ズーム社vsNECネッツエスアイ社(ZVC社)の係争に関するこれまでのまとめ

【9/24追記】9/21に投稿して既にかなり多くの誤った記載が見つかっており注記して修正をしています。当職の業務上の信頼を考えた場合には何の中期もせず修正してしまったほうが都合がいいですし何より読みづらいという問題もあるのですが、他人の間違いを見て同じ間違いをしないようにしてもらうことを目的として修正箇所は注記を付けた形で残すことにしました。【追記ここまで】

先週の金曜日に、音響機器の株式会社ズーム(以下ズーム社)が、Zoom Video Communications, Inc.(以下ZVC社)の日本での販売代理店であるNECネッツエスアイ社(以下ネッツ社)の使用する標章「ZOOM」がズーム社の登録商標(本件商標)と類似するとして、ネッツ社の使用の差し止める訴訟を提起した旨のニュースが流れてきました。
本件のズーム社の発表は以下から。

これにより多くのデジタル機器等に関するインターネットメディアで記事が出されました。

本件に関するネットでの記事や動画の紹介

以上の記事では、起こった話をそのまま記事にされたような印象でした。

以下の記事と動画ではそれぞれ独自の解説がなされていますのでコメントしたいと思います。

この記事は企業法務戦士さん(弁護士さんと思われます)のブログに掲載されているのですが、今回訴訟を提起したズーム社の商標権(本件商標権)に係る商標登録(本件商標登録)について無効理由があるのではないかという指摘がされています。
というのも本件商標権を成立させるにあたり、同じ指定商品を含む先行商標権があったためにズーム社は「ZOOM」という単なる文字ではなく特徴のある書体とし図形化(図案化)し権利化をしているということが説明されています。
このため、ズーム社が本件商標とZVC社のそれほど特徴的ともいえない「ZOOM」という商標とを類似と言えるかについては難しいであろうと企業法務戦士さんは感じていると私は思いました。
というのも、仮に図形化された本件商標とZVC社の「ZOOM」が類似すると主張すると、本件商標が先行商標権の「ZOOM」と類似していると自ら主張することになり、先願先登録の登録商標に係る標章と類似となり商標法4条1項11号の無効理由があると言ってしまうことになりかねません(この点は後述)。
したがって、本件で矢面に立たされたネッツ社としては訴訟上では「両商標は類似しない、仮にこれらが類似するとした場合には無効理由のある商標登録に係る商標権であるから権利行使は認められない」という主張(無効の抗弁といいます)をすることがまず考えられます。
また、このような場合には、訴訟と平行して本件商標権の商標登録を無効とする無効審判を特許庁に請求することができますが、ズーム社の商標権は登録後5年以上経過しているため本件では請求することはできません【9/22 当初請求できると記載していましたが修正しました】。

上記の動画では、意匠・商標専門の弁理士の岡村先生が本件の基本的なおさらいと不使用取消審判の請求可能性について言及されています。分かりやすく説明されているのでこちらもおすすめです。

9/22に新しい話が追加されたようです。他のZOOMの登録についても解説されています。

差止めの可否の検討

私も弁理士ということで、ズーム社の本件差止請求が認められるか否か、論点となるところはどこかをフラットに検討していきたいと思います。
なお、以下の記載は現時点における私の独自の見解を単に表明するものであり本件訴訟の結果を占うものではなく、当該記載に基づいて判断されたことによって生じた損失などについて責任を負うものではありません。一研究として利用してください。

それでは、まず関連する商標法の条文をいくつか引用しようと思います(関係なさそうな項目は適宜省略していますので正式には法文集などを確認してください)。

(差止請求権)
第三十六条 商標権者又は専用使用権者は、自己の商標権又は専用使用権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
(商標権の効力)
第二十五条 商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。
(定義等)
第二条
3 この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
一 商品又は商品の包装に標章を付する行為
二 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
三 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物(譲渡し、又は貸し渡す物を含む。以下同じ。)に標章を付する行為
四 役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為
五 役務の提供の用に供する物(役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為
六 役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為
七 電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法をいう。次号及び第二十六条第三項第三号において同じ。)により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為
八 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
(省略)
6 この法律において、商品に類似するものの範囲には役務が含まれることがあるものとし、役務に類似するものの範囲には商品が含まれることがあるものとする。
(侵害とみなす行為)
第三十七条 次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一 指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
二 指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
三 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
四 指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
(商標権の効力が及ばない範囲)
第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標
二 当該指定商品若しくはこれに類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定商品に類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標
三 当該指定役務若しくはこれに類似する役務の普通名称、提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又は当該指定役務に類似する商品の普通名称、産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する商標
四 当該指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について慣用されている商標
五 商品等が当然に備える特徴のうち政令で定めるもののみからなる商標
六 前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができる態様により使用されていない商標

