ヘッド・マウント・プレイヤ ~宇宙船からの脱出編~

「おはよう、モリカワ君。君はこの宇宙船の数少ない生き残りだ」
暗闇から視界が開けた。青白い照明の無機質な部屋が見える。ノイズの混じった声は左腕に巻かれた端末から流れているが、端末の画面を見ても通信相手の詳細はわからない。
「私は君の協力者だ。脱出のための支援を行いたい」

「なるほど、あなたはAIですね。こちらに顔を見せずに音声のみでコンタクトするということは」
端末から返事の声はこない。
「まず君には貯蔵庫に向かって欲しい。必要な物資はそこに揃っており、君が目標地点に着いたらまた連絡をする。それでは」
通信は終わった。左腕を水平にして端末の使い方を確認しながら、改めて周囲を見回す。

「やっぱり、まだNPCがプレイヤーの発言に対応するほど技術は進んじゃいないもんなあ」
部屋で見つけた施設管理用のコンピュータを操作し、端末に付近のマップのデータをインストールしたことを確認する。
壮大なVR脱出ゲームの始まりだ。

【続く】

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