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ゆるふわ外科系ICUカルテ記載マニュアル

【はじめに】

Intensive Care Unit (ICU)では朝に申し送り・プレゼンテーションをします。基本的に一人20分かからないくらい、施設によっては一人5分くらいで流れるように発表する事が好まれます。

本内容は朝のプレゼンやカルテ記載のポイントを僕が知ってる範囲でまとめました。

ICU当直の時もこれさえ見れば60点の最低限の管理ができるだろうと勝手に思っています。エビデンスはなるべく載せないことにしました。ガイドラインは数年単位でアップデートされるので、適宜自分の目で確認してください。

これはただのあんちょこゆるふわメモなので過信しすぎないことと、その施設の伝統・流派を尊重し、チームで管理することを忘れないようにしましょう。

間違いや疑問点を頂いて、たしかにと思ったらその都度修正していきたいと思います。

美しいプレゼン→患者の適切な管理→患者へのfeedback


カルテ記載のテンプレート

入室理由 診断
ICU入室 ○日
プロブレムリスト
#1
#2
#
#
現病歴 
既往
元々の内服薬(βb、ACEi、ARB、内分泌薬)
心機能 etc.
24hのイベント、やったこと

【CNS】(神経系)
【Respiration】(呼吸)
【Circulation】(循環)
【Nephrology】(腎臓)
【Gastroenterology】(胃・腸管)
【Hematology/Coagulation】(血算・凝固)
【Endocrine】(内分泌・代謝)
【Infection】 (感染)
【Prophylaxis】(予防)
【Line】(ライン)
【Goal】(目標)
【To do list】(今日やる事)

カルテ記載のポイント

ex.)
*手術内容
CABG:どこのグラフトか(radial, SVG, RITA, LITA)
Valve(Tissue, Mechanical)
腹部大動脈血管再建の有無(IMA)
*夜暴れていた
*なにもしていない

〜データなど(割愛)〜

physical examination
意識(受け答え)、胸部、腹部、四肢(浮腫)、皮膚(創部感染)、排便、尿、ドレーンの性状(濃、淡)、体重の変化。
レントゲン:
*デバイスの位置ex.)
CV(最適な位置か、ガイドワイヤーなどないか)
N-G tube(胃内にあるか)
S−G(適切な位置か)
IABP(適切な位置か)
ドレーン
アスピレーションキット
気管チューブ*肺野(好きなように。気・胸・縦・横・ 骨・軟・チュ など)
人工呼吸器関連肺炎の有無

プレゼンのポイント

【CNS】

☆術前、術後のレベルの比較、もともとの意識レベルとの変化
電解質異常、脳塞栓などなどAIUEOTIPSなどにそってやった方がbetter。
適宜鎮静を中断して、意識レベルを確認。GCSを用いる方がbetter。

☆痛み(麻薬、拮抗性鎮痛薬、非オピオイド系鎮痛薬、硬膜外鎮痛(心臓血管外科はなし)、局所麻酔(TAPなど))
局所麻酔(TAPなど)する?麻薬(フェンタニル)どれくらい?アセトアミノフェン(4000mg/dayまで)やNSAID(ロピオンなど)。基本的には術後一日目で内服に移行している。消化器症状のリスクなど考慮して。
アルチバは好きな時にoff。決まりなし。総投与量とシバリングの関係から早くoffにする方がいいと考えるが。

☆寝られている?
せん妄の原因は?環境?短時間作用アモバン、長時間作用レンドルミン、リスパダール、レスキュー薬の指示は)術後一日目では分からないので議論いらない。術後二日目以降は確認、方針を。Delirium care team などに相談するか。

☆現在の意識レベル
投与している鎮静薬は??
*プロポフォール
某大学が無茶したせいで手術室と集中治療室で投与量が添付文書上は異なる。
脂肪製剤、亜鉛不足など注意する。
*デックスメデトミジン
値段が高い
200μg/50mlのシリンジで
50kgは2.5ml/h-8.8ml/hで0.2-0.7γ
初期負荷投与は基本していない。
*ミダゾラム
作用遷延
*レミマゾラム
長期投与で突然の蓄積性が認められたため、今の所、ICUでの適応はない。

☆意識レベル遷延の原因
follow CT、MRI、epilepsy疑って脳波(10-20法など)等検討。術中の所見は。筋弛緩やフェンタの影響はあるか。
フェンタニル→ナロキソン:side effectを考慮すると経時的にみた方が better
ロクロニウム→スガマデクス

☆RASS score
鎮静剤の指示を出すときに必要。

【Respiration】

☆呼吸数と酸素化、room, nasal, mask??
痛い??胸水??胸水がレントゲンでありそうならばエコーで評価。

☆ドレーン抜去の有無
8時間で100ml未満。5時間で50ml未満など。
出血量何時間で主科を呼ぶか?

