#水玉自伝 私の世


児童期

1995年、阪神淡路大震災をスルーして自分は7月に生まれ、エヴァンゲリオンが始まった(しかし未だに履修していない)。
当時から多分オナニーをしていて、当時テレビでよく見た藤原竜也と藤原紀香でずっと濃密なラブストーリーを妄想していた。まだアダルトビデオを知らないので、こっそり描くエロマンガには陰毛がない。陰毛を知るのには10年かかった。

歳が10個離れた兄と、8つ離れた姉と、既に四十路の父、四十路に怯える母に蝶よ花よと可愛がられた。当時いた従姉弟は皆兄や姉より年上だったので、マセガキになる他なかった。
マセガキは幼稚園で浮いていて、会話ができなかった。

頭の中が周囲の言うことの三個先を予測しているのが気持ち悪かった。マセガキも自分が何を言っているのかわからなかったし、自分でもこんなこと言いたい訳じゃないんだけどな~困ったな~、と思いながら一人で絵を描いていた。絵には並々ならぬ自信があって、人に見せるとこれまた思いの丈が人の三個先を上回っていたので気持ち悪かった。尾迫先生という担任の先生だけが友達だった。卒園するころにはなんとか人と会話できるようになっていたらしい。最近通信簿を読み返して知った。

幼稚園一年目は本田望結に似ていた。小さい頃にロリイタを経験していたので不満がない。むしろロリイタが似合う自分が気持ち悪かった印象がある。もうちょっとさっぱりしたかった。成長につれ兄に似るようになった。つまり鼻の穴が大きくなり、瞼がはれぼったくなってきた。小学生になると顔が縦に長くなった。

小学校ではいい思い出がない。気が付いたら嫌われてて、気が付いたら怒られてて、気が付いたら明日が来るのが怖いみたいな生活だった。田舎者なんで。田舎のスクールカーストは、いかに強欲で自己中心になった者が制するところがある。そういうひとは、相対的に見れば、実はやんわりと不幸なんじゃないかと最近思っている。でもあくまで私の主観なのだが。ずっと我慢しても、田舎の閉鎖的な社会にいつまでも縛られている人もいるのはいる。忘れてはいけない。

小学校4年生で鼻水がきたなくて服が少なくて孤立した。
小学校5年生では現在医者になった美少女に都合のいいように暇に付き合わされたり急に粛清のごとく日頃溜めてた悪口をわざわざ帰り道に呼び止められて1時間くらい聞かせられたり、無視なんてのはまだ慣れていた。
小学校3年生の時に、隣の席のTくんの話が面白くて、それからずっと好きだった。これは中学3年まで続く。
そんなT君と小学校6年生の時に同じクラスになれてテンションが上がった。そして、小学校6年生の頃やっとスクールカーストで一番上の方に移動した。再びマセガキだった。小学生なのに、田舎者だから香水つけて登校していた。臭いと言われた。

小学校6年生に一番仲良しだった子に、中学校1年生の頃いきなり嫌いと言われて絶交した。彼女は私の学年で1番成績がいい才女だった。しかし彼女もT君のことが好きだったんじゃないかな、と思う。T君の噂で、仕入先の信頼を失いたくないがために、情報提供を拒否したら絶交に至った。
中学校1年生頃から、Rという人とつるむようになった。Rはバスケ部に所属したがすぐハブられて登校拒否を始めた。私はR以外に相手をしてくれる人というか話ができる人がいなかったので、部活帰りに近所のRの家に寄って公園でお喋りしていた。

この頃からインターネットにハマった。もともと小学校の頃からテレビが好きで、小学校4年の頃は次長課長、中学生2年ではオードリー、大学2年では三四郎、3年ではカズレーザーにハマった。小学校の頃から次長課長の2ちゃんねるをよく見ていた。
中学一年時に我が家では衛星放送と契約してMTVやスペースシャワーTVを夜中のテスト勉強中によく見ていた。そこからyoutubeで深めた。そうやって相対性理論を知った。
その関連動画で、赤いサムネイルがいつも一番上に出てきた。一週間かかって、勇気を出してクリックした。もしアダルトビデオだったらどうしようと悩みながら。

