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別れと出会い

この街に住んで、15年。
都会過ぎず、治安も良く、アクセスが良いこの街は住みやすく、優希はずっとこの街で暮らそうと決めていた。

しかし、離婚をすることになり、
優希に非があったため、
優希がこの街を出て行くことになった。
ひどい話だが、夫より、この街の未練の方が強かった。

内見もせず、仕事と金銭面で急いで決めたため、
名前しか聞いたことがない街で暮らすことになった。
優希のその街のイメージは高級住宅地。
でも優希が暮らすのは、安アパートだ。
卑屈になっている優希は、きっと自分がみすぼらしく感じるんだろうな、と思う。
自業自得だ。優希はため息をつく。

実際に引越すと、近くにスーパーもコンビニもドラッグストアもなかった。都心に近いのにアクセスも悪い。
部屋も狭く、上の階から怒鳴り声がした。
歩いている人達も、品がある人達ばかりだ。
優希はこの街で暮らしていくことに不安になる。
しかし、もう戻れない。

久々の引越は大変だった。
仕事をしながら、さまざまな手続きや片付けに追われた。

その日も手続きをするために、散歩がてら歩いていると、図書館を見つけた。
そこは小さな図書館であった。
だが、優希は久しぶりの本の匂いにホッとする。
図書館にいる人達も勉強している学生や老人など、優希の知っている図書館と同じであった。

なんだ、あるじゃん。
優希は思う。
優希は見ようとしていなかっただけで、
この街の良いところはたくさんあるのだ。

以前の街では、図書館が遠く、一度しか行かなかった。
しかしこの街では、家からすぐの距離だ。

まだ1つだけど、前の街より良いところが見つかった。
きっとこれから少しずつこの街を知って、
良いところがたくさん見つかっていく。

前の街にはもう戻れない。
それならこの街を前の街より好きになろう。
優希はこの街を好きになる努力をしようと決める。

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