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社会経済的地位の高いスポーツ少年ほど怪我に気を付けよ

▼ 文献情報 と 抄録和訳

青少年スポーツ選手のスポーツ特化と傷害の社会経済的要因

Jayanthi NA, et al.: Socioeconomic Factors for Sports Specialization and Injury in Youth Athletes, Sports Health. 2018;10(4):303-310.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed(Full text), Google Scholar

[背景] 社会経済的地位(SES)が青少年アスリートのスポーツ特化率や傷害に及ぼす影響については、これまで報告されていない。

[仮説] 社会経済的地位の低い青少年アスリートは,スポーツの専門性が低く,その結果,使いすぎによる傷害のリスクが低い。

[方法] 2010年から2013年の間に、2つの病院のスポーツ医学クリニックから7~18歳の負傷したアスリートを募集し、プライマリ・ケア・クリニックでスポーツ・フィジカルを受診した負傷していないアスリートと比較した。参加者はトレーニングパターンに関する調査に回答した。電子カルテには、傷害の詳細に加えて、患者の郵便番号、人種、健康保険の種類が記載されていた。郵便番号からSESを推定した。サンプルはSESの三分位に分けられた。連続変数には分散分析と多変量回帰を用い、危険因子と傷害との関係を調べるために多変量ロジスティック回帰分析を行った。

[結果] 調査対象となった1190名のアスリートのうち、1139名(96%)が満足のいくSESデータを持っていた。低SESのアスリートと比較して、高SESのアスリートは、組織化されたスポーツを行う時間が週に多く(11.2±6.0 vs 10.0±6.5; P = 0.02)、主なスポーツのトレーニングを行う月数が年に多く(9.7±3.1 vs 7.6±3.7; P < 0.01)、高度な専門性を持つことが多く(38.9 vs 16.6%; P < 0.01)、個人スポーツへの参加が多かった(64.8 vs 40.0%; P < 0.01)。組織化されたスポーツの週当たりの時間と自由に遊ぶ時間の比率が2:1以上の選手の割合は、SESが高くなるにつれて増加した。年齢と週の組織化されたスポーツ時間を考慮すると、深刻な使いすぎの傷害を報告するオッズは、SESが高いほど増加した(オッズ比、1.5、P < 0.01)。

[結論] 高SESのアスリートは低SESのアスリートよりも重篤なオーバーユース損傷を報告したが、これはスポーツの専門化が進んでいること、組織化されたスポーツの週当たりのプレー時間が長いこと、組織化されたスポーツの週当たりのプレー時間と自由時間の比率が高いこと、個人スポーツへの参加が多いことなどが原因である可能性がある

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

少し悲しいけれど、納得せざるを得ない結果だなと思った。可愛い子には旅をさせよといわれるように、特に小さい頃は遊びを通して様々な動作パターンを習得することが有益なのでは?ということか。この研究では、対象者の年齢が10~18歳と幅があるが、小学生-高校生のスポーツ選手では、SESとオーバーユース障害の関係は異なる可能性もあると思う。ここ最近では、スポーツの専門性を高める年齢が早くなってきており、それが怪我と関連するといった研究も増えている。

青少年のスポーツ特化と筋骨格の損傷:文献のシステマティックレビュー
様々なユーススポーツにおける専門性のパターンと傷害リスクとの関係

個人的な感覚では、小中学生くらいまでは自由な遊びを積極的にさせて、高校生以降で組織化され、専門性を高めていくことがパフォーマンス・障害予防の観点から重要だろうと感じる。年代別の関係性も、研究で明らかになると面白い。


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