20代最後の春だから。
黒のスタンドカラーコートを着て外へ出た。すぐにコートなどいらないくらい陽気な気候だと知った。
今日は暖かい。都心の気温は午後2時現在で14℃、街行く人はコートを羽織っているけれど寒そうな様子はなく、時折コートを脱いで歩いている人、コートなど着ていない人もいる。
三寒四温、というのでまた来週か再来週くらいに寒くなるのかもしれないけれど、2月末にこんなに暖かいなんて、と感動してしまう。
どうにも毎年経験しているはずなのに、冬が来るたびに、冬ってこんなに寒かったっけ?1月2月になるたびに、朝方や夕方夜ってこんなに冷えたっけ?と驚くし、夏が来るたびに、夏ってこんなに血が沸騰する感じだったっけ?となる。冬には夏の暑さを思い出せなくて夏が恋しくなるし、夏の空気が揺れる暑さの中では過ぎ去った桜の季節を想う。
1年の季節のうちで1番好きな季節は桜の咲く季節。春、というより"桜の季節"が好き。
まだ寒い季節の中で、寒桜が咲いて、朝夕以外はコート無しでも歩ける日が増えて、首を窄めてスタンドカラーコートに身を包み、その下にも厚手のニットをきてヒートテックまで着ていた季節から、ニットが薄くなり、コートのボタンを外して歩けるくらいになり、コートを手に持って歩けるくらいになり、気づけばスタンドカラーコートから薄手のコートにかわって、そのうちヒートテックからサラファインにかわって、気づけばブラウスやらシャツ一枚になっている。そういう変わり目がちょうど、3〜4月で桜が咲く前後の季節だ。
3〜4月の桜の季節というのはまた、季節以外も「新」が多い。
卒業、進学、入学、入社、転居を通じて
新学年に、新卒に、新入社員に、新居に、新生活があらゆるところではじまる。また、学校や会社や居住が変わらぬ人にも、新年度という区切りが来て、3ヶ月ほど前のお正月に気持ち新たにはじめた「新年」が、あっという間に過ぎ去っていることを思い知らされるのが「新年度」になるこの3〜4月の区切り。
幸福なことに、新しい年を迎えて「気持ち新たに」したはずが、大した前年と変わらぬ生活を繰り返しているのにその3ヶ月後くらいには、これまた毎年、「気持ち新たに」と新年度を迎えようとする。気持ち新たにしたところで、気持ちすら実際には全然変わっていなくて、その次の瞬間には怠惰な自分に戻るのに、毎年、毎春、飽きずに気持ち新たにする自分がいる。
それは、寒くて身体も心も縮こまってしまう冬から、少しずつ解き放たれていく春という季節がもたらす魔法のようなものかもしれない。
この3月末に、新卒から満5年を迎える。無職歴もこの4月に6年目の29歳だ。こんなはずじゃ、なかったなんて山ほどあって、毎春、新年度を迎えるたびに、既卒○年になってしまったと負い目を感じながら、また、今年こそは仕事を得なければ、今年こそは自立しなければ、と思うのに、私はもうここ5年「無職」のまま。
さすがに今年30歳を迎えるので、もう後がない、という感じになってきたし、父とは30歳になるまでに自立して家を出ると約束していたので(というか28歳か29歳になる時、突然「30歳までに家を出ろ」と言われた)、その期限は迫っている。それなのに私に全然危機感がないのは、果たして如何なることであろう。
ひとまずは、今の給与のままでも安定して貯蓄をつくれるところから始めることにしよう。そろそろ新学年になる。みんなどんどん、新しい生活に進んで、多くの新入社員や大学生、はたまた新しく高校に入学する方々まで一人暮らしを始める。今年30歳になる私は一方、人生これまで一度も実家を出たことがない。持病の関係で一人暮らしできないのとは別で、「いつでも家を出ていけるお金を持てる」ようにしておくべきであったんだと今わかる。2020年に始まったコロナは、非正規雇用の私に大きな打撃を与えた。実に3.5ヶ月間ほど実質の無職に追いやられ、その補填は"たった"10万円の補填では効かなかった(おまけにお金がなくて苦しかったのは4〜6月くらいだったのに、あのコロナの給付金8月に入りましたからね。遅いよ)
さらにその後も何度か出勤できない状況にあったり、昨年の2月もコロナウイルスの蔓延防止ということで非正規出勤停止に遭って昨年も2月分まるまる給与0円という危機に陥った。そうしたこともあり、転職活動をできる金銭的余裕を作ることもできず、かといって体力がつくこともなく体調を崩したりもして、また精神的問題で、もう転職活動にすら踏み出せなくなってしまった。けれど自立のためにはやはり必要だ。
「新」という言葉が最も似合う季節だから、今まで踏み出せなかったことや踏み出せなくなってしまったこと、後回しにしてきたことに「新」しく手をつける。
ひとまず、ここまで頑張るよ。
こうやって書き出したら、もう何年も毎年同じ目標を立てているまま達成できていないことに気づいた。
独り立ち(貯蓄)、英語を身につける、就職。
この3本でずっとお送りしていました…20代のうちに終わらせたいところ。20代で見る最後の春になるから。
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