アラのちり鍋、キムチ鍋

気がつけば鍋の良い季節。去年はもつ鍋、水炊き、鴨鍋について書いたけれども、今年はまた違った鍋をもう二種類ご案内したいと思う。どれもすごく飲めます。

アラのちり鍋
食べて旨い魚はいくらでもあって、その優劣をつけることは難しいけれど、こと鍋にしたときの「出汁」の旨さの話となると、アラという魚は頭一つ飛び抜けているように思う。
味は濃厚にして香り芳醇、滋味深く、それでいて飽くことなく飲み続けられるような優しい旨味。鍋も進んで少し煮詰まってくると、皮目のゼラチン質のおかげか、少しとろみがついたようになってくるその出汁が絡みつく野菜の甘さもまた格別と言っていい。
刺身で食べたときには、これがかの名高き高級魚なのかと困惑するほど淡白なものだから、そこから一転、湯に入れて火にかけておくだけで旨味の極致とも言える最高のスープに仕上がるというその驚きも、喜びに拍車をかけるのかもしれない。
三芳では、一部を刺身として薄切りにして、そのまましゃぶしゃぶのようにも食べれるようにお出しする。

ポン酢は四季折々どの柑橘で作っても美味しいけれど、先日グレープフルーツで作ったものが気に入ったので、飽きるまではそれを使おうと思っている。もちろん刺身にも鍋にも良い。

締めは、問答無用で雑炊一択。この圧倒的に旨いアラの出汁を一滴残らず米粒に含ませて楽しみたい。

キムチ鍋
キムチ鍋、といってもこれは和食と言ってもいい気がする。こういう食べ方をしていると韓国の方には怒られるかもしれないけれど、日本人にとってはこの上なく美味しいものだと思う。

まずはゆっくりと時間をかけてとった昆布の出汁に、薄口醤油と少しの酒、よく絞って刻んだキムチを少し。スープは澄んでいる。
そこに木綿の豆腐をスプーンで掬っては入れ、温まる端から食べていく。つまり、これはキムチ味の湯豆腐である。肉だの魚だのはいらない。キムチという調味料は、それだけで十分すぎるほどに複雑な旨味を持っているから、それ以外は努めてシンプルにやるのが良いと思う。

そういうわけで、この鍋もこれで完結で良いのだけれど、もし少し物足りないなら、白菜、しめじ、春菊、薄く切った大根を一緒に食べてももちろん楽しめる。かき餅をしゃぶしゃぶにするのも良い。

締めは素麺かフォーあたりであっさりといきたいところだが、そうでなければ少しだけ本場の流儀にリスペクトを示して、マルタイの棒ラーメンあたりを使ってみるのも悪くない。その場合はぜひともごま油をひと回し。

#アラ #ちり鍋 #キムチ

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