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オープンマインド・ヒューマンネットワーク論 その7

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

“現実”とは、その人が認識しているマイワールド

さて、前回は、すべての人々に知識が与えられていると仮定するところで、一旦筆を置かせていただいた。そこで今回はその大胆な仮定を踏まえた上で、話を次の段階に進めていきたいと思う。

すべての人々は生まれながらにして同等の知識が与えられているとした仮定した場合、その次の段階では、その知識のひとつひとつを確認していくことが大切になっている。なにしろ、DNAが遺伝情報として蓄積した経験知は、1992年時点で47億年分。これは簡単に確認できる量ではなく、もちろんかなりの時間を要するだろう。しかし、ここで理解してほしいのは、<確認>と<覚える>とはまったく違う、ということである。

<確認>は、もともと持っているものを、「そこにもあるよ」、という具合に教えてもらうことである。その結果、「あっ、そうか。気づかなかったよ。ありがとう」である。確認は、瞬時に理解できることであり、そのコミュニケーションの結果は、いつも相手に対して感謝の気持ちで終わる。コミュニケーションの輪が広がって、オープンになるのである。

一方の<覚える>は、自分が持っていなかったものを教えてもらうことである。持っていなかったものを、相手から貰う結果になるのだから、純粋なビジネス関係では、料金を払わなければならない。相手に対して、お願いする気持ちがあふれる。同時に、「料金を払っているんだから、ちゃんと教えろ」とか。時に、覚えられないのは「教え方が悪いからだ」という責任転嫁も起こるだろう。とにかく覚えるという行為は、時間も労力もかかる。だから、一度覚えたことを他人に教えることはもったいない、と感じてしまうのだ。さらに、教えてしまうと、何となく失ってしまったような気がする。そのようなコミュニケーションの結果、相手に対しても、自分に対しても社交辞令的になる。「ありがとう」とは言っても、心からの感謝ではない。コミュニケーションの輪は狭まっていくのである。クローズドになる。

とにかく、確認するということは、時間をかけて、苦労をして、覚える必要がまったくないということである。ここが重要。確認だけをするのだから、覚えるのに比べて、それこそ何十倍、何百倍も速くできる。確認していくのだから他人の話が素直に聞ける。聞かれれば、確認したことをすべて、包み隠さず話すことができる。確認しなければならないことは47億年分と山ほどあるのだから、すでに確認したことなど大切にしまっておくほどのことではない、出し惜しみするほどのものではないという意識がつねに満ちている。確認するのだから言い争うことがない。そういう意見もあるのだ、と逆に感激してしまう。確認するのだから、確認できたら、確認させてくれた人に感謝の気持ちが持てる。

さて、もうお気づきとは思うが、ここでいう確認とは知識を得ることと同じ結果であり、じつは、この確認するという行為が、気持ちが真のオープンマインドの意味するところである。オープンマインドとは、知識と知識のコミュニケーションに不可欠な条件であり、相手のすべての“現実”を受け入れる行為の連続といえる。“現実”とは、その人が認識している経験知(事実)の集まりである。マイワールドなのである。言い換えれば、他人が確認し終えた知識のことである。人間とのコミュニケーションによって、相手の意見を受け入れるということは、相手のマイワールドである“現実”を受け入れることと同じことなのである。そして、この関係はコミュニケーションにおいて、お互いがお互いに永遠に与え続け合うとい行為につながっていくのである。

なぜならば、47億年分の知識の量は無限大だからだ。人間と人間との争いのすべては、限られたものを分かち合う過程において発生している。たくさんあるうちは、余裕に満ちた微笑みを交わし合うことができるが、残り少なくなると、人間は必ず不安と恐れや猜疑心が微笑みを打ち消していく。しかし、知識とは、人間とはいわず地球上に棲むすべての生き物が、生まれたときから同じだけ持っているものであるとするならば、そこには奪い合うという行為はいっさい消えて、与え続けるという行為が永久に続くはずである。なにしろ知識は47億年分もある。決して、一人では使い切ることのできない無限に近い資源である。

また、47億年分の知識をすべて確認するためには、人間をはじめとする、すべての生き物がヒューマンネットワークを構築し、オープンマインドでお互いの“現実”を高速でやりとりし、DNAが蓄積した経験知を、知識として確認していかなければ間に合わないのである。何が間に合わないのか。地球そのものの未来と、人間をはじめとする、地球上に棲むすべての生き物の未来である。すでに崩壊しかかっているのである。(つづく)

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【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等


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