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育児戦争/家政夫と一緒。~その31~

魔術と人と


「じゃぶじゃぶ♪ ごしごし⋯⋯」
「しゅーかんかすると、うがいもてあらいもなんかきもちいーものね!」
「ああ、そうだろう」
「でもさ、あーちゃー。
さいきんのてっていしたこのよぼうへのこだわりは、いったいなに?」
「坂を少し下ったところに住んでいる、坂下さんや鈴木さん家のお子さんも風邪を患っていてな。
 どうも性質の悪い風邪が流行っているらしい。予防対策は彼女達との意見交換の成果とでも言うべきか。主婦は偉大だよ」
「⋯⋯。
 あーちゃーってさ、まえじぶんのこと、『まじゅつし』だっていってたよね」
「少し違うな、『魔術使い』だ」
「まじゅつつかいかー。
 あーちゃーがきてからさ、このおうちなんていうか⋯⋯。
 けっかいがよわってるようにかんじるんだけど⋯⋯」
「む⋯⋯馬鹿を言うな。
 私の守護がありながら何故結界強度が低下するというのだ」
「うーん⋯⋯えとえと、なんていうのかな⋯⋯。
 おとーさんがいたころはさ、いっちゃうと、

 ────ちかくされつつも、いしきがいにある────

 『ひとばらい』がきっちりきどうしててね。
 とおさかのおうちには、だれもちかよろうとしなかったんだ」
「この家は侵入者に牙をむく攻性結界以外にも、無意識化に働きかける多数の魔術で鎧われた強力な要塞だからな」
「だけどさー。あーちゃーがきてから、にわはあかるくなるし。
 あらいわさんはおいしいデザートもってきてくれるし。
 いどばたかいぎ、おうちのまえでしてるじゃない? あーちゃー」
「────む。
 よくよく考えると何をしているのだ私は。
 ⋯⋯すまなかった、私の不注意だ」
「あっ⋯⋯ちがうのっ。えと、なんていうか、その⋯⋯」
「ねーさんのいいたいこと、わかりますよ? えへへ。
 あーちゃーさんにね、おれいをいいたいんですよ」
「⋯⋯は?
 何故だ? 私の行いは拠点としての防衛力を低下させてしまうものだ。
 叱責もやむをえまい、何故礼など⋯⋯」
「⋯⋯まじゅつしとして、なんかまちがってるのかもしれない。
 でもね⋯⋯わたしはこういうの、とってもきもちいいなって、おもったんだ」
「わたしもそうおもいますっ!」
「⋯⋯ふむ。
 では改める必要はないと?」
「ぜんしょをきたいするっ」
「⋯⋯フ。
 了解した、マスター殿」

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