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驚きでした!インスタグラムが刺し子人気を下支え

小学校での家庭科の時間、古くなったタオル地やふきんを前にして、初めて針を持った経験。運針と呼ばれる一連の動作ですが、針目がぎくしゃくしてちっともうまく刺せずに、ちょっと恥ずかしかったことを思い出してしまいます。その運針の連続模様で出来上がる「刺し子」が、ここ数年静かなブームになっているとか。いったい何がきっかけで、日本古来の伝統刺しゅうが見直されているのでしょう。


刺し子は東北地方に古くから伝わる刺しゅうの技法で、主に衣類の補修に使われてきました。津軽のこぎん刺し、青森の菱刺し、山形庄内の庄内刺しが日本の三大刺し子と言われていますが、ほかにも刺しゅうの模様として「青海波」「麻の葉」「七宝つなぎ」など日本の伝統柄を布に刺していくというのも特徴のひとつです。柄が白地や紺地に印刷され、手軽に刺し子が楽しめる「花ふきん」を企画・販売しているオリムパス製絲株式会社 東京支店 支店長の千葉 功さんにお話を伺いました。

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「花ふきんは学校教材でも運針の勉強の一つとして使われています。雑巾の運針と同じように針と糸でなぞっていくだけだから、だれでも始められますが、今では介護施設で高齢者の方のリハビリなどにも広く使われています」と千葉さん。お話を聞くと、このコロナ禍で需要がさらに伸びているというより、数年前からじわじわと数字が伸びているというのです──。

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SNSと呼ばれるソーシャル・ネットワーキング・サービスは、今やインターネット上の情報発信サービスとして欠かせないものになっていますが、なかでも主に写真などを投稿するインスタグラムで、刺し子人気は徐々に高まっていったといいます。「インスタ映えという言葉が流行りだした、ちょうど3,4年前くらいからでしょうか。インスタグラムで刺し子の投稿写真を数多く見かけるようになりました」「ちょうどそのころからオリムパス製絲でもインスタを始めるようになり、#オリムパスで検索すると、刺し子の投稿が一番多かったんです」

インスタグラムを活用する世代と、刺し子に興味を抱く層がうまくマッチしたと考えることができますが、投稿を見ると、ふきんやコースターになった刺し子作品の可愛らしさもさることながら、どんな糸を使っているとか、この糸は刺しやすかったとか、作り手のコメントのやり取りが実に多彩で、この中での情報交換が、次にまた作ろうという意欲につながっているんだろうということがうかがい知れます。そして「1枚刺したらもうおしまい!」ではなく、糸の色を変えたり、布地を白から紺に変えたりして、作る枚数が増えていく様子もさらなる楽しみになっていきます。

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プリント済みの花ふきんの生地と刺し子糸、そして針があればすぐに作れる刺し子のふきん。これを作り上げて投稿する楽しさ。そこに生まれるコミュニケーション。小さなコミュニティながら、手仕事を後押ししてくれるSNSの存在がうまく生かされた好例だといえそうです。

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「刺し子はリラックス効果があるともいわれています。気持ちが安定するというか。30代、40代の女性たちが家事も一段落して、寝る前の30分、1時間だけ刺し子に向き合う。この時間でリフレッシュできたり、無心になれたり」と千葉さん。この忙しい情報社会の中、ストレス解消法として刺し子を手に取っている方も多いはずです。刺し子以外の手仕事にも言えることですが、作っていくプロセス、出来上がった時の達成感、そしてSNS等でのお披露目の場──。

新しい生活様式が生まれたこのコロナ禍で、人と会えなくても一人でできる楽しみごとがある。これを少しづつ見つけていくことが、暮らしの充実につながるように思えてなりません。

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最後に、今年4月27日~29日に行われる「第45回 2021日本ホビーショー」の中で”Japanese Handmade ちくちく「刺し子」100展示”が大きく取り上げられる予定です。手軽に始められる、刺し子の花ふきんの魅力も併せてお伝えします。ご期待ください。

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