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【6,000文字超】M&Aアドバイザリー(FA)及び事業会社のM&A担当として学んだ企業・事業買収(M&A)において大切なことの全て

M&Aアドバイザリー(ファイナンシャルアドバイザリー)及び事業会社のM&A担当などのM&A実務を通して感じた大切なことをまとめたいと思います。

M&A実務経験者にとっては当たり前過ぎる内容かもしれないですが、雑多なメモなのでご容赦いただければと思っております。

M&Aの実務本(M&Aに係るプロセス、企業価値評価、会計、税務、法務のような論点が記載されたもの)に記載されているような内容については、基本的に記載しておりません。そういった書籍ではカバーできないものにしています。

私は誰か?

  • M&Aアドバイザリーファームや事業会社にてM&Aを主導してきた経験のある者です

  • 詳細はこちらをご確認ください

誰に向けて書いているか?

  • 事業会社の経営者・M&A担当・経営者やM&A担当を志望する者など

ご留意していただきたいこと

  • 私的なメモとして留めたものです。そのため、内容の稚拙さ・誤字脱字等についてはご容赦ください

  • 基本的に全て私見です。人によっては同意できないような内容も多いと思います

では、本旨に入りましょう。

M&Aは全社活動

  • M&Aは全社でやる活動です。できるだけ数多くの部署(経理・法務といった部署だけではなく、事業部も。経営陣だけではなく、現場の人たちも)と接点を日頃からつくりましょう

  • M&Aはイレギュラーかつ負担の大きい業務です。そういった業務に対応していただけるよう、普段から社内外の人たちと信頼関係をつくっておきましょう

  • 相手の役に立ちたいという思いを普段から伝え、課題をヒアリングし、解決の支援をすることは関係性を構築する上で非常に大きな役割を果たします。例えば、他社事例や競合他社を分析した内容の共有、壁打ち相手になってあげたり、勉強会をしたり等、色々出来ることがあると思います

どういった企業・事業を買うべきか?

  • FAやM&A仲介から案件を紹介されて初めて、どういった企業・事業を買うべきか検討し始めるのはやめましょう。受け身の姿勢はやめて、能動的に動きましょう

  • 経営企画や事業企画等と会話をして以下は押さえておきましょう。なお、緻密な戦略がなければ、経営企画や事業企画等と協働して立案してもよいかと思います(領域に制限を設け過ぎないことは、成果を出す上で大切です)

    1. 市場・競合・自社の情報をインプット:市場規模は?市場の動向は?どういったプレイヤーがいる?自社のポジショニングは?

    2. 全社戦略:事業ポートフォリオや売上比率は、時間軸の変化とともにどう変化していく?

    3. 事業戦略:どの事業をどのように事業を成長させるべきか?どの顧客開拓を開拓するのか?どの商品を強化するのか?新規事業はするか?何をするべきか?

    4. それらの目標と現状のギャップを埋めるためのソリューションとしてM&Aは有用か?

    5. 有用であれば、ソリューションとなる企業をリストアップ

    6. リストアップした企業を評価。優先順位付け

対象会社のオーナー経営者(もしくは大株主)と接点を持つ

  • 対象会社に当然訪問し、オーナー経営者に「株売ってください」とはなかなか言えないものですし、そういったことをやるべきではないと思います

  • 工夫すればM&Aの意思をほのめかしながら接点をつくることはできます

  • 私はコールドコールをして「将来的な資本提携も考慮に入れた協業の可能性についてディスカッションさせていただけませんか?」とオーナー経営者にお話をしていました。きちんと礼儀を尽くせば意外と話を聞いてくれました(少なくとも私はこうやれば3割くらいの確率で会ってお話する機会を持てました)

  • そしてできれば、その企業に訪問して対面でお話してみみましょう。信頼感をつくる上でも、どんな会社か知る上でも、訪問して対面でお話をする意義は大きいと思います

  • できれば事業部の方と一緒に打診先に訪問して、業務上の提携(協業)の可能性をディスカッションしても良いかと思います。例えば、訪問先の商品を仕入れられないか伺ったり、逆に自社の商品を提案したり、クロスセルの可能性だったり、共同セミナーだったり等、協業の可能性も深堀れば沢山出てくると思います

