カルト・ワインに陶酔

桜木みなとさんこと、ずんちゃん主演、待望のカルト・ワイン公演が東京千秋楽を迎えた。念願の初東上公演を無事に完走できたことの喜び。

ずんちゃんが千秋楽のあいさつを述べた際、公演が無事に行えるよう尽力くださったスタッフのみなさま、と裏方のスタッフさんに言及していたが、その言葉に心からの感謝、思いが感じられて私も共に感謝の気持ちがあふれた。

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ジリジリと待ち焦がれワクワクドキドキしながら迎えたマイ初日だった。
初めて目にしたあまりにも素晴らしいカルトワインの世界にすっかり支配され、それからは毎日毎日、ホンジュラスだったり裁判所だったりオークションだったりと狂乱で完璧なイルージョンに頭の中が埋め尽くされていった。

ご贔屓様が真ん中に立つ公演の贅沢さ。
初めて味わうここまでの"出ずっぱり"により浴びせられる幸せな時間に、初日からヒィヒィなっていた。
いつオペラを下ろしたらいいのだろうか。一瞬おろしてもまた5秒後に出てくるずんちゃんにあげっぱなしの二の腕がうれしい悲鳴を上げている。

そしてずんちゃん、もうそれはそれは、嘘みたいにずーーーーっとかっこいい。語彙がなくて申し訳ないのですが、本当にミーハーにかっこいい。お顔はもちろんのこと、所作がずんちゃんのかっこよさを押し上げている。

伏せたまつげ、落とした肩、大きく伸びる左足に180度客席側を向いた膝の側面。それら全てがなんとナチュラルにふるまわれることだろうか。

そして言わずもがなの芝居力。回を追うごとにずんちゃんの表現するシエロが決して固定されたキャラクターではないことがわかる。シエロがホンジュラスで生きていくのに精いっぱいであれば、ずんちゃんの表現もその時感じているシエロで表現される。それに応えるかのようにシエロの幼馴染、フリオの父であるディエゴとのかかわりも毎回客席で受け取るものが深まっていった。

シエロはホンジュラス→メキシコ→アメリカの移民街→NYのオークションと居場所を変えていく。そのたびシエロの風貌も全く違うように目に映る。殺人の最も多い国ホンジュラスでマラスとして生きていたころのシエロはヒリついて痩せて、今日を生きる以外考えるすべもない。それが移動先々でどんどん変化していき、2幕になるころには1幕とおなじずんちゃんが演じているのが信じがたいほど。体重まで変わってるのでは、と思わせられる。
しかし一目フリオに顔を合わせればホンジュラスのシエロが見え隠れする。

あーーーーーー!!!

なんて贅沢にずんちゃんを堪能させていただける公演でしょうか。
もう私は幸せで幸せで、この公演を追いかけられたことが年末ジャンボ一等前後賞並みの幸運に思っている。

この素晴らしい脚本にずんちゃんを当て書きいただいた栗田優香先生に心から感謝申し上げます。
プログラムに書かれた先生のオシャレな一文にも大感動。
先生にとって大切なコレクションであったカルトワインという脚本を、ずんちゃん主演という最高の舞台で開栓することを決めたんだなと読みとった。カルトワインの脚本とずんちゃん主演というマリアージュに、客席は何度も何度も悪酔いをさせてもらった。

カルトワインは書き下ろしのミュージカルだけれど、まるでブロードウェイミュージカルのような雰囲気で進む。舞台最前に、スマートに用意された椅子ズラリを見たときはこれからCHICAGOが始まるのかと思った。

めちゃくちゃオシャレ!

別箱で2チームに分かれている今公演は、宙組生の半分の出演だ。にもかかわらず舞台は気持ちよく埋められている。そのうえ、上級生はもちろん、下級生たちの芝居のうまさには天を仰ぐ。。。いやむしろ、今振り返ってみて初めて”芝居すごかったね”と気づいたのかもしれない。あまりに素晴らしいカンパニーのみせる芝居に舞台が気持ちよく動き続けるため、”うまいなー”と考える隙さえ与えない。
終始集中した没頭を与えてくれる。これほど集中させてもらえたのは上級生下級生隔てない、カンパニーの息と温度のあった芝居のチカラだったに違いない。

没頭して見られる芝居のすばらしさ。あっという間の2時間半。胸いっぱいに満たされ、軽快でありながら、ふと心に落ちた小石の存在に(あれ・・・?)と考えさせられるカルトワイン。

余白を残すような脚本にすっかり心をつかまれて、まだまだ酔いは醒まさない。
まもなく今度は西にて後半戦が開幕する。素晴らしいカルトワインの世界に、一人でも多くの方が酩酊できますように。西の完走を祈っています。

悪酔いするよ!



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