ZAMROCKってなんだ?
当店にお越しいただいた方や、ウェブショップをご覧いただいている方の中には、気になっている人もいるかもしれない「ZAMROCK」というジャンル。
おそらく、いや間違いなく日本では当店のみに存在する「ZAMROCK」というコーナー。
そろそろ疑問を解消しておきましょう。
ZAMROCKってなんだ?
アフリカ大陸の南部の内陸国、ザンビア共和国。タンザニア、ジンバブエ、ボツワナ、コンゴ民主共和国などと隣接する、銅の産出と、世界三大瀑布として有名なビクトリアの滝で知られる国です。とはいえ日本ではほとんど知られていない、未知の国と言えるでしょう。そんなザンビア共和国で1970年代に起こった、ファズ、フランジャー、バキバキのサイケデリックなロック・シーン。
これがZAMROCKの正体です。
ザンビアは1968年までイギリスの植民地。隣接するジンバブエと共にローデシアと呼ばれる地域でした。
60年代後期から70年代といえば、ブリティッシュ・ロックが特に盛り上がった年代。
本土から遠く離れたザンビアの地でも、ジミヘンやブラック・サバス、ディープ・パープルなどに影響を受けまくった独自のロックが生まれました。
アフリカの音楽といえば、ナイジェリアのフェラ・クティに代表されるアフロビートや、同じくナイジェリアのハイライフ、コンゴのスークースなどが有名です。
もちろん地域ごとに様々な音楽が存在しますが、やはり土着的で陽気な音楽が多いです。
ではZAMROCKは?というと、良い意味で全然アフリカらしくない。
初めて聴く方はきっと驚くと思います。
僕もそんな一人で、未知の音楽に出会ったその瞬間の衝撃は忘れられません。
最高にクールだけど、とんでもなく熱くて、荒々しくて、人懐っこい。
ブリティッシュ・ハード/サイケがジェームス・ブラウンのグルーヴの上で展開されているような。
歌詞は英語が大半で、時折民族の言語であるベンバ語やニャンジャ語が混ざります。
これが1970年代のアフリカ産?ザンビア??どこだよ!!??重い鈍器で脳天をやられた様な、混乱を起こしたことは間違いありません。
ZAMROCKの重要グループ/人物
The Witch
ZAMROCKのシーンにおいて、幾つか押さえておくべき人物、グループ、レーベルがあります。
The Witchはその筆頭に挙げられるバンドでしょう。
ヴォーカリストのEmmanuel “Jagari" Chanda率いるこのバンドがリリースした、1974年の「Introducing」と「In The Past」という2枚の自主制作アルバムは、ザンビアで制作された最初の音楽レコードと言われています。
バンドのショーでの販売用にそれぞれ2〜300枚ほど作られたと言われていますが、おそらく「In The Past」の方はこれよりも少ない数です。
この非常にプリミティブな2枚のアルバムは、翌年に再録音され、ZAMROCKの名門レーベル「Zambia Musia Parlour」から新装ジャケットと共に再リリースされます。
Musi-O-Tunya & Rikki Ililonga
ちょうどThe Witchが自主制作の2枚のアルバムを出した頃、Rikki Ililonga率いるMusi-O-Tunyaも、近隣国ケニアのナイロビで初めてのシングルを録音しました。
ヴィクトリアの滝の現地名 = Musi-O-Tunyaを冠するこのバンドは、2枚のアルバムを残し、ソロで7枚ものアルバムを残したフロントマンRikki Ililongaは、ZAMROCKシーンで最も成功した人物の一人でしょう。
先のThe Witchが残した3rdアルバム「Lazy Bones!!」と、Musi-O-Tunyaの1stアルバム「Wings Of Africa」、Ililongaのソロ1st「Zambia」はZAMROCKで必ず聴くべき名盤です。
Paul Ngozi & Ngozi Family
わけの分からない国のわけの分からない音楽の話をしているのに、ちょっと情報量が多くなりすぎているかもしれません。
でもまだまだ紹介すべき素晴らしい音楽とミュージシャンがたくさんいます。
その筆頭がPaul Ngoziというギタリストです。
悪名高い犯罪地区Chibolya Township出身のNgoziのギタープレイはとにかく野生味に溢れたワイルドスタイル。
漏電?感電?気味のファズやワウには、ZAMROCKの魅力が凝縮されています。
Musi-O-Tunyaの初期シングル"Tsegulani"にも参加経験のある彼は、ソロ名義とNgozi Family名義で数多くの作品を残し、バンド・メンバーのソロ作品のプロダクションも手掛けました。
ドラマーChrissy Zebby Temboの1stソロ「My Ancestors」は、2000年代以降何度も繰り返し再発される、世界で最も有名なZAMROCKアルバムの一つです。再発盤を見つける事は容易ですが、オリジナル盤はシーンの稀少タイトル最高峰に君臨する幻の一枚です。
Edward Khuzwayo / The Tinkles
ZAMROCKシーンの繁栄にZambia Music Parlourというレーベルと、Edward Khuzwayoという敏腕プロデューサーの存在も忘れてはいけません。
1974年?75年?にKhuzwayoは、The Tinklesというバンドのプロダクションを手掛けます。
映画のサントラ制作用に使用されていたフィルム・スタジオで録音された彼らの1stアルバム「Chalo Kuwama」は、Zambia Music Parlourから発表された初めての作品で、同時に商業的にリリースされた純ザンビア製の初めてのLPレコードとなりました。
「Chalo Kuwama」は各家庭が奪い合うほどのヒットとなり、多くのザンビア人は我が家のレコードラックに並ぶ初めてのローカル・ミュージシャンのレコードに感銘を受けました。
爽やかなロック・ナンバーもお気に入りですが、このアルバムの特筆すべきは"Tinkles Funk"のようなファンク・トラックです。
レコードの稀少性とシーンの終焉
なぜZAMROCKのレコードは稀少なのか?