信頼が全て

  • どれだけ対象会社の数字が良かろうと、どれだけ良い事業を持っていようと、どれだけ良い条件でM&Aにかかる契約を締結しようと、オーナー経営者含む経営陣を信頼できなかったら買収すべきではありません

  • 表明保証違反があったとしても実際に賠償してもらえるか分かりません。法的にカバーできるものには限界があります。それを十分に理解したうえで交渉に臨むべきであり、いくら工数や資金をかけたとしても、信頼できなければ買収の検討をやめるべきです

M&Aは蓄積型の組織能力である

  • M&Aは経験を積めば積むほど、能力が高まっていきます。そしてM&Aがうまくいくかどうがは組織の能力の高低にかかってきます。そのため、初めてのM&Aで巨額の資金を費やすホームランディールを狙いに行くのはやめた方がいいです。大きなM&Aのチャンスを掴むためにも、小さいM&Aを繰り返し、M&Aにかかる組織能力を日頃から高めていきましょう

M&A仲介やFAとはどう付き合えば良いのか?

  • 売り手がM&A仲介を起用している案件は、M&A仲介を起用することが(M&A仲介に)求められます。それゆえ、M&A仲介が持ってきた案件を前に進めるのであれば、M&A仲介を起用せざるを得ないでしょう

  • 売り手がFAを起用している場合は、買い手のFAをつけるかどうかは買い手である自身に委ねられます

  • 個人的には信頼できる優秀なFAであれば、起用してもいいのではないかと思います。報酬は高額になりますが、投資対効果の観点からみるとペイすることもあると思います(投資はFAへの報酬、効果は価格含むM&Aの条件の良さなど)。また、数多くの案件を経験していること、第三者が介入することで交渉が円滑に進む、ブレイクするリスクも減らせる可能性が高まることも多いです

  • 一方で社内にM&Aに長けた優秀な人材がいる場合などは、FAを起用しないのも選択肢の一つです。例えばM&AプロフェッショナルであるPEファンド(より狭義にはバイアウトファンド)はFAを雇わないケースもある認識です

対象会社を割安に買いたい。価格についてどう考えるべきか?

  • オークション(複数の買い手候補を用意され、一番条件の良いところを選ぶかたちで進めるM&Aプロセス)にならないようにしたいです

  • 売り手にFAがついていると当然ながら割安な売却をしてもらいづらいでしょう。なので相手側にアドバイザーがついてないケースの方が良い場合も多いでしょう。一方で割高な価格で売却したい売り手にとっては、FAが付くと合理的な金額で交渉するよう売主を説得ケースもありますが

  • M&A仲介は、1回限りの付き合いになりやすい売り手よりも、太客になりやすい買い手優遇のインセンティブが働きやすいと言われます。しかしながら、基本的にM&A仲介は中立公平な立場を求められています。それゆえ、買い手有利な価格で交渉してもらうのは難しいと考えた方がいいでしょう

  • M&Aに慣れていない売主相手に取引するのが良いですが、基本的にオーナー経営者に満足してもらってこそのディールだと思います。後味が悪いとPMI網膜いかなと思います。大前提、合理的な金額を出すべきです(合理的な金額とは?という議論はありますが)

  • それでも割安な金額を求めるのではあれば、「スピード重視で案件を進めるので」といった金銭的な対価を持って交渉したいところです。当然ながら、両者の納得感が大切です

  • また、シナジーを沢山創出できる企業を買うのが割安に買う秘訣の一つです

  • M&Aエグゼキューションにおいては、価格は非常に大きな論点の一つです。「いくらだすのか?」「どうやって交渉するのか?」は考えても考えすぎなことはないでしょう

企業価値評価について

  • 企業価値評価については多くの書籍が巷に流通しているので詳細は述べませんが、それぞれの企業価値評価手法をどのように使うべきか私見を述べます。繰り返しますが、私見です

