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カマドウマ雑感

連休明けの出勤二日目の昼休みのことだった。
昼食後の眠気を覚まそうと、作業場の一角にある小部屋にある冷蔵庫からペットボトル入りのコーヒーを取り出そうと扉を開けた。
その瞬間、何かがササッと物陰に隠れた。

この冷蔵庫は主に仕事で使う接着剤などが保管してあって食べ物などはあまり入っていない。休み時間に飲む飲み物や、昼ごはんの時たまに使うマヨネーズくらいである。

も・もしや黒光りして平べったい体のすばしっこいアイツか?!(私はアイツが苦手である。最近チマタでは「G」と呼ばれているようだ)

おそるおそる物陰のその物(袋入りの瞬間接着剤であった)を除けてみると、そこには長い触角と長い脚を持つ、キリギリスに似た虫が居た。

その虫の名はカマドウマ。


出会いは広辞苑

カマドウマと僕の出会いは、はっきりとは覚えていないけど中学生頃、多分国語辞典の中じゃなかったかなと思う。
僕は子供の頃から割と家の中で遊ぶのが好きで、よく一人で本を読んだりマンガを描いたりコマを回したりしていた。
中でも、辞典とか図鑑とかが好きで、挿絵の入った漢字辞典や漢和辞典やことわざ辞典なんかが愛読書だったりした。そして新しいことわざや変な読み方の漢字を覚えては使ってみたり、周りの年長者が間違えて使っていると(間違ってるのにな~)とか思いながらも指摘できないでいた。今もそういうところはある。
そして、家にあった国語辞典や広辞苑である言葉を調べては、その周辺にある言葉を覚えたりしていた。そこで出会ったのがシミ(紙魚・衣魚)であり、カマドウマだった。

そんな出会いだったが、実際に見たのは記憶の中では高校の時。友人とキャンプに行って朝方撮った写真の中にカマドウマが写っていたのを覚えているので、そのとき「これがカマドウマか!」と実物を始めて見て感動して撮ったんだと思う。

なぜこんなに気になるのか。
まず、名前。
虫なのに馬って(笑)というのがあったし、「~ムシ」だと最後の母音が「い」で終わるところが「あ」で終わるのがなんか新感覚だったのだろう。
次に、俗称。
生物には主に、正式な名前と学術的な名前と世間で親しまれている名前(俗称)がある。たとえばカタツムリ(いきなり虫じゃなくてごめん)。
正式名「かたつむり」
学術名「?」(知らんのかい)
俗称「でんでんむし」
といった具合。

さて、今回の主役「カマドウマ」はどうか?

正式名「かまどうま」
学術名「」()
俗称「便所こおろぎ」「えびこおろぎ」

ちなみに上の俗称は国語辞典もしくは広辞苑に載っていたもの。

「でんでんむし」だとかわいいし、親しまれている感じがする。
しかし、カマドウマの場合はどうだ。

「便所こおろぎ」・・・ヒドい言われようだ。暗がりを好む彼らの生息地がつけられているとはいえ、あんまりだ。
「えびこおろぎ」・・・もはや、何?状態。えびでもなくこおろぎでもない。亜流の中の亜流みたいな。決して主役にはなれない悲哀を感じてしまう。

こんな風に、名前を見ただけでも人にどちらかというと疎まれてきた彼らの歴史が垣間見ることができる。

実はすごい! カマドウマ


しかし彼らには、強大な武器がある。
それは・・・跳躍力!

彼らの特徴として、とても大きな脚を持っていることが挙げられる。
そして、その長い足を生かした跳躍力には目を見張るものがある。
外敵から逃げる際にも大活躍することは間違いない。

すごいぞ、カマドウマ!

と思うんだけど、その跳躍力が仇になり壁などに自ら激突して死んでしまうことがあるらしい。おお…


そして、もう一つの特徴として挙げられていたのが、「疲れやすい」ということ。
すごいジャンプ力を持ってるけど、疲れやすいって・・・
悪いけど、ここで笑ってしまう。

超偏見かもしれないが、外敵から逃げているときの虫って全速力で逃げながらも全く速度が衰えない気がしていたので、「疲れやすい」というのを見て妙な人間臭さのようなものを感じてしまったのだった。


飼う?食べる?!


そんなカッコいいけど憎めないカマドウマ。
キリギリスやコオロギや鈴虫などの様に鳴くわけではないが、ペットとして飼われたりもするようだ。通常の個体だと指でつまめるくらいの大きさだが、中にはウシガエルくらいの個体もいるらしい(気になる人は調べてください…)

そして、検索していると「カマドウマ 食べる」という項目が出てきて、実際にカマドウマを釜飯の具にして食べている方がいたりした。
まあ昔からバッタやイナゴを食べる地域もあったし珍しくないかもしれないけど、実際の画像を見るとなかなかの衝撃であった(気になる人は…)。 
因みに味の方は魚介、特にエビに近いようだ(えびこおろぎだけに?)。まあ、僕はエビやカニを食べると痒くなるのでどのみち食べられないのだが。


_____


とは言え、ふだん生活をしていてカマドウマについて考えることはそんなにない。
ところが、仕事関係である届けを出す際にいつも思い出してしまうのだ。
それは、遅刻・早退届や有休休暇申請の届を出す時。
申請事由の欄に「私用の為」などと書く、その「為」の字を書くたびに、「あー、なんかカマドウマっぽいな」と思うのだった。


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