育児戦争/家政夫と一緒。~その35~
雛祭り
「む? なにをしているのかね?」
「ひなまつりのかざりつけですよ、えへへ。
かわいいでしょう?」
「おんなのこだけのイベントだもんね。
まぁあーちゃーがしらなくてもしかたないよね。ふふん」
「フム。しかし雛祭りの大本は別段女子だけに限定されたイベントでも無い筈だがな」
「へ? そーなの?」
「ああ。
言ってしまえば彼らも”サクリファイス”だ。
人形に穢れや厄を引き受けさせ川に流すという行為、それが原初────流し雛とも言うな。
我が子が元気でいられますように。
病気も無く壮健でいられますように。
そういった願いが雛祭りの起源ともいえる」
「あうう⋯⋯おにんぎょうさんわたしたちのためにかわにながされちゃうんですか?」
「この雛人形、今は嫁入り道具だからな。
我が子の健康と、道中の安全を願う親が子に持たせて送り出す。
道中のあらゆる厄災から子を守ってくれますように、という、離れていても子を案じる親の情愛の形とも言えるものだ。
君たちが結婚するまで流す必要は無い」
「てるてるぼうずのときといい、いろんなひとのおもいをうけて⋯⋯たいへんだね、おにんぎょうさんも」
「⋯⋯フ。
そう思うのなら大切にしてやれ。
彼らは君たちの事を守ってくれるはずだ」
「うんっ!」「はいっ!」
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