☆胸水評価。胸水抜く??抜かない??
周術期に発生、血液様→癒着??抜いてあげた方がいいかも。
リスクとベネフィットで相談して。明らかに取れそうなら。
利尿しているならば経過観察としても可。慢性的に溜っているならばアスピレーションを検討。肋骨上縁を穿刺する。

☆抜管基準
Spontaneous breathing Trial (SBT)
Rapid shallow breathing index(RSBI 呼吸回数/一回換気量(L) 100回/min以下がライン)
長期挿管管理ならば喉頭浮腫やステロイドの使用の有無
意識レベルや排痰能力、循環系、再挿管のリスク、原疾患、挿管した経緯

☆排痰できているか
ミニトラックも考慮。もうないらしい。

☆SBT trial
毎日行う。基準、方法を確認。
毎日やった方がよいかもしれない。

【Circulation】

☆昇圧剤、降圧剤の検討。
術前、術中、術後の比較。介入いるか。急ぐか。
何を見て、どれくらい介入するか。目標は。

*βblocker 
周術期Af予防。心不全加療。心外手術全例に内服。CHESTガイドライン(J Thorac Cardiovasc Surg. 2012 Jan;143(1):4-34.)参照。
アーチスト 2.5mg またはメインテート 2.5mg (降圧作用がアーチストより高いか。)を内服開始する。
rateが徐脈、自己脈が出なくてペーシング中、DOB使用中の患者では投与しない方がbetter。適宜増減。

*CCb
vital見て。効果発現は早い。

*ACEi or ARB
ACEB,ARB:臓器保護作用を持つ代表的な降圧薬であり,心筋虚血の改善,リモデリングの抑制,生命予後の改善をもたらす。ACEiはメタアナリシスで推奨度が高くなっている。ARBが流行っているのは日本だけ。
CHESTガイドライン(J Thorac Cardiovasc Surg. 2012 Jan;143(1):4-34.)参照。
前から飲んでたら、禁忌がなければ落ち着いたら再開。
術前に飲んでなかった人は安定+LVEFが40%以下、高血圧、糖尿病、慢性腎不全の人には飲ませる。禁忌なければ。

☆☆降圧薬 好みを確認しておく
外来で変更する可能性がある。

☆βb、CCb、ACEi、ARBは基本的に半錠からがいいかもしれない。禁忌ないか再考して。

☆血圧管理目標について。
目標値。腸管虚血、コンパートメント、脳出血、脳梗塞、頸動脈狭窄など考慮して。DOA、DOB、NADのテーパリング。ニスタジール。
なぜその昇圧剤、降圧薬を選んでいるか。

☆橈骨動脈グラフト使用の場合
ジルチアゼム(ヘルベッサー)持続投与の必要かもしれない。今後も内服必要なら内服。CABGの周術期はおまじないで投与されている。グラフトで適応なければすぐ止めても、切れ止めでも好きなように。

☆アンカロン
半減期長い。内服移行時は、内服レシピ確認を。

☆不整脈
K、Mg補充を。Mgの盲目的補充は許容される。
Mgの補充によるデメリットは?

*周術期AF
開心術でのAFは、循環動態崩れていなければ許容。
1st βblocker(インデラル、オノアクトなど)、2nd DC
不安定ならDCを。
その他不整脈→ACLSなどのプロトコールにそって。

☆IABP,PCPS
ウィーニングの検討、今後継続するか、いつ抜くか。など

【Nephrology】

☆baseの体重は??
目標体重からどれくらい離れているか。

☆POD2ぐらいからrefill。Hb、レントゲン、呼吸状態などみながら。
苦しそうか、肺水腫あるかなど。
ラシックスチャレンジ(半筒, 10mg iv)の検討。内服利尿薬の導入を検討。
その際には電解質を確認する。

☆利尿剤のチョイス。負荷をかけると腎に負荷がかかってしまう。
腎機能の悪い患者にフロセミドなどはよくないかもしれない。
腎機能の悪い患者にはカルペリチド(ハンプ)で緩やかに利尿をかけるのがいいかもしれない。
腎不全に対しては 腎毒性物質を使わない、腎flowとpressureを保つ事 しかできない。

☆尿バルーンは必要か。
自尿はあるか。日々の体重測定でいけるか。

☆CHDFや透析
適応、どれぐらいの量、どのくらいの時間をかけて除水するか。法定量は。
除水かけない事も可。どのポイントで間欠透析に移行するか。

☆高CO2血症
アセタゾラミドの検討。そもそもの原因は?

☆カリウム、マグネシウム、リン補正
電解質補正を。

【Gastroenterology】

☆食事開始。
抜管後嚥下評価。看護師が飲水テスト。良好ならばレベルあげていく。
腸音。腹部所見。嘔吐しているか。ガス、レントゲン(ガスの移動あるか)などで検討して、主治医に確認。

☆経腸栄養の種類
脂肪あるかないか。乳び胸などないか。
目標の栄養は?

☆排便
ある、なし。調整いる??
マグミット、ラキソベロン、大建中湯、ビオフェルミンorミヤBM(Rになっているか、投与の抗菌薬で死滅しないか)など。
下痢が多いならCDトキシンなど。メトロニダゾール、VCMなど好きな方を。個人的には前者。ICUだから後者も可。ガイドラインを確認してください。

☆抜管前は食止め

☆PONV
胃原性or腸原生
EM、大建中湯、プリンペラン*3など。
イレウス管は、どうしても食事を入れたいor緊急的な腸減圧が必要な場合に考慮。
イレウス管は経口摂取不能、症候性の腹部暴慢などの症例に限り利用する方が、呼吸器合併症が少ない。

☆肝胆道系
変化あるか。原因は??薬剤??血腫(Bil)??

