アファンタジアとハイパーファンタジア
オーケストラでも、一度聴けば楽譜が書ける、と言ってたひとがいる。私はその時は、あまり本気にしていなかった。だけど、そんなの軽々とやる人はいる。ハイパーファンタジアなら楽勝だろう。
聴いた曲を、頭の中で再生、停止、巻き戻し、なんかもできるわけだから。それで当然、音楽を極めつつ生きているなら、できないわけないか。
アファンタジアという言葉はなかったけど、私は映像的なものが脳裏に浮かべられないことは小さい頃から知ってた。
ただ、皆、そういうものだろう、と、信じ切っていた。確かめようがないから。
で、無謀にも美大に行こうとしていた。
高校の頃から、上京しては美大向けの夏期講習や冬期講習に通ってたし、田舎には珍しく美術選択できる美大コースのある進学校だった。
美大の先輩はたくさんいた。
絵を描くのは好きで、実物を見て描く分には何の問題もなかった。
当時、想像でのイメージが要求されることはあまりなかった。まぁ、紆余曲折しちゃったけど。
でも、今にして、よくよく思えば、音楽で一度聴いただけでオーケストラの楽譜が書けちゃったりするハイパーファンタジアの存在がある。美術の世界だって、ハイパーファンタジアは多いはず。気づいていなかったけど。
でも、私の描くイメージが必要な絵は、やはり凡庸になってしまった。
一度見たことがあれば、なんでも描けるよ?
と、楽勝でなんでも描いてみせてくれる人。
楽々漫画のネームを切っちゃう人。彼女は、頭の中に映画を創ってしまう。一瞬で。
だから、一瞬で設定から、キャラから、見せ場から、全部できていた。話を聞くのは、滅茶苦茶楽しい。確かに、「あ!」って言ったその瞬間には、物語が映画として完成してたようだ。
頭の中の映像を、そのまま見せられたらいいのに! と、良くいってた。
どれも、滅茶苦茶面白いけど、小説の形に落としてくるのは難儀そうだった。
完璧な文章になるまで頭の中で練ってからじゃないと、文字におとせない、と。
もう、理解不能の世界。その間にも、「あ!」
ヒラメキは、どんどん、物語を頭の中に量産していくみたいだった。
結構、気前良く、原作を提供しちゃってたよ。報酬もなく。
彼女にしてみれば、誰が形にするかは問題ではなく、誰かが世にだしてくれれば良かったのだ。
でも、私には、形にしてあげることができなかった。
小説は書きたかったけど、原作をもらったところで手に余る。考えてみれば、ハイパーファンタジアの頭の中にある物語を、アファンタジアの私が理解できるはずもなかった。
私は、次第に独自で小説を描き始めた。
ハイパーファンタジアが、一瞬でやることを、10年越し。とはいっても、10年とか長い歳月を、その1本に注ぎ込み渾身の作を……、だなんて考えてない。
バラバラに落ちてくる設定のカケラ。長年拾い集め、アウトライナーに分配し、カケラが集まってくるのを待つ、気の長い話なだけ。
最初のころは、とにかく毎日、原稿用紙5〜10枚を書いてた。手書きで面倒だから、手直しもせずどんどん先を書く。行き当たりばったりだけど、なんか、最終的には形になってた。原稿用紙は、段ボールに一箱。陽の目はみないだろうな。
そのうちパソコンを使うようになったけど。最初の頃のデータはない。アウトライナー、的なものは使ってたかなぁ? なんかエディタで書いてたかなぁ。どこにも投稿せず。ただ書いてた。
私の頭の中は、モノローグの世界。思考も、モノローグ。文字ではなく、言葉というか記述的?
だからって語彙が豊富なわけじゃない。
モノローグは、喋り言葉に近い。
今、書いてるとおり。
歩きながら時々立ち止まり、ここまでスマホで一気に書いた。手直しはしてない。
(今日の実験。スマホのDraftsでモノローグを拾うだけにチャレンジ。15分くらいの道が30分。書いていた時間が15分かな。1500字くらい書けたのね)
AIイラストはPixAIで生成。
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