欠陥品のロボット
ぼくは欠陥品のロボット
欠陥品だから、失敗ばかりで
いつも怒られる
やめて、ぶたないで
ロボットでも、痛みはあるんだ
逃げ出したぼくは博士に拾われた
欠陥品のぼくに博士は優しくて
失敗しても怒らない
腕や足がこわれれば
なおしてくれる
欠陥品のぼくはここにいる資格があるのかな?
だけど博士も笑顔だからいいよね?
博士と出会って1年たった
テーブルの上にケーキがある
ケーキには「おたんじょうびおめでとう」の文字
「なに、これ?」
「誕生日を知らないと言っていたじゃろう?だからわしと会った日を誕生日にしよう」
「誕生日ってなに?」
「誕生日とはうまれてきてくれてありがとうと感謝する日じゃよ。お前さんと会えてわしは幸せじゃ。その喜びを一緒に祝うんじゃ。あと誕生日は欲しいものがもらえる日でもあるんじゃ。考えたんじゃが、欲しいものが分からんくてな。なにが欲しい?」
あれ、なにこれ?目から水が溢れてくる
「ぼくも博士に出会えて、良かった。欲しいもの……博士なら作れるかな?ぼくはこころが欲しい。ぼくはロボットだから、こころがないんだって」
博士は悲しそうな顔をした
やっぱりこころは作れないのかな?博士の悲しい顔は見たくない
「わがまま言ってごめんなさい」
「今、お前さんの目から出てるものは涙というんじゃ。涙は嬉しいときや悲しいときに自然に溢れるんじゃよ。その嬉しいや悲しいや楽しいが、こころなんじゃ。お前さんはロボットじゃなく、人間なんじゃよ。一度こころを閉ざしてしまったが、今、涙が出たのが、こころがある証拠じゃよ」
「でもぼくは欠陥品でしょ?」
「どこが欠陥品じゃ。わしを思って謝れる、人を思いやることができる優しいこころをもっておる。お前さんは立派な人間で、欠陥品でもロボットでもないんじゃよ」
「うーん、良く分からないけど、ぼくはもうこころをもっていて、博士のことが大好きだと思うことがこころなのかな?」
「そうじゃよ。好きも大切なこころじゃ。まだお前さんは幼い、こころも未熟。わしと一緒にこころを育てていこう。楽しい、嬉しい、ときには悲しいというこころを一緒に育てながら暮らしていこう」
「うん!」
そう言ってぼくが笑うと博士も笑った。そっか、これが幸せなんだね
そのときのぼくは悲しい涙というものを知らなかったんだ
つづくかも?
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