また、36条における侵害の定義として、私が弁理士試験で使っていたものを書きます。

権原または正当理由なき第三者が、登録商標又はこれに類似する標章の指定商品又は指定役務若しくはこれらに類似する商品又は役務についての使用をすること、その類似範囲での行為又は予備的な行為をすることをいう(商標法第2条第3項各号、第25条、第37条各号)。

以上より、まず今回のNECネッツ社の行為が差し止められるか、その行為が侵害行為にあたるかを見ていきたいと思います。

差止請求権

36条を本件に当てはめると「ズーム社は、ネッツ社が自己の商標権を侵害する者である場合には、その侵害の停止を請求することができる。」となります。
ここではネッツ社は侵害をしているか分からないので場合分けしています。このため、以下で侵害にあたるかを検討する必要があります(次項)。
なお、商標権の侵害などを検討する場合には、商標権が成立し今も有効に存続しているかを確認する必要があります。その点については、本件では正式に存続していることが確認できます。

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侵害か否か判断する場合の要素

上記の侵害の定義を分解すると、
(1)第三者が権原又は正当理由を有していないこと
(2)対象となる標章が、登録商標又はこれに類似する標章であること
(3)対象となる標章が、指定商品又は指定役務若しくはこれらに類似する商品又は役務に使われていること
(4)商標法における使用、その類似範囲での行為又は予備的行為をしていること
のようになります。つまり要件(1)~(4)すべてを満たすときには侵害となります。
以下で個別に検討していきます。

(1)第三者が権原又は正当理由を有していないこと

本件における第三者というのはネッツ社になりますが、以下のような場合には権原を有しているといえます。例えば以下①~③のような場合が考えられます(まだありますが省略します)。
①ネッツ社がズーム社の本件商標権にかかる出願よりも先願の商標権を有している場合
②ネッツ社がズーム社から商標権の使用許諾を受けている場合
③ネッツ社がズーム社が本件商標権にかかる出願よりも先に同一または類似の商標を使用していて周知となっている場合

【本段落について9/22追記】①について検討します。ネッツ社はZVC社から同社の登録商標の使用は認められていると考えられます。しかし、下に示すように出願日がズーム社の出願の12年以上も後であり先願ではないため認められません。【追記ここまで】

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また、訴訟が提起されている時点で②に該当しているとは考えにくく、③の事実も推認されません。
以上の通りであることから、これら①~③については本件ではいずれにも該当しなそうで「第三者が権原を有していない」には該当しそうです。

一方、第三者が正当理由を有している場合として、以下の④~⑥のような場合が考えられます。
④商標法26条に規定された商標権の効力が及ばない範囲での使用をしている場合
⑤本件商標登録に無効理由があり、無効な商標登録に係る商標権の行使が認められない場合
⑥本件商標登録に取消理由があり、取消理由がある商標登録に係る商標権の行使が認められない場合

個別に検討していきます。
まず④には該当しないと思われます。本件の事案では26条1項各号のいずれにも該当しないためです。概略を言うと、自己の名前や名称(1号)、商品等に普通に(又は慣用的に)使われる名称(2~4号)、商品の特徴に関する名称(5号)、誰を示しているのか認識できない名称(6号)などがあります。本件ではいずれにも該当しないと思います。
⑤については、上述の企業法務戦士さんのブログにもあるとおり、ズーム社が本件商標とネッツ社の使用商標と類似すると主張した場合に6年ほど前に出願されている他社の先願商標に類似するとして無効理由を生じさせるおそれがあります(46条1項1号、4条1項11号)。

本件登録にかかる登録情報

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先願商標権にかかる登録情報

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以上のように先願商標権のほうが先に出願され先に登録されていることから4条1項11号の無効理由があるという余地があると当初考えていました【太字下線部9/22修正しました
【以下9/22追記しましたしかし、本件商標登録から5年以上経過しており除斥期間となっているため、特許庁への無効審判の請求はできません(47条)。また、除斥期間経過後に無効の抗弁が可能かという話についても複数の判例で争われている部分であり(エマックス事件、ジェロビタール化粧品事件)、訴訟上で争うのもリスクがあるように思います。
なお、この点は弁理士試験でも口述試験で平成23年に、論文試験で29年にそれぞれ問われており重要項目になります。9/21執筆時に検討漏れしてしまい情けなく思いました。受験生の皆さんはこのようなことが無いようテンプレートなどを利用し項目の検討漏れのないようにしてください。【追記ここまで