さて、存在すら知られていない音楽の話をつらつらと書いてまいりましたが、この音楽が何故ほとんど知られる事なく、何故一般的なレコード店で扱われていないのか、そしてこの音楽が辿った道のりについても触れてみようと思います。
もう少しだけお付き合いください。
1970年代半ばに盛り上がったZAMROCKシーンですが、これはほとんどがザンビア国内に限ったマーケットでした。
インターナショナルなリリースを果たしたミュージシャンもいますが、私の知る限りではそれは僅か3タイトルです。
当時のザンビアの人口は500万人ほどで、そもそもこの音楽のマーケットがかなり小さかったこと。(ちなみに当時のナイジェリアは約6600万人、日本は1億1千万人)
どんなコンディションでも世界で最も稀少で、加えて世界で最も状態の悪いレコードとして悪名高いのがザンビアのレコード。
使い古されたフリスビーか、ヤスリがけしたような状態がごく一般的で、ジャケットは「前後の紙が現存している」という時点で既に稀少です。
これらがザンビアのレコードが一般的なレコード店に並ばない理由です。
ZAMROCKの終焉
そしてこのシーンは1980年代に入る頃には終焉を迎えます。
それは主要産業である銅の価格の急落によりザンビア国内の経済状況が悪化したこと。
カリンデュラと呼ばれる新たな音楽が流行し始めたこと。
これがその主な理由です。
初めてのZAMROCKレコードが製作されてから、僅か5年ほどで消えた音楽。
同時期にクリームのジンジャー・ベイカーや、ロイ・エアーズによって世界的に知られるようになったナイジェリアの音楽とは違い、世界の人々はZAMROCKが輝いていた僅かな時間に、このフロンティアへ辿り着くことが出来ませんでした。
ZAMROCKのオリジナル盤は最も稀少でとても高価です。
日本のレコード基準では最低ランクのコンディションだとしても価値があり、それらはどんな状態でも見つける事は困難を極めます。
現代に蘇るZAMROCK
先の話でも少し触れましたが、ZAMROCKのレコードも徐々に再発が進み、手頃な価格でノイズなしのZAMROCKを聴くことができるようになりつつあります。
Egon率いる米Now-Againや、カナダのStrawberry Rainといったレーベルがその筆頭で、特にNow-Againがリリースした「Welcom To ZAMROCK」というコンピレーション・アルバムは、ZAMROCKとはどんな音楽かを知るための最も近道と言える素晴らしい作品です。
ZAMROCKを聴いてみよう!!
YouTube
百聞は一見にしかず、いや、一聴にしかずということで、まずはZAMROCKの魅力溢れるサウンドを体感してみてください。
そしてこの未知の音楽に脳天を撃ち抜かれたなら、ぜひ当店へお越しくださいな。
Spotify
Spotifyのプレイリストも作ってみたので、こちらも是非チェックしてください!
もちろんまだまだ音楽配信やYouTubeでも聴けない、知られざる名曲が沢山あります。
そんな未知の音楽を聴くにはどうすればいいか?
ボロボロのザンビア産レコードを手に入れれば良いのです◎
Let's diggin' the ZAMROCK!!!
hair & music parlour FAM店主 兼 ZAMROCK研究家 DJ ton
@zamrock.jp
ZAMROCKのミックステープ発売
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