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後ろ歩きは膝OAにのみ有効?

▼ 文献情報 と 抄録和訳

歩行障害者に対する治療としての後方歩行の有効性:システマティックレビューとメタアナリシス

Tharani B, Benita O, Mokgobadibe VN: The effectiveness of backward walking as a treatment for people with gait impairments: a systematic review and meta-analysis, Clin Rehabil (IF: 2.599; Q1). 2019 Feb;33(2):171-182.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[目的] 神経疾患や筋骨格系疾患に関連した歩行障害を持つ人々の治療における後方歩行の有効性を検討する。

[デザイン] 無作為化および準無作為化対照研究のシステマティックレビューおよびメタアナリシス。

[方法] 開始日から2018年3月までに,PubMed,Scopus,Cochrane Library,PEDro,CINAHL,MEDLINEの各データベースを検索した。歩行障害者の痛み、機能障害、筋力、歩行パラメータ、バランス、安定性、足底圧に対する後方歩行の効果を調査。質の評価にはPEDroスケールを用いた。類似した結果は、標準化された平均差を計算することでプールした。

[結果] 21件の研究(神経系11件、筋骨系10件)のうち、635名の参加者を対象とした。平均PEDroスコアは5.4/10であった。メタアナリシスの結果、変形性膝関節症患者において、従来の理学療法を2~4週間行うことで、痛みの軽減(-0.87)、機能障害の軽減(-1.19)、大腿四頭筋の筋力向上(1.22)が得られ、後方歩行に有利な有意な標準化平均差値が示された。若年性関節リウマチ症例ではバランスと安定性が、前十字靭帯損傷症例では歩行パラメータと筋力が、後方歩行を運動として取り入れることで有意に改善した。その他の疾患では、後方歩行を支持する有意な証拠はなかった。

[結論] 今回のシステマティックレビューとメタアナリシスでは、変形性膝関節症の患者において、従来の理学療法による治療に加えて後方歩行を行うことは効果的であり、臨床的にも価値があることが示唆された。残りの歩行障害の症状については十分なエビデンスが得られず、結論を出すことができなかった。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

後ろ歩きが膝OAにのみ、痛みの軽減につながったというところは興味深い。「後ろ歩きを取り入れて膝OAの痛みが軽減しました~」という研究は他にもある。だかこの研究を読むと、膝OA特有の疼痛発生の力学的メカニズムが、後ろ歩きによって改善されるのでは?という興味が湧く。こうした後ろ歩きのメカニズムの詳細を示した論文は少ないため、今後の研究が期待される。

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