なお、先願商標権にかかる商標登録に関してはZVC社と別のもう1社が取消無効審判を請求しており、「電子計算機用プログラム」の登録が取り消される可能性があります。
【9/24追記】上述の岡村先生より指摘があり本項目についても修正させていただきます。当初「仮にこの商標登録が取り消された場合には、この先願の商標権に基づく⑤の理由はなくなることになります。見方によってはズーム社の無効理由をZVC社が取り除こうとしているようにも見えますが、別の見方をすると」と記載していましたが誤りですので削除します。
というのも、取消審判の遡及効は最大で審判登録日なので今回の商標登録の時点での無効理由は解消しないことになり、無効理由はなくなりません。ご指摘ありがとうございました。【追記ここまで】
ZVC社はこの先願商標権のほうがやっかいであると感じているのではないかと思いました。

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次に⑥を検討します。本件商標登録に取消理由があれば権利行使が認められないということができますが難しいと思います。
ズーム社は、本件商標を指定商品「電子計算機用のプログラム」である「音響機器のプログラム」に使用していると推測され不使用とはいえず(50条)、誤認混同を生じさせる使い方をしたり他人にさせたりするような不正な使用はしておらず(51条、52条の2、53条)、不当な登録をしたともいえない(53条の2)からです。
よって、本件商標が不使用でない限り⑥により取消理由がある商標登録に係る商標権の行使が認められない場合とはいえないと思われます。

以上より、①~③に該当せず権原を有しているといえず、④にも該当しないものの、⑤及び⑥も難しいものの絶対該当しないとはいえず、正当理由を有していると争うことも念のためにしておいたほうがよいのではないかと思いました。

(2)対象となる標章が、登録商標又はこれに類似する標章であること

次に、本件商標とネッツ社の使っている商標を比較します。

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流石に同一か否かの議論は不毛だと思いますので類否を見ていきたいと思います。
通常、商標の類否は、両商標の外観・称呼・観念を比較して行われます。順に見ていきましょう。

外観を比較した場合に、両商標は遠目に見てはいずれも「zoom」のように見えるとも考えられますが、正直に言って類似しているとは言いにくいように感じました。
というのも、本件商標(左)は3つのパーツに分かれますが、「z」とも「2」とも読める1つ目のマークと、「∞」とも「00」とも「oo」とも読める2つ目のマークと、「m」の字とも「凹」の上側の部分とも見れるような3つ目のマークとを組み合わせた外観であり、ネッツ社の使っている特徴のない「zoom」という文字列(右)とは印象が大きく異なります。

次に、称呼を比較します。左は上述のように外観を把握したとすると
1つ目のマークが「z(子音)」又は「に」
2つ目のマークが「むげん」、「(と結びついて)ひゃく」、「(と結びついて)おー/うー」
3つ目のマークが「む」、「メートル」と発音するのが自然であると考えられます。
このため、見方によっては「ズーム」とも読めますし「にひゃくめーとる」と読むこともできます。なお、特許庁の付与した称呼では「ズーム」となっていますが、出願人名に基づいて付与されていると思われ、この図形を先入観なしにみたときに誰もが「ズーム」と読めるかというと難しいと思います。
よって、右のように素直に「ズーム」と読める標章(商標)と称呼が類似すると主張するのには、他の可能性を否定しなければならず若干難しいのではないかと思われます。

最後に、観念を比較します。左は上述のように「ズーム」又は「ニヒャクメートル」と外観を把握したとすると「拡大」と「距離」であり、右は「拡大」です。読み方によって観念も類似するかしないかが変化します。

以上の通り、①外観は類似しているとは言いがたく、②称呼としても類似しているは必ずしもいえず、③観念としても類似とは必ずしもいえないことからズーム社の本件商標とネッツ社の商標が同一ではなく類似していると主張するのもなかなか難しいのではないかと思います。

(3)対象となる標章が、指定商品又は指定役務若しくはこれらに類似する商品又は役務に使われていること

まず、本件商標権の指定商品は、上で掲載した通り第9類の「電子計算機用プログラム」(類似群コード11C01)を含みます。
続いて、ネッツ社の使用している商品役務を推測するために、ZVC社の有する「ZOOM」商標の登録内容を示します。

