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Noker リリースです!

【Noker】
Style:Dark Ale
ABV:4.5%

農家のポーター、つなげて、ノーカー。どちらもヨーロッパの労働者と縁深いスタイルです。
ローストした麦芽からくるコーヒーのような穏やかな香りに、黒いパンのような柔らかい甘味とほのかな酸味が感じられます。際立った個性はないですが、労働者を支えた日常のためのビールです。


ベルギーの農家にルーツを持つセゾンというビール。
そして、イギリスで荷運び人(ポーター)に愛されたとされるポーターというビール。
土地は違えど、"労働者に愛されたビール"という点では共通することがあります。
ということで、そんな二つのビール、"農家"の"ポーター"でノーカーという訳。

春に行ったヨーロッパ研修でも体感しましたが、黄金色に輝くピルスナービールが世界を席巻する1850年頃より以前は、ヨーロッパの各地で褐色のエールが主流だったようです。
これは、麦芽を作る際の乾燥技術の発達と深い関係があり、そもそも昔は今のような淡色の麦芽を作ることが難しかったようです。
また当然冷蔵技術なども発展していないため、高い温度で発酵させるエールビールが主流だったという訳。
感動するほど美味しいビールもあったかもしれませんが、そのほとんどは素朴で垢抜けないビールが多かったのではないかと想像できます。
特別なことは何もないけれど、日々の生活に馴染むビールというのは、その原風景のようなものが感じられてとても好きです。

味わいですが、ローストした麦芽由来のコーヒーやナッツのような香りで、口に含むと穏やかな甘さが広がります。ですが、あくまでドライなフィニッシュでほのかな酸味も感じられます。
炭酸を残しながら注ぐと、よりドライでスパイシーな印象が際立ちますし、やや炭酸を抜きながら豊かな泡をつけてあげると心地良い甘みが引き立ちます。

労働の対価。それは、こんなビールを楽しむということなのかもしれません。


おまけ


黄金色のピルスナーが世界を席巻するまでは、褐色のエールが主流だったのではないかとう話は本文でも触れました。
現代においてはビアスタイルという概念が普及し、世界中のビールが手に入るようになったことで、そのルーツのような部分が見え辛くなってきています。
歴史をたどり、一杯のビールが生まれた背景を紐解くと、土地や人の風景が自然と思い浮かばれるのはとても面白いことでもありますね。

ポーターというビールも元々は古くなったブラウンエール、新しいブラウンエール、そしてペールエールの3種を混ぜ合わせてつくった庶民に人気の安酒というところにルーツがあるようです。
日本でいうところの下町のホッピーのような感覚ですかね。そんな混ぜこぜの酒が人気を博し、あらかじめその味わいを目指して作られたのがポーターというビールだそうです。そうなると、本来の意味からは若干ずれてきますが、それほどまでに良い塩梅な酒だったのでしょう。
産業革命以前のエピソードではありますが、それでも市場には新たな技術などが生まれきっとたくさんの労働者が街に集まったのでしょう。良く働けば、良く飲みたくなるもの。酒場の使命はいかに、客を満足させるか。そんな時代のエネルギーを感じる好きなエピソードの一つでもあります。

農家の、というくらいなのでこのビールはセゾン酵母を用いて発酵をさせています。一見するとDark Saisonとも言えそうなのですが、あくまでPorter的雰囲気が残るようにはどうしたらいいかと、モルトのバランスは特に慎重に決めました。
ここでいう”Porter感”とはほのかな甘みと僅かな酸味にあるかなと思っています。
複数のローストモルトと、これまた複数のカラメルモルトを使ってシンプルながら奥深い味わいを目指しました。

今回は缶に詰める都合もあって、炭酸がしっかりとついてますが、その炭酸の強弱でも味わいが大きく変わります。
現代においてもそうですが、ベルギー系のビールは瓶内発酵による強めの炭酸が主流ですし、ことイギリスにおいては未だにリアルエールに例えられるような炭酸が全くないものまで存在します。
となると、農家のポーターの楽しみ方の一つは、この炭酸による味わいの違いでもあるのではないでしょうか。

国や土地は違えど、褐色のエールは労働者の明日への活力になっていたのでしょう。
そんな労働者を支えたエールは、時代を超えた僕たちをも支え、そしてそれらを一つに繋ぐ役割りを果たしているのかもしれません。


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