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税金と土地の問題をもう一度考えてみよう その8【最終回】

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

農地改革の善と悪

農地改革は、言うまでもなく、戦後、占領軍としてわが国を一時的に統治した米国によってもたらされたのです。農地改革そのものの仕組みは、政府が地主から強制的に土地を買い上げ、その代価を24年払いの「農地証券」で支払ったのでした。結局、この「農地証券」は戦後の大インフレで紙くずになるのですが、その結果、小作人はタダ同然で土地を手に入れることができたのでした。戦後行われた農地改革を数字で見ると、小作地は田で14%、畑で12%に激減しました。

また、純小作農は8%、小規模自作農を含めても43%に減りました。その結果、我が国の農地の約70%が地主から小作人のものとなったのでした。また1952年7月には、さらに進んだ農地法が施行され、自作農は自分の土地で創意工夫をもって農業に従事できるようになりました。これが成功を収め、1955年には、1200万トンを超える史上最高の米豊作が実現したのでした。

しかし、この農地改革が対象とした農地は、基本的には豊臣秀吉が行った「太閤検地」で計測した農地に限られ、国土の70%近くを占める山林は手つかずのままでした。豊臣秀吉の時代は、年貢がかけられる対象は農地に限定されていたので、農地以外の山林は検知の対象外でした。戦後に行われた農地改革も山林は対象外でした。考えてみれば、我が国は国家として、山林を含む国土が一体どれくらい存在しているかという数字を把握できていないわけです。農地改革によって自作農となった農家を襲ったのは地価の上昇でした。

とくに80年代前半から始まったバブル景気は、宅地の価格を急騰させ、都市ではもちろん、地方都市においても坪単価が100万円単位で上昇した結果、宅地の周辺に存在していた農地の価格も急騰していったのでした。またリゾート開発と称して山林の価格も同じように急騰しました。農地改革が行われた当初は、今まで小作農であった多くの農民が自作農となったため、生産意欲が湧き、日本の農業生産高は飛躍的に増進したのでした。

しかし、バブル景気の到来により、農業で生計を立てていくことより、地価の値上がり待ちの片手間に畑仕事をすることが当たり前になってしまったのでした。考えてみれば、坪単価が30万円、50万円の農地で、一俵(60kg)あたり2万円にも満たない米作りで苦労するより、農地を宅地転用して販売することを考えた方が得と考えるようになりました。結果は農業の荒廃です。農地改革は、我が国の小作人の意識を変革し、自作農として農業生産性を飛躍的に向上させていったのでしたが、それは農地改革の初期の頃で、地価高騰と共に農業意欲がそがれていったのでした。・・・

あの農地改革が、我が国にとって良かった政策だったのか、良くなかった政策だったのか? 結論は、なかなか出せそうにない課題であることには間違いないようです。さて、“お金と時間の問題をもういちど考えてみよう、その1・その2”、そして“税金と土地の問題をもう一度考えてみよう”と長々と、ややこしい話にお付き合いくださり、ありがとうございました・・・。しかし、「終の住処構想」や「新社会システム構想」の話をするにしても、まずはこの、<お金と時間と土地と税金>と向き合ってみないと、どうもならんテーマであることは確かのようです。(了)

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【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等

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