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Know リリースです!

【Know】
Style:Saison
ABV:6.0%

ベルギーの農家にルーツを持つセゾンスタイルのビール。
酵母由来の花のような香りやスパイシーさ、モルトの香ばしい風味、甘やかな印象でありながらもドライな飲み口が特徴です。
Illustlated by "Keeenue"

「Know」

Know=ノウ

ノウ=農?

農とはもしかしたら、知ることなのかもしれない。

目の前のビールが、何から、どうやってできているのか、それらがどんな季節を過ごしてこの場所にあるのか。

僕たちはビールが農作物であるということを、本当の意味では知らない。
それは、土を耕し、種を蒔き、風雨を憂い、実りを喜ぶ、というプロセスを省略しているからだ。
けれども、悲観することはない。目の前の、海を越えてきた原料だってどこかの誰かが育ててくれたものだから。
その一つ一つを大切に、まずは現状を受け入れたっていいじゃないか。

このビールがパシフィックブリューイングの現在地点。
自家栽培原料比率0%、原材料に占める国内産の農作物0%。
一歩ずつ、着実に。進むべく道は、見えているのだから。

農=Know?

知るとはもしかしたら、生きるということなのかもしれない。


おまけ


「”Know”というテーマで、ラベルを描いていただけますか?」

アーティスト「Keeenue」にそんなお願いをしたのが今年の春先のこと。

そもそもの僕らの出会いはというと、とある県立高校に通う同級生でした。
当時は挨拶以上のコミュニケーションはなかったのですが、高校を卒業した頃に雑誌「Ollie」の企画で彼女のデザインのTシャツが販売されるということを知り「なんかスゲー」と再認識することに。
いわゆる”アーティスト的”な派手なタイプではなかったので、絵を描いていることすら知らなかったというのが本当のところです。

その後も、SNSなどを通して活動を拝見していたのですが、どうにも気になる。難しいことは言えないのですが「なんか好き」な作品が多くタイミングが合えば個展に足を運んだり、街中にある作品を見にいったりしていました。
いつか自分のブルワリーができたらラベルを描いてもらいたいな、と思っていたので今回の企画は個人的にとても感慨深いです。

「Keeenue」の作品は一見ポップな印象で明るい色使いのものも多いのですが、眺めているうちに創造力を掻き立てられるというか、なんだか不思議な気持ちになることが多いです。
また壁画のような大きな作品はその存在感から、グッと惹きつけられるような魅力があります。
その他にも立体物や小物のデザインなども豊富で、毎回展示を見るたびに新しい世界を見せてくれます。

ブルワーという仕事も、ビールを手段とした一種のアーティストのようなものだと思っていてその視点から見ても“アーティストの先輩“という感覚で、同世代の表現者として常に刺激をもらう存在でした。

今回のラベルアートですが、「Know」という名前だけを伝えビールのスペック的な部分は一切伝えずに、自由に描いてもらいました。
「Know」とは直訳すると「知る」という意味ですが、漠然としたテーマでもあるので「Keeenue」が何を考え、どう表現するか?またそのプロセスはどういったものになるのだろう?というある種の実験的な要素もあり、その過程から僕自身もとても楽しませていただきました。
自分の中では、「Know」というビールの内容やコンセプトは概ね決まっていたのですが、「Keeenue」のイラストを見て、そこから更なるインスパイアを受けビールに落とし込むようなことも試みてみました。

「新しいことを知ったり、何か今まで知らなかったものと出会っていくことで広がる世界とか、生まれてくるアイディアみたいなものをイメージしました。パシフィックのビールを味わうみんなの脳(KNOW)にも何かがきっと生まれているはずだと思って絵にしました!」という、コメントと共に出来上がったのが今回のラベルアート。

外側からの情報、そして内側に広がっていく未知。それらが一つにつながっていく様子。そんな印象に刺激を受け、ビール作りも今までやったことのない発酵の方法に挑戦してみることにしました。

このビールはいわゆる”セゾン”というベルギーの農家にルーツを持つスタイルとして括ることもできるのですが、一見すると相反する“セゾン酵母”と”ラガー酵母”という2つの酵母をつかって発酵をさせています。
なぜ相反するかというとセゾン酵母は高温(20-26℃)での発酵を得意とし、フルーティーかつドライな仕上がりとなります。対してラガー酵母は低温(8-12℃)での発酵が多く、クリーンかつクリスプな仕上がりとなることが多いです。

“なにか新しいことをしよう”と無理に考えた手法ではなく、以前からパシフィックで使っているチェコ系のラガー酵母由来の、スパイシー感のある香りがセゾンのそれと近いなと感じていました。
そんなことを考えていた頃に「Farm House Ale」という本を改めて読んだのですが、その中で「Bière de Garde」というスタイルが語られています。
これは主にフランスの農家で作られていたファームハウスエールで、ベルギーとも国境を接していることから「Saison」の兄弟分のような紹介をされることが多いスタイルでもあります。
Saison=セゾン酵母を使ったビールというわけではないのですが、比較的統一感のある香りや味わいが多いことから、「Bière de Garde」もセゾンと近いような味わいのイメージを持っていたのですが、本書によると使用していた酵母は一般的なエール系やラガー酵母が中心だったようです。

というのも“Garde”という言葉は”Lager”と似ていて、どちらも“貯蔵する”という意味合いがあります。

今でこそ酵母というものは、明確に分類され工業的に培養されたものが販売されていますが元をたどれば自然界に存在していたものです。
自然に取り付いた酵母で発酵をさせ、出来が良かった酒から一部を採取し次代に繋いでいく、という繰り返しの中でその土地の個性などが形つくられていったということも想像できます。

今回も現代的視点で見ると相反するような2つの酵母ですが、元をたどると同じようなものだったのではないかという憶測も含めて、それぞれの個性を引き出しながらより複雑性のある味になるようなものを目指して仕込んでみました。

同じレシピで二つの麦汁を仕込み、セゾン酵母とラガー酵母を用いて、それぞれ別々に発酵を行いました。そしてあえて発酵の途中で両者をブレンド、終盤はセゾン酵母が優勢になるような環境を作り発酵の過程を終えました。

結果、フルーティーかつドライな味わいを柱に、独特のスパイシーさやクリスプ感がある仕上がりに。
また両ビールは1年目と2年目の境をまたぐようなスケジュールで仕込みを行いました。
「Know」というコンセプトやラベルアートも含め、パシフィックの2年目への意気込み的な立ち位置のビールでもあります。

「Know」から広がる世界。それらを、体感してもらえたら嬉しいです。



ラベルアートについて

「Keeenue」
1992年神奈川県藤沢市出身。壁画制作やペインティング作品の発表、アートワーク提供など国内外問わず様々な活動を展開。具象でありながら抽象絵画のような独創的で鮮やかな世界観は鑑賞者のイマジネーションを誘発しそれぞれの捉え方や気づきを与える。Nike、Facebook、SHAKE SHACK、ABC-MARTなど数多くのコラボレーションを手掛け注目を集める。

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