DCF法

  • DCF法はアートであるとよく言われます(私もそう思います)。しかしながら、M&A実務においては必ずやるべき手法です。バカにせず勉強すべきです

  • コーポレートファイナンスの基礎が最も詰まっている企業価値評価手法です。FCF、CAPEX、CAPM等々色々な一見難しそうな用語が出てきますが、細かいところまで理解しておきましょう

  • 「株式の価値はどのようなロジックで決まるのか?」「どうなれば株式の価値は高くなるのか?」など、正確に理解しておきましょう。日々の企業運営でも役に立ちます

  • 事業計画策定は非常に大切です。事業や企業の理解が進みます。事業や経営のロードマップになります。買収後の経営方針になります。買収後の数値目標になります。きちんと作れるようになりましょう

  • 誤解を恐れず言うと、DCFで算出した数値にあまり意味はありませんが(アートになりがちなので)、脳内でDCFモデルをシュミレーションできるようになっておくのはとても大切です

  • 「必要運転資金が想定より10百万円ほど必要になった場合、株式価値にはどのような影響がありますか?」こういった株式価値に対する影響を考えることができれば、ステークホルダーに説明しやすくなります。ステークホルダーと交渉しやすくなります

EV/EBITDAマルチプル法

  • 市場ではどういった評価をされている事業なのか?頭に入れておきましょう。価格の交渉材料にもなります

  • 最も客観的で(相対的に)信頼できる企業価値評価手法だと思います。何故なら、(詳しい算出方法はここでは語りませんが、)類似企業が上場市場で取引されている株価を用いた算出根拠だからです

時価純資産法

  • BSの項目の中身の洗い出しになります。含み益・含み損等も頭にインプットしておきましょう。非事業用資産であれば、売却を検討しても良いでしょう

  • ここでの価値(時価純資産法で算出した株式価値)を下回る価格での交渉は厳しいでしょう。ある意味「現時点以上に企業を成長させれません」と言っているようなものだからです

インサイトを見つけ、言語化しよう

  • インサイトはマーケティングや新規事業において主に活用されるワードであると理解しています。ここで私が定義するインサイトとは、対象会社が対象会社たる部分、表層的なもの(財務数値など)ではなく、その表層をつくり出している構造や背景のことを指します

  • 例えば次のようなものです。対象会社がどういった組織力学でなりたっているのか?(キーパーソンは?力関係は?なぜこの人は人望がある?なぜ退職者が多い?)なぜこんなにも顧客に支持されている?強みは何か?なぜそのような強みをつくれているのか?

  • インサイトと言うからには、(表層的なものだったり・可視化されたものだけでなく、)対象会社の経営陣や従業員の人柄・価値観・会話した時の後味、オフィス訪問時の雰囲気(秘書がやたらと若くて綺麗、社長室の高額な絵が沢山ある、トイレが汚い、来客時に業務中の従業員が全員立ち上がって挨拶をする、など)など、そういった非言語的なものも含めて見たいです。そしてそれを言語化してみたいです。そしてそれからどういった示唆があるのか、考えてみたいです

  • 上記は、ビジネスDD、財務DD、組織DDでカバーできている範囲もあると思います。ですが、敢えてこの部分(インサイト)だけを切り取って、頭が擦り切れるまで考えてみる時間をとってもいいのではないか?と思います

  • 私がこれまで優秀したビジネスパーソンはこういった部分に対して非常に洞察力を働かしていました。こういったところまで汲み取って、どう交渉すれば良いか?どう経営するべきか?等まで考えたいです

信頼できる専門家を見つけよう

  • 当たり前ですが、会計士・税理士・弁護士といっても、基礎能力・専門分野・相性はピンキリです。普段から様々な専門家の付き合って理想とする専門家を見つけましょう。知人に紹介してもらったり、評判を調べたり、小さい案件でお試しで使うのもありです

  • 自社の人材を簡単には替えれませんが、専門家を替えるのは相対的には楽だと思います

丁寧で精確な対応を心がけよう

  • ディール中は相当な業務負荷となります。ストレスも溜まるでしょう。他の業務と比較すると忙しい業務であるとよく言われますし、私自身もそう思います。そんな時でも、自社内は勿論、交渉相手に対しても、(毅然とした態度はとりつつも、)メールや会話でのきつい表現は避けましょう。曖昧にせず、精確な表現を心がけましょう。メールや電話だけでなく、対面で話しましょう