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第38類を指定しており、指定役務を抜き出すと

音声会議通信,電子データ送信,電子メッセージの送信,音声・データ・映像・信号及びメッセージの電子式・電気式及びデジタル式の送信,ネットワーク会議通信,P2Pネットワーク用コンピュータの提供、すなわちコンピュータ間でのオーディオ・ビデオ及び他のデータ及び文書の電子送信,インスタントメッセージによる通信,電話会議通信,テレビ会議用通信端末による通信,テレプレゼンス会議通信,簡易電子メール通信,テレビ会議通信,ビデオによる遠隔会議,テレビ会議用通信端末による通信,ビデオテキストによる通信,ウェブ会議通信,ウェブによるメッセージの通信

となります。また、類似群コードは38A01となります。

類似群コードで比較すると11C0138A01で相違し、特許庁での審査の観点では類似しない判断になります。
しかし、ZVC社がズーム社の先願商標の取消審判をしていることからみればズーム社の指定商品「電子計算機用プログラム」とZVC社の上記の指定役務(≒ネッツ社の使用している役務)とが類似すると判断される可能性は相当にあると考えるのが自然です。

以上より、対象となるネッツ社(ZVC社)の標章が、ズーム社の指定商品またはこれに類似する商品又は役務に使われていること判断される可能性は十分にあると考えました。

(4)商標法における使用、その類似範囲での行為又は予備的行為をしていること

上述の通り、商標同一ということは考えにくいため、2条3項1号における使用は対象外となり、直接侵害は構成されにくいと考えました。
しかし、類似商標や類似商品・役務範囲での使用は考えられることから以下を検討しました。
まずは、ネッツ社がどのように標章「ZOOM」を使用しているか確認するために、同社のセールスページを調べました。

同社のZOOMの紹介ページ:https://symphonict.nesic.co.jp/zoom-lp/

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このページでは、商品又は役務としてZOOMが示されています。
また、ZOOMの販売店であることが示されており、ZOOMのミーティング機能などのサービスを代理店(つまり実施権者)として販売していることが分かります。
私もZoomは契約し使用しているため分かるのですが、Zoomをスタートするとインターネットから専用のプログラムをダウンロードし、それを使ってブラウザからミーティングなどのZoomのサービスが提供されます。
このため、ZVC社が提供している商品又は役務は、①インターネットを通じて行われるZOOMのプログラムの提供と②インターネットを通じて行われるZOOMサービスの提供、の2つの行為が行われていると考えられます。
よって、①については類似商標の付されたプログラムを電気通信回線を通じて提供するので37条1号の行為に該当し(同一商標なら2条3項2号)、②については、インターネットでサービスを提供しているので37条1号の行為に該当するものと考えられます(同一商標・同一役務なら2条3項7号)。
少なくとも①の行為は行われると考えられることから、37条1号の侵害とみなす行為が行われていると判断される可能性は高いのではないかと考えています。

侵害に該当するか、差止可能か

以上の検討より各要件について
(1)第三者が権原又は正当理由を有していないこと
 →正当理由を有していると主張できる可能性がないとはいえません。
(2)対象となる標章が、登録商標又はこれに類似する標章であること
 →商標同一とは言えず、類似という主張も難しそうです。
(3)対象となる標章が、指定商品又は指定役務若しくはこれらに類似する商品又は役務に使われていること
 →指定商品等と使用商品等とが類似すると判断される可能性はありそうです。
(4)商標法における使用、その類似範囲での行為、予備的行為をしていること
 →類似範囲での使用、すなわち禁止権の範囲での使用は行われていると考えられます。

したがって、ネッツ社に正当理由がなく、ズーム社とネッツ社の商標や商品等が類似と判断されれば商標権の侵害を構成することになり、ズーム社は自らの商標権の侵害を停止させるためにネッツ社の行為を差し止めることができます。
ただし、上述した通り、類似判断も主張がなかなか困難とみられる中で、私見としてはズーム社の差止の請求が認められる可能性は低いのではないかと考えています。

感想

ひとまず書き上げました。疲れました。読まれた方も最後までお疲れさまでした。
間違っている部分など意見がありましたら教えてもらえると助かります。

【9/22追記】いろいろな部分で誤記や誤りがありました。中でも47条の見落としは痛いですね。弁理士試験では一発アウトとは言えませんが、クライアントの案件でそのような判断をすると一発アウトのおそれがあります。注意したいと思います。
また、商標法では「直接侵害」「間接侵害」ではなく「専用権」「禁止権」ですね。失礼しました。
【9/24追記】先願商標権が消滅しても遡及時期の関係で本件登録の無効理由がなくなることはありませんでした。修正しました。

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