主治医に恋をする?

ずいぶん前のことなのだが、ダブルキャンサーのサバイバーの方に「私、主治医ラブだから、先生が病院を移ると追っかけてるの」と言われてびっくりしたことがある。彼女は既婚者だし、確かそのときすでに50代くらいだし、冗談なのだとは思うけど、”ラブ”ねぇ・・・と思ったものだ。
でもまぁ、がんに限らずだけど命を助けてくれた恩人である主治医を慕ったり、恋愛感情に似た気持ちを抱く・・・ということは時々あるらしい。

恋愛感情ではないけれど、主治医が病院を移ると聞いて動揺したことが二度ある。
一度目は、腫瘍内科にて。最初は部長先生に診ていただいていて、抗がん剤治療が始まったらS先生の担当になった。最初のケモの投与中にベッドのところまで挨拶に来てくださり、「一緒に頑張りましょう」と柔らかな笑顔で声をかけてくださった。推定30代半ばとまだ若かったけれど、丁寧に診察してくださり、とても気持ちに寄り添ってくれる先生だった。抗がん剤治療の後に放射線治療があり、それが終わって腫瘍内科に戻ったときに先生の顔を見てホッとしたものだ。局所再発疑惑のときも、しっかりサポートしてくださった。

ある日、いつものように診察を受けていて話の継ぎ目に、先生が少し言いにくそうに「僕、異動になったんですよ」と告げた。「え?」寝耳に水のことで一瞬次の言葉が出なかった。大学の医局の移動があり、来月から違う病院へ移るという。毎月診察はあるが、来月からということは今日でおしまい・・・?「一緒に頑張ってきたんだけどね。。」と先生も残念そうに?仰った。後任の先生の名前を聞き、トボトボと帰途に就いた。
集中的な治療が終わってから間もなかったこともあり、自分でもおかしいほど動揺した。後任の先生があまり好きではなく、また1年ほどで変わることも予想され、数日間かなり暗い気持ちで過ごした。
そして。最初の部長先生に戻してもらえないか聞いてみよう、ダメ元でも・・・と意を決して病院の地域連携室へ電話を入れた。

担当の方は親身になって話を聞いて下さり、部長先生に聞いてみますねとすぐ確認していただけて、先生も快諾してくださって事なきを得たのだった。

今思い出しても、あんなに暗い気持ちで過ごした数日間はちょっとない。
あまり他人に依存しない性格だと自負していたけれど、がんと告知されてから1年数か月。辛い治療の時期を伴走してくれた先生の存在は大きかった。
お元気で過ごされているかしら。もしお会いすることがあったら「おかげさまで元気です」とお伝えしたい。

長くなったので、二度目の話はいずれまた。

日々のよしなしごと、好きな音楽のことなどを書いています。 楽しんでいただけたら、サポートしてくださると嬉しいです。