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育児戦争/家政夫と一緒。~その15~

祈り


「あーちゃー⋯⋯ねこさんだいじょうぶ?」
「ねこさん⋯⋯うごきませんよ」
「⋯⋯。
 車にはねられたのだろう。その後も何回か踏まれたようだ。
 残念ながら、この子はもう死んでいる」
「しんでるの⋯⋯?」
「そうだ。日の光を見ることも、幸福を感じることも────もう無い。
 この子の未来は、尽きたのだ」
「⋯⋯っ。
 そ、そんなりふじんってないよ⋯⋯。
 このこだってもっといっぱいいきたかったはずだよ⋯⋯」
「ねこさん⋯⋯っ」


 ────そうだ。
 紛争、飢餓、略奪、殺人。
 零れ落ちてゆく命の理不尽を許せなくて、私は力を欲した。
 この世界のすべての理不尽から、誰かを守るために。

 だが。


「凛、桜。
 すべての命を理不尽から守ることは、出来ない。
 砕けた命を巻き戻すことも出来ない。
 ”人間”は、己と、その周りにある一握りのものしか守ることは出来ない」
『⋯⋯っ』
「だからこそ。
 ”人間”は⋯⋯君たちは。
 その手が届く大切なものを守るために、全力をもって生きていかなければならない。
 ────終わってから、間に合わなくなってから、後悔をしないようにな」
「⋯⋯うん」
「だから今は、この子を弔ってやろう。
 今度生まれるときには幸せになれるように。
 全力を持って、祈ろう」
「ぐすっ⋯⋯うん。
 おはかつくって、いっぱいいのるよ」
「はい⋯⋯。
 ねこさん、こんどはしあわせになれますように⋯⋯。
 いまわたしができるきもちいっぱいで、いのります」
「ああ。それがいい」

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