☆腹部痛
腸管壊死、イレウス、創部??表面ならばTAPなど。

☆refeeding syndrome
長期低栄養の患者に急速に高カロリーや大量輸液を投与したときに生じる症候群
うっ血性心不全、不整脈、耐糖能異常、ウェルニッケ、低P•K•Mg血症。

【Hematology/Coagulation】

☆Hgb,Plt,凝固因子の投与は??
Plt輸血はCABG後は再狭窄のリスクあるため投与は慎重に。

☆血小板減少などの血球減少
HITだとしたら??(the 4 T's)など検討。
フサン、アルガトロバンなど。
薬剤性は??TEICなど。

☆赤血球、FFP、PC
投与開始の基準値。

☆☆抗凝固
☆ワーファリン
•もともとのAf、弁(機械や人工弁、どのタイプの弁でも)、SVGグラフト(地域ルール)に対してWf適応。
•錠数は決まりなし。常識ある範囲内で。

☆ヘパリンブリッジ
•V pacingしていると、心房収縮なく、血栓できやすい。
•機械弁その他、ガイドラインで示唆されている場合。
•Af出現後48時間後には抗凝固療法の導入を。
•ヘパリン皮下注との同時併用はなし。

☆ヘパリン皮下注 ICUにいる間はすべてに??DVT予防
処置前や検査でAPTT延長が強いならskipも可能。
CHDFや、その他の理由で抗凝固療法を行っている場合はいらない。
最高リスクの人のみ、フットポンプ+ヘパリン皮下注射
ワーファリンやヘパリン持続で代用可。

☆アスピリン
CABG以外の基本はワーファリン。ただしオペレータの意向を考慮。
基本的には導入を。50歳以上では無症状でも導入を薦めるガイドラインあり。

【Endocrine】

☆血糖
スケール、四検、安定していたらおおらかに。
ジャヌビア(DPP4i)は単剤なら内服再開可能。

☆スタチン
スタチン系(リピトール、メバロチン、ローコール、クレストール)
プラークの安定化、破綻予防→周術期の心筋梗塞予防
LDL 100mg/dl以下を。高リスクならば70mg/dl以下で。

☆ステロイド
有無、内服など開始されているか。
相対的副腎不全のステロイドとステロイドカバーは分けて考える。

☆免疫抑制薬
有無、内服開始されているか。

【Infection】

☆SSI
AAA以外は三日から四日。一般的には皮膚閉じたら終了。主科と相談。耳鼻科など投与期間長い。

☆感染の原因、臓器、感染症を疑う根拠
抗生剤の選択。菌をターゲットにできているか。
培養結果からde-escalationを。前医の判断を尊重する。培養を。痰、血液、尿、など
尿の菌は1×105以下なら治療介入いるか検討。2日後くらいに適宜follow。
症状ない時の痰培養の結果の解釈。

☆感染臓器は??
術創部、術野、肺、尿路、血液(IEなど)、中枢、副鼻腔

【Prophylaxis】

深部静脈血栓症、潰瘍予防、術後創部感染予防など。

【Line】

☆ラインの整理。それぞれ適応は??
必要なら留置。不必要なら抜去。
*A-line(血圧、電解質、ICU管理加算など。)
*S-G(CIなど。PA wedgeさせないなら意味がない?投薬ルート。)
*CV(投薬ルート。)
*FDL(溢水、電解質、アシデミア、腎毒性物質など適応は?CHDFするなら留置。)
尿管カテーテル
挿管チューブ

【Goal】

患者や患者家族と医療従事者のゴール、目標が一致しているか。
現状が伝わっているか。

【今日やる事(to do list)】

上記、プレゼンした内容で、今日しなければならない事を再確認。

参考図書
ICU/CCUの薬の考え方、大野博司、中外医学社 
心臓手術の周術期管理、天野 篤、メディカル・サイエンス・インターナショナルNTENSIVIST Vol.4 No.2 2012 (特集:術後管理)、メディカルサイエンスインターナショナル
神戸中央市民ER・ICUメソッド: 診療PDFマニュアル付き メディカ出版

最後に

臨床医として10年くらい立ちました。その間に研究留学で臨床医を数年お休みした期間もあり、臨床医としてのピークはおそらく過ぎてしまったと思っています。日本に帰国し、過去にまとめたメモを読み、一年程度してなんとか仕事ができるようになってきました。
今後、国外留学や何らかの理由での休職、その後に復職した際に少しでも臨床医としてのパフォーマンスを落とさないために、過去に習ったことをメモ形式で残しておこうと思いました。このノートが皆様のお役に立てばうれしいです。
以上で終わりですが、課金してくれたら追加でありがとうメッセージが出ます。コーヒー一杯いただけたら嬉しいです。

Ver.1.2 (2024.2.18 誤字の修正)

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