素晴らしい「玉川」というお酒について
美味しい日本酒があるんだよと勧められて良く出てくるのは、香り華やかな大吟醸か、あるいは乳酸が爽やかなキレのよい辛口、まずそのあたりが多かろうと思います。
ところがここでお勧めしようとしている「玉川」というお酒には、かけらもそれらの要素は感じられません。昨今流行りのモダンな日本酒には必須とも思われる、華やかさも爽やかさにも著しく欠けているわけです。
しかし、それが旨い。
初めて飲む人は、自分が一体何を飲んでいるのか、わからなくなるかもしれません。
バターを思わせるコクと少しの酸味、醤油のような香ばしさ、糖の甘み。いくつもの個性的な特徴は、それ以上に圧倒的な"旨味"に包み込まれるかのごとく一体となって、口の中に余韻を残します。
何だこれは日本酒なのか!?いえ、これこそが日本酒なのです。
古くはこういうお酒が日本中に、それこそ当たり前のようにあったことでしょう。
昔ながらの道具、何百年も使われ続ける設備、非効率ながらも丁寧な製法、そうやって造られるお酒は、まず絶対にその蔵でしか出せない特別な味わいをもつことになります。
つまるところ「玉川」とは、そういうお酒なのです。
さて今では希少になってしまった"伝統的日本酒"の一翼たる「玉川」
その造りを担う杜氏こそがフィリップ・ハーパー氏、イギリス人というのですから、僕たち日本人としては感謝をするより他にありません。
さらに彼は伝統を守るだけに留まらず、イギリス人らしい(というと語弊があるかもしれませんが)、とにかく自由な発想をもって面白い商品を次々と生み出しています。そのあり方は、さながら"日本酒界のバーナード・リーチ"。手仕事の日本酒の本質的な復興に欠かせざる人物として私淑するものです。
閑話休題
「玉川」の味の真骨頂は、熟成とそれに伴う変化の中にこそ見つけることができます。すなわち抜栓して常温放置。何ヶ月でもかけてゆっくり飲めばお酒は次第にこなれていって、瓶が空になる頃には得も言われぬ旨味の境地が待っていると断言いたしましょう。
10月1日のイベントに向けても、事前に開封したものを現在進行中で熟成させているところです。玉川飲んだことあるよ、という方も是非足をお運びください。
これが、ここにあるこれこそが、本気を出した「玉川」です。
どうぞみなさまお楽しみに。