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Pioneer Workリリースです!



【Pioneer Work】
Style:Occidental Double IPA
ABV:10.0%


"ヨーロッパ風"アメリカンホップのみで仕上げた西洋風Double IPA。
完熟の桃のような香りとそれを包み込みような強いボディ、その中にしっかりとした苦味が続きます。




"Pioneer Work"="創造的登山"
独自の哲学と豊かな発想に基づいた創造性のある行為ともいえます。


このビールは、アメリカ生まれの”ヨーロッパ風”ホップ、Double IPAというスタイル、そしてリトアニアにルーツを持つ酵母で構成されていながら、どこかベルギーの伝統的なビールのような側面を持ちます。

圧倒的な桃感に始まり、強く甘さを感じるボディ、それに負けない太い苦味とホップのフレーバー。


現代でなければ、決して交わることのなかったDNAが一杯のビールへと醸成されていく。
それは果たして、創造的醸造となりうるか?はたまた、アイデアの寄せ集めで終わるか。


己に課した、挑戦状です。




おまけ


2021年の4月に奈良醸造さんがALE & BOOKS 「ビールと読書」という企画を行っており僭越ながら私もビールを飲みながら読みたい本について寄稿させていただきました。

その際取り上げたのが、冒険家である角幡唯介著の「新・冒険論」という本です。
一見ビール作りとは関係のない冒険の話が中心ですが、読み進めると冒険界が抱える悩みや矛盾はどの業界とも共通するようなものでした。
今では僕のバイブルのような一冊でして、何かあるとページをめくり、物事の本質を捉えるためのヒントを探しています。

本書では現代における冒険を再定義する中で、過去に最もそれに近づいた論表ということで本田勝一著の「創造的な登山(パイオニアワーク)とは何か」が度々登場します。

“独自の哲学と豊かな発想に基づいた創造性のある行為”
とも言い換えられるこのフレーズは登山/冒険界のみならずクラフトビールの未来にとっても重要なことだと思っています。

下記は実際に寄稿した文章です。
すでに読まれた方も多いと思いますが、Passific Brewingのビールつくりに対する根幹にもつながりますので改めて掲載させていただきます。


ALE & BOOKS 「ビールと読書」


「海を越え、山を越え、ビールと旅するブルワリー」をコンセプトに2021年今夏より茅ヶ崎にてビール醸造を開始するPassific Brewingの大庭 陸です。

今回紹介させていただく本は角幡唯介著の「新・冒険論」です。

冒険家である角幡唯介氏が現代における「冒険」を「脱システム」というキーワードと共に論ずる本です。

「現在冒険と称されている活動は単なるアウトドア活動に毛が生えただけのものか、野外フィールドで肉体の優劣を競うだけの体力自慢による擬似冒険的スポーツがほとんどである。要するにほかの誰かがやったことの後追いばかりが幅を利かせており、三原山計画のような独自の哲学と豊かな発想にもとづいた創造性のある行為は全くみられなくなってしまったのだ。」

無酸素でエベレストに登ったり、北極点に向けて犬橇を引いたりといった行為は我々一般人からすると大冒険のようですが、それらは誰かによってすでに成し遂げられた行為であり真の冒険としての価値はない。
では、未踏峰の山や地理的な空白部が存在しない現代において真の意味での冒険をすることは不可能なのか?という疑問に対し、本書では「冒険」=「脱システム」とし、目に見えないシステムを見極めそれらの外側にでることが現代に残された冒険なのではないか、という切り口で冒険を再定義していきます。


さて、前置きが長くなりましたが「冒険」と「クラフトビール」とても似ていませんか?

ビアスタイルガイドラインという名の地図には空白部などもはやほとんど存在しなく、ありとあらゆる原材料の組み合わせや、誰がどれだけ大量のホップを使ってビールを作れるか、などを競うことに夢中になり、冒頭にも紹介したような 「独自の哲学と豊かな発想にもとづいた創造性のある行為は全くみられなくなってしまった」のではないかと思うのです。

再び本書の内容に戻りますが、非常に脱システム的な例として、誰もが登ったことがある山を舞台としつつも限られた装備や、食料を極力現地調達するといった”古いようで新しい登山”が紹介されています。

「FUTURA」も一見すると派手さはなく流行とも正反対に位置するような、エベレスト登山に対する、里山散歩のようなビールですが、今回のALE & BOOKS「ビールと読書」という企画も含めて"古いようで新しい"ビールであり、混沌としたクラフトビールの世界における脱システム的な一例なのではないかと思わずにはいられないのです。


「新・冒険論」
著者/角幡唯介
出版/インターナショナル新書







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