スリー・ビルボード/ディクソンのサンドイッチ

ミズーリ州の田舎町エビング。娘が殺されたが一向に犯人を捕まえられない地元警察に業を煮やした母親は、街はずれの道路沿いにある大きな看板を3つ借り、あるメッセージを載せた。
みんな大好きサム・ロックウェルがアカデミー助演男優賞をとった彼の大出世作。この人はただのすちゃらか兄ちゃん役俳優ではないことを世界に知らしめた。

【好き食べ物】
・サム・ロックウェル扮するディクソンが家で夕食(多分)として食べてるサンドイッチ。アメリカ人って夕食にそういうサンドイッチ食べるんですねえ。

・ミルドレッド(フランシス・マクドーマンド)が、ジェームス(ピーター・ディンクレイジ)と入った多少シックなレストランで飲んでいる、セロリの入った赤いカクテル。おそらくブラディマリーだと思うのですがすごく目につきました。なんか妙~

・このレストランで、ミルドレッドの元夫とその愛人である能天気な19歳の娘はハンバーガーなんか食べてました。あまり学というか知性がない田舎モン、という感じがにじみでてヨカッタ。

【好き登場人物】
・ディクソン(サム・ロックウェル)
 やってくれましたねー、サム・ロックウェル!! 保守派の多い中西部・ミズーリ州のド田舎で蛇蝎のごとく嫌われるゲイであることを隠さねばならず、その苦悩があの粗野な態度や暴力になって噴出してしまってるのでしょう。たぶん多少のディスクレシア(失読症)で(だから漫画ばかり読んでるし、警察学校も留年してる)、家庭も恵まれてるとは言えず、巨大な漬物石で人生ぎゅーっと抑えられ続けてきた兄ちゃんであることがとってもよくわかりました。署長の手紙&火事のあとの“生まれ変わり”もスバらしかった。しつこいけど背が低いのもまたいいんだ。見てすぐわかるハンサムじゃないってとこも。サム・ロックウェル、警官の制服も似合ってるので、しぶい犯罪もの映画で警官役やってくれないかなあ。

【本とか文化とか音楽とか】
●Renee FlemingのTis The Last Rose Of Summer

 映画冒頭に出てくるアイルランド民謡。日本だと『庭の千草』という邦題で歌われてますね。むかーしむかし、NHKみんなのうたで聞いたような気がしてて、にーわーのちぐさーもーむしーのねーもー、という歌詞をなぜだか覚えてます。
 歌っているルネ・フレミングというソプラノ歌手は最近ジャズっぽいのも歌ってて、ギレルモ・デル・トロの『シェイプ・オブ・ウォーター』のテーマソングっていうのか? You'll Never Knowもこの人が歌ってます。とってもすてきです。

【風景】
●ミズーリからアイダホへ向かうの緑の風景
 最後、ミルドレッドとディクソンがアイダホのレイプ犯(じゃなかったけど)をしばきにいくため、車で出かけるシーン。
 美しい緑の中、やがて犯人しばきはどうでもいいって感じになり、ふたりがゆるく和解というか赦しのようなものを互いに感じあうところが、よかったです。
 そうそう、出発のとき、ミルドレッドが車の後ろに、お菓子っぽいのとか水筒をごそっと乗せてました。あれは、ミズーリからアイダホまでがかなり遠いからでしょう。日本人の感覚で言うと、東京から博多まで行く感じか(物理的距離はミズーリーアイダホ間の方がもっとあるけど)。

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 多分、ディクソンに「アイダホに行くかい」って言われたミルドレッドが「偶然ね、私アイダホに明日行く用事あるの」と答えるシーンって、アメリカ人ならおいおいってくすってなる感じになるんでしょうね。日本で言うと東京に住む人間が「あら、偶然ね、私あした博多まで行く用があるのよ」って言うみたいな感じ。埼玉や千葉なら行く用あるでしょうけど博多まで行く用なんかないだろー!!
 アメリカの州が舞台やセリフに登場したときなんとなくああ、あのへんねとわかると色々理解できることが多いので、アメリカの幼稚園で使われるらしい超シンプル地図を買って家に貼ってます。アマゾンとかで売ってるのでオススメです。

【つながりありそう映画】
スウィート17モンスター

 署長をやってたウディ・ハレルソンが超アウトローな高校教師をやってます。ゆるいテケトーおじさんに見えて実はちゃんと考えて行動してるナイスおじさんぶりが輝いてる。
 のーたりんな悪役ばっかやってた俳優に知性的な役をやらせたらものすごく光ったという例がたまにありますが、スリービルボードとこの映画におけるウディ・ハレルソンはその好例だと思います。なお頭も光ってます。


ファーゴ

 意思のある強い女性っていうかがんこな女性をやらせたらぴか一のフランシス・マクドーマンド。彼女といえばファーゴ! 女警察署長役は本当にかっこいい。私のあこがれです。

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