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Mallory リリースです!




【Mallory】
Style:Dark Strong Ale
ABV:10.0%

複数のモルトの組み合わせで、チョコレート、コーヒー、ナッツ、キャラメル、ドライフルーツなどを連想させる濃厚な香りと、芳醇な味わい。
温度の変化や飲むシチュエーションで様々な表情を見せる奥深いビールとなりました。




「好きなビールは?」
という質問はよくされますが、僕は頭の中にパッと2つのビールが思い浮かびます。
そのビールは20年以上の歴史をもち、飲むたびに新しい表情を見せてくれる最高のビールです。
今回はそのビールへのリスペクトを込めつつ、自分なりの解釈で再表現してみました。


このビールをスタイルに落としこむと、Dark Strong Aleと言えるでしょう。
ハイアルコールビールといえばBarley WineやImperial Stoutがあると思いますが、そのどちらの要素も含むのが今回のビールなのかなと思っています。


8種類もの麦芽の組み合わせが複雑なキャラクターを演出し、また10%もあるアルコール分が、さらに"奥行き"をもたらしてくれます。
凝縮感を出すために、煮沸時間も通常のビールの3倍程度まで長くしました。
濃厚かつ奥深い味わいでありながらアルコール感は少なく、穏やかにリラックスして楽しめる仕上がりになっています。


こういった度数の高いビールは熟成による味の変化を楽しめるのもまたいいところです。
時間の経過によって丸みがでて、より一体感のあるビールへと変化していきます。
個人的には、数ヶ月〜1年くらいを目安に熟成させるのがおすすめ。
僕らも少し熟成用をキープして、その経過を楽しんでみようと思います。


冒頭でも触れた、僕の大好きなビール。そのビールも人名を冠しています。
それに倣い、登山史における最大かつ最高のミステリー、その主人公の名をつけました。


「ねえマロリー、あなたはあの山を登れたのかい?」


おまけ

本文でも触れた好きなビールの話し。
勘が良い方は何のビールかもうお分かりかと。
隠すことでもないので、そのお話を。

オレゴン州ポートランドに「Hair of the Dog」というブルワリーがあります。
ポートランドが”ビールの街”になるずっと前からある老舗ブルワリーです。

ラインナップの多くがアルコール度数10%前後とちょっと変わっていますが、ビールの長期熟成や木樽を用いた熟成などにいち早く取り組んだブルワリーでもあります。

前職の頃にコラボレーションをしたことをきっかけに、2016年、2019年には現地にも行く機会がありました。

初めて現場にいった時の衝撃は今でも忘れません。
世界トップレベルのブルワリーとは思えないような質素な醸造設備。というかそもそも醸造用の設備ですらないのです。笑
この写真は糖化/濾過釜なのですが、牛乳を殺菌するための容器を改造したもの。

煮沸釜は「キャンベルスープ」を製造するのに使われていたものを流用しているそうです。
発酵タンクは一般的なものでしたが、“ありあわせ”とも言わんばかりの設備に面くらいました。
しかも一つのタンクを埋めるのに5仕込みする必要があり、週に一度24時間かけて5仕込みするそうです。(2日に分けないところもまた面白い)

なんとも素人くさいようなエピソードですが、もちろん味は超一流。

この時飲んだ「Adam」というビールにインスパイアを受けて作られたのが今回のビールです。
(写真のものはコンクリートタンクで熟成された”From The Stone”というスペシャルバージョン)
このビール、これまでに何度も飲んでいますが熟成の具合や飲むシチュエーションで本当に色々な表情を見せてくれます。
あれだけ質素な設備で作ったとは思えないような奥深さで本当に大好きなビールです。

そしてオーナーには3人の子供がいるのですが、長男が同い年。
彼は以前、友人と共に日本のクラフトビールシーンのドキュメンタリー映像を撮影するために日本に長期滞在していたこともありました。
滞在中は何度も食事に行ったりと、とても楽しい時間だったのは今でも良い思い出です。

自分のブルワリーができたらいつか「Adam」のようなビールが作りたいなとずっと思っていて、これまで作ったビールの経験を活かし今回挑戦してみた、という次第です。

レシピもまとまり準備を終えた仕込み前日、驚くべきニュースが耳に入りました。
それは「Hair of the Dog」のオーナー、アラン氏が引退を宣言したという内容でした。
それも世代交代かと思ったら、なんとブルワリーも閉鎖するとのこと。
正直かなりショックでしたが、それほどまでにアメリカのクラフトビールシーンは複雑な状況なのかなと想像しました。

偶然とはいえ不思議なタイミングでの仕込みとなったこのビール。
大袈裟にいえば、「Adam」というビールを後世に伝えていくための必然的なタイミングでもあったのかなと勝手に思ってしまったのでした。




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