  • M&Aは人と人との感情がぶつかり合います。そんな場面でも人として大切なことを忘れないで業務推進したいです。丁寧で精確な対応ができないことが致命傷となり得るのがM&Aであると十分に認識しましょう

適切なガバナンスの効かせ具合・効かせ方を考える

  • 業績が悪い会社はしっかりガバナンスを効かせましょう(業績が悪い会社の場合、株式の段階取得も筋が悪い話です。100%買収しましょう)。業績が悪い会社は人間で言うと生活習慣が悪いようなものです。日々の業務から問題があります。「お得意様の訪問に時間を使い、新しい顧客開拓をしていない」「採用基準が明確でなく自社の人材に合わない人を採用している」「資金繰りに余裕を持ったかたちで資金調達していない。いつもぎりぎりに動く」など。根本的な生活習慣から見直さないと病気は治りません。きちんとガバナンスを効かしながら、「違い会社に刷新する」くらいの気概が必要だと私は思います

  • 逆にうまくいっている会社は変にいじらない方がいい側面もあると思います。良い生活習慣を送っているから治すところも少ない。適切なガバナンスの効かせ具合・効かせ方を考えましょう

M&Aを途中で止める負担はものすごく大きいが、ブレイクすることも厭わない

  • M&Aを進めていくのには膨大な工数がかかります。DDに入っていると多額の資金を投入することでしょう。それでもディールキラーが見つかったら、解決策を考え、それでも解決できないのであれば諦めるしかありません(解決できない致命傷なので、ディールキラーと呼ぶのでこれもまた矛盾する表現ですが)。手を引きましょう。それまで費やした時間や資金は勉強代だと思うのが生産的です

  • 最後までいかなくても、正しい方向性で前に進んだ経験があれば、知見や経験も組織能力として蓄積していくと思います

  • ただし、ブレイクするにしても相手方に対してはきちんと礼儀を尽くした上で案件進行を終えましょう(当たり前ですが)

取得する知識の領域に制限を設けない

  • M&Aは会社自体を買う行為です。会社にまつわるあらゆる知識が要求されます

  • FA経験のみだとコーポレートファイナンス・会計・税務・法務などに偏りがちです。マーケ・営業・製品開発といった領域を見てもらうのは、事業部にお願いするいうパターンもあるでしょう

  • しかしながら、(要求水準は非常に高くなりますが、)できれば取得する知識に制限を設けるべきではないです。どの領域においてもM&Aに携わる人たちの論点をコントロールできるくらいの知識は身に付けておきたいです

  • 丸投げをしてしまうと、メッセンジャーのような役割に終始してしまい、出せるバリューが限りなく低くなってしまいます

  • 広範囲に渡る知識は、買収候補の目利き力やPMIにも大きく効いてくるところです。丸投げする領域がないようにしたいです(難易度が高いことを言っているのは理解しています)

M&A実務は他の業務にも活きる

  • 私もM&A関連業務は広範囲に渡る知識・経験が要求される難易度が高い業務だと私は思っています

  • そのような特性を持つ業務だからこそ、仮に異なる業務をすることになっても知識や経験が活きてくると思います

  • 私はM&A実務経験をベースとしながらも、ベンチャー投資、資金調達等まで領域を広げてきました。勿論、それぞれの業務で新たな知識の習得が必要になるのは間違いないですが、ソフトランディングできたのはM&Aでベースの知識・経験があったからです

さて、思いつくままざっと書いてきました。以上、何かしらのご参考になれば嬉しいです。

こんな人とお話したいしたいです

  • よければこちら(私の自己紹介記事)をご覧いただき、私に興味を持った方はご連絡いただけると嬉しいです

  • noteを見て、私とお話してもいいよと思われましたら、是非お気軽にご連絡いただけると嬉しいです

  • 自分としては以下のような方とお話ししてみたいです(もちろん、あてまらなくてもウェルカムです)

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