔太郎が来る』だよ! テンプル騎士団に着せられた異端の汚名は無批判に受け入れられてきましたが、2007年、ローマ教皇庁が完全な冤罪だったと認めています。
 微:でも最後のあっけなさから、テンプル騎士団にまつわる伝説が生まれたんだろ?
 苦:たとえば彼らがソロモン神殿跡地から聖杯、あるいは聖櫃、あるいはイエスがかかった十字架を発見したなどがその典型です。
 微:オレはイエスの財布を発見したんで営利活動に邁進したって聞いたぞ。
 苦:それこそが冤罪を生むヨタ話だよ!!   (ペシッ!!)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?