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Equis リリースです!


【Equis】
Style:Belgian Hoppy Ale
ABV:6.0%

ベルギー系の酵母からくる、フルーティーさとドライな味わいが特徴のビール。
たっぷりと使ったヨーロッパホップの花のような香りや、爽やかな苦味も楽しめる心地良い仕上がりになっています。


ベルギーにルーツをもつ酵母を使った、フルーティーさとホップの香りが特徴のビールができました。

2023年の春に行ったヨーロッパ研修では、ベルギーでも数日を過ごしました。
ベルギーのビールは本当に奥深く、明確な定義付けをすることが難しいスタイルも多く存在するほど。
そんな中で、ベルギービールをベルギービールたらしめる理由の一つに"容器内での二次発酵"が挙げられると思います。これは言葉の通りビールを容器に充填する際に少量の酵母と糖を加えることで、再び発酵を行う手法です。発酵で生じた炭酸ガスが液体に溶けこみ、炭酸のついたビールができるという訳。
現代におけるビール醸造のほとんどでは、タンク内で強制的に炭酸ガスの添加を行い、炭酸のついたビールを容器に充填します。
なので、ある意味古典的とも言えるテクニック。実際ワインなんかだと"田舎風"なんて表現がされる製法でもあります。

このEquisも缶や樽の中で二次発酵を行う手法を取り入れて作ったビールです。なぜ、そんなことをしたのか?やっぱりこのスタイルを本当に美味しく仕上げるためには容器内の二次発酵が必要だと感じたのです。
ちなみに、なぜ二次発酵の方が美味しく感じるのか、というのは割と謎に包まれてるようにも思います。単純な炭酸の強度だけはない何かがあるはずなのですが、意外とこれだ!という答えを聞いたことはありません。
個人的には、香りの抜け感に大きな差があると思っていて、このスタイルのビールはフルーティーさやスパイシーさのある香りが特徴ではあるのですが、場合によってはそれらが余計な重たさを感じさせることもあります。
二次発酵させたビールは、微妙なバランスではあるのですが香りのボリュームは保ちつつもしつこさのない香りになることが多いですね。

肝心の味わいですが、酵母からくるフルーティーで華やかな香りに少しのスパイシーさも。また容器内二次発酵による、ラムネのような抜けの良い香りもあります。口に含むとモルトの自然な甘みや、ホップ由来の花のような香りが口に広がり、心地良い苦味がそれらを引き締めます。全体に華やかな雰囲気はありますが、ドライな仕上がりのためしつこさはありません。

まだまだ、実験段階ではあるのですが今後も容器内二次発酵には取り組み続け、よりビールつくりの幅を広げていきたいなと思っています。


冷蔵庫の"上"の即席発酵室。即席といいつつ、特になんのしつらえも無くただエアコンをつけているだけなんですが。
普段あまり、ビールの製法についてくどくど語らないようにしてはいますが、今回に関しては、初めての二次発酵への挑戦ということもあって、ついついその話しが中心になってしまいました。
やっぱり、ベルギービールへの憧れみたいなものは強くて、でもスペースや機材の問題で色々諦めてることもありました。今回はテスト的な意味も込めて、と言いつついきなり1バッチ丸々で挑戦しましたが下準備をしっかりしたこともあり、いい結果が出せたかなと思っています。
なかなかこのやり方だとコンスタントに製造していくことは難しいのですが、実はブルワリーの2軒隣の空き地が借りられる事が決まったので、二次発酵室を作れる目処がたってきたところでもあります。
今回のビールはあくまで二次発酵による味わいの向上が1番の狙いだったのですが、この製法をとることで冷暗所での保管が可能になったり、酵母が発酵を続けることによる長期の熟成を行うこともできます。
パシフィックの従来のやり方だと、どうしても限られた賞味期限の中で消費する必要があったので縦軸への伸びを期待したビールつくりに取り組めるということはとても良いことなのです。
そして缶のみならず、それこそ大瓶商品のラインナップも可能になるので、ますますビールつくりの幅が広がるという訳。
最近、他のお酒を飲んでいて良く思うことは、クラフトビールの世界に不足しているのはこの縦軸、つまり熟成による味の変化を楽しめる商品が少ないというところにあるのかなと。これは単純に味わいを楽しむという点でもそうですが、人の思い入れとかその年の季節のこととか、1回しか作らなかった特別なビールとか、こういうものって味がどうとかという前に、思い出みたいなものが発酵して時に特別な1本になったりするんですよね。僕もそういう素晴らしいお酒に巡り合ったりするので、いつか必ず挑戦したいなと思っていたことでもあり、今回のビールは自分たちなりの大きな一歩なんだなと感じているのです。

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