ikuji_top_完成

育児戦争/家政夫と一緒。~その34~

自己の救済


「ぷいっ!」
「ううー⋯⋯」
「⋯⋯二人とも。
 いい加減に許してくれないか。これではなにも出来んよ」
「⋯⋯ゆるさないもん」
「やくそくしました。だから、はなしません」
「いや、確かに約束はしたのだが、このまま石像の如く動かずいれば食事も作れん。
 そこはどうなのだ、マスター」


 ⋯⋯ぐー。
 ⋯⋯きゅるるる。

「ふむ」
「だ、だれのせいでこんなになってるとおもってるのー!
 はんにちちかくもかえってこないで⋯⋯ほんとにどっかいっちゃったかとおもって……。ばかー!」
「どっかいっちゃうなら、はなさなければいいんですっ!
 だからだめですっ!」
「⋯⋯む。
 ⋯⋯ではどうすれば離してくれるのかね?」
「⋯⋯。
 ずっといっしょにいてください」
「せいはいが”ばんのうのかま”なら、あーちゃー、わたしたちとずっと⋯⋯」
「それは────駄目だ。
 第一”あの聖杯”には君たちの望む様な能力は、無い」
「じゃあはなさないっ!」
「だめですっ!」

『どうしたらいい。
 万人の救済、か、どこまで行っても世迷言。
 こんなに小さな二人の心ですら救えない私がなにをほざく』

 ────いや。
 自分が自分を救えない。
 だから彼女たちはこんなにも、アーチャーをこの場所にひき留めようとするのだろう。
 前提から間違えている。
 自身を救えない者が、他の誰かを救えるはずがない────。


 そうして二人が根を上げるまで。
 壊れた英雄は子供たちのためだけに頭をなで続けるのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?