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Hydro Pump リリースです!


【Hydro Pump】
Style:Session IPA
ABV:4.5%


IPAにも引けを取らない、柑橘系のホップの香りや苦味。
それでいて"軽さを楽しめる"のがSession IPAの醍醐味。
ごくごくと飲める、清々しいビールです。



「Session」とはビールの世界では「軽い」という意味を持ちます。
なので、Session IPAは軽めのIPAということです。
最近ではもはや定番化を通り越し、やや風化しつつあるスタイルのような印象もあります。

そんなSession IPAとの思い出話しは遡ること9年前。
さいたま新都心で行われた「けやき広場ビール祭り」で登場した「Hoppy Wind Session Ale」というビールを覚えていますか?
現・Brasserie Knotのオーナー植竹氏がCOEDOビール在籍時代に造ったビールですが、Session IPAというと不意にこのビールが頭に浮かびます。

当時、アメリカを起点としたIPAブームは日本にも到来。
「より強く、より苦く!」という時代背景もあり度数は7%以上のものも多く「Imperial IPA」などもその流れで生まれました。
ブームは加熱すると、その反動というものが必ず起こるもので、その中で自然と生まれたのが「Session IPA」などの比較的軽いビールです。
温暖な気候との相性の良さからか、瞬く間に西海岸を中心に広まっていきました。

話しは戻ってここ日本、IPAブーム真っ盛りの日本のビールシーンの話題をかっさらったのが前述の「Hoppy Wind Session Ale」です。
その軽やかでありながらもIPAに負けないホップのフレーバーは、5月のけやき広場というシチュエーションも相まって、とても斬新で新しい風を感じさせました。
僕も出店者という立場でしたが、時間を見つけてはビールを買いに行き、全身で浴びるかの如く飲んだという思い出があります。
(このビールは後の、"毱花"へとつながります。)

今ほど国内のブルワリーや輸入ビールも多くなかった頃でしたので、こんな風に1種類のビールに注目が集まるといったことがよくあったように思います。

思い出話しが長くなりました。
パシフィックの"Session"枠には「Ultra Light」と「Hydro Pump」がありますが、それぞれ微妙に目指すところが違い、前者は「軽さを感じさせない、低アルコールビール」で後者は「軽さを楽しむ、低アルコールビール」です。

IPAにも負けないホップの苦味や香りを楽しめつつ、その軽さから何杯でも飲めるような、そんなビールに仕上がりました。


おまけ

※2バッチ目からは別の酵母に変更しました。

今回使った酵母について。

パシフィックではこれまでにも数種類の酵母を使用してきました。
伝統的なビールにルーツがあるものから、比較的新しく商業化されたものまで。

今回使った酵母はOmega Yeast社の「Lutra」という株で、ここ数年クラフトビールシーンで注目されている、北欧にルーツを持つ「Kveik」と呼ばれる酵母の一種です。

北欧の農家が家庭で造っていたビールから採取したものなので、農家の酒=ファームハウスエールとも言えますが、ベルギーのそれとは少し性質が違います。

「Kveik」にも地域によっていくつか種類があり、オレンジのような香りがするものから、トロピカル感のあるものなど様々です。
今回使った「Lutra」に関して言えば「驚くほどクリーン」なのが特徴の1つです。

クリーンな性質を持つイーストは珍しくありませんが「Lutra」が特別な理由が、「高温発酵でも尚クリーンな性質を維持する」と言えるでしょう。
結論から言うと40℃近い発酵温度でもあたかもラガーのようなクリーンさを演出することもできます。

これのなにがすごいのが、あまりぴんときませんよね。
簡単に酵母ごとの発酵温度とそれによってもたらされる味わいについて説明します。

一般的には
ラガー酵母=低温で発酵(10℃前後)
エール酵母=常温で発酵(20℃前後)
となります。

実はこれらは酵母が最も活動しやすい温度ではありません。
あくまで、美味しいビールを作るのに最適な温度なだけです。

では、何度位が酵母にとって最適か?となるとおよそ40℃前後です。
この温度帯が最も酵母の増殖(即ち発酵)が活発に進む温度なのです。

一般的には温度が高いほど、発酵は早く進みますが、それと同時にエステルと呼ばれるフルーティーな香りの成分などが多く生成されます。(その他にも様々な成分が生成されます)
これらはある一定量まではビールに良い風味を与えますが、それが多すぎるとビールの風味や味わいのバランスを崩す要因ともなります。

なので、前述の通りビールの発酵は通常10〜20℃前後で行われることが多いです。

余談ですが、ラガー酵母は低温発酵をしますが、言い換えると“低温発酵ができる酵母“でもあります。
10℃前後の温度帯ではエール酵母は発酵が困難です。
なので結果的に低温で発酵=エステルなどの香りが少ない=キレ感やクリスピーさを表現しやすい、とも言えるのです。

話しは戻り「Lutra」について。
これは「Kveik」に共通することですが、発酵温度に関わらずエステルなどの生成量がとても少ない、もしくはある一定からあまり変化しないのです。

つまり高温発酵をしても、バランスの取れたビールに仕上がると言うことになります。
当然、発酵温度が高ければ発酵期間も短くてすみます。

通常ですと、ラガー酵母で2週間、エール酵母でも1週間ほど発酵に時間がかかりますが、なんとこの「Lutra」はおよそ24時間で発酵が完了しました。
発酵温度は少し控えて(Kveik的には)30℃前後。その差は歴然ですね。

その後の熟成期間などを含めても通常のビールよりも明らかに短い時間でのビール造りに挑戦することも可能です。

僕らも初めて使った酵母ですが、今後色々なビールに応用できる可能性も感じました。

ビール業界のゲームチェンジャーとなるか?
今後が楽しみですね。

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