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鼠径部痛があるアスリートと健康なアスリートの動作戦略は違いがない?

▼ 文献情報 と 抄録和訳

運動器の鼠径部痛患者と健康なアスリートが、方向転換テストを複数回繰り返し行う際に、動作戦略の選択に一貫性があることを示す

Adrian RR, Shane G, Ezio P, et al.: Athletic groin pain patients and healthy athletes demonstrate consistency in their movement strategy selection when performing multiple repetitions of a change of direction test, J Sci Med Sport (IF: 3.607; Q1). 2020 May;23(5):442-447

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[目的] 運動器の鼠径部痛患者における動作戦略選択の一貫性を報告し、運動器の鼠径部痛患者と健常者の間に一貫性の違いがあるかどうかを評価する。

[方法] 20名の運動鼠径部痛患者と21名の健常者が、110°方向転換課題を15回繰り返し行った。下肢と体幹の運動学と地面反力を収集した。相関平均法を用いて,運動学的特徴と運動学的特徴を用いて,各試行を運動戦略に割り当てた。Mann-Whitney U検定を用いて,運動性鼠径部痛患者と健常者の間で,最も選択された戦略の頻度(すなわち一貫性)と曖昧さを比較した。また、カイ二乗検定を用いて、運動性股関節痛患者と健康なアスリートの間で戦略の選択を比較した。

[結果] 運動戦略選択の一貫性(80%以上)にはグループ間の差はなかった。運動鼠径部痛患者は膝優位の動作戦略を選択する傾向にあったが、健常者アスリートは足首優位の動作戦略を好んだ。

[結論] 運動器の鼠径部痛患者に見られた一貫性は、アスリートの欠陥に合わせたAGPリハビリテーションプログラムに情報を提供するための動作戦略評価の実施を支持するものである。このような評価は、スポーツ選手の鼠径部の痛みに対するリハビリテーションの成功に役立つと思われる。鼠径部痛患者と健常者との間に違いがなかったことから、動作戦略選択の違いは怪我の状態とは関係ないかもしれない。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

個人的には、動作戦略に違いがないのではなく、研究で確認できるほどの一貫性がない、すなわち鼠径部痛が生じる力学的負荷は個々のよってかなり異なるのではないか?と感じた。一方で、鼠径部痛が生じると思われる力学的負荷が起こりやすい動作がいくつかあることも事実であるから、それを研究で証明するためには、そういった動作をより細かく一つ一つ対象動作にしていくと、傾向がみえてくるのではないだろうか。

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