それが、水玉病である。
一撃でアーバンギャルドのとりこになり、一日5回は必ず再生した。
そして松永天馬のツイッターを読んだ。購読するためにツイッターを始めた。砂糖のような電撃だった。

中学校以前からモバゲーなどに手を出していた。あとは、魔法のiらんども。先述の元・友人才女に紹介された無料画像素材を未だに利用している。有難うございます。
アーバンギャルドもその界隈を利用していたらしいが、形骸化した後に気づいた。urbangarde.netしか見てなかった。魔法のiらんどのプロフィールで、いち早く私は【好きなタイプ】の欄に松永天馬と書いた。松永天馬がアーバンギャルドの核だって誰が見てもわかるでしょ。一人だけ所作のキレが違う。浜崎容子の今はないAV女優感もたいへん素晴らしかった。

Rが私に戸川純を紹介してくれたお礼に、アーバンギャルドを薦めたら見事にハマった。Rは冷笑主義で、私がアーバンギャルドの解釈についてブログを書くと揶揄するようなツイートをした。それでも私には友達がRしか居なかった。

アーバンギャルドの音源は高校入学時に兄が都市計画と証明を買ってくれたのが最初で、それまでyoutubeで我慢していた。エクリチュールアバンチュールシュールを聴くために作業用BGMしか上がってないから、1時間の前座を聴いて、やっと聴ける、みたいな音楽の聴き方をしていた。

中学1年に「少女は二度死ぬ」中学2年に「少女都市計画」中学3年で「少女の証明」高校1年でメジャーデビュー、そして「スカート革命」という黄金期を迎えた。まあそういう訳で、たとえ部活で顧問に嫌われて試合のスタメンから通信簿の成績の5からハブられたりしても、そもそも卓球なんて好きじゃないし、部活なんて時間の無駄だし、そんなことよりさっさと家帰って予習してyoutubeとツイッターを見たかった。

少女都市計画前からコンクリート詰め女子高生事件は知っていたので、その世界観が好きだったし、「普通の女の子はこんな音楽聴かない」などと言った「傷だらけのマリア」の歌詞には目から鱗鱗の嵐。何よりアーバンギャルドが「水玉病」で終わらなかったのが今後も信頼する根拠になった。

松永天馬の生徒会長みに憧れて、いじめられっこだったくせに生徒会に出馬した。図書委員長をやった。あの時のレジュメは黒歴史で、当時漁ってた画像素材もいっぱい入ってたUSBがどっか行ったのは幸運だと思う。ちなみに月光条例って漫画で「図書委員長の工藤さん」が出てきますが、ここに実在していました。

中学3年生がわたしのピークだった。卒業文集で面白い人とか将来有望だとかそういう類のものは全部一位だった。塾で私が一番面白かった。高校受験も成功した。県立福岡高校に入学した。

自慰期

同級生は皆個性とか人間性をバチバチに競い合ってて、今でも会いたくない。そんな中唯一の癒しはアーバンギャルドの新曲。松永天馬のツイート。そしてそれらを基にして美術部として絵を描くことだった。

以下、過去のブログの引用である。

わたしの高校は福岡県で三番目に偏差値が高い高校で、勉強もしておきながらみんないかに自分が凄いかを主張して三年間が終わって卒業するような変な学校だった。

その空気に飲み込まれて、私は一切数学を勉強せずに道徳心を育てて卒業した。数学以外の勉強はした。数学は先生が頑なに教科書を朗読するスタイルを崩さなかったのでそれならわたしが勉強する意味がなかったんだろうと今なら結論づけている。とか言っておきながら理系クラスに所属していた。

高校時代、何を思ったかオナニーを始めた。元々中学校の頃からタカアンドトシのタカとか山里亮太に強姦される妄想をよくしていたので、性欲が溜まって溜まってしかたなかったのはある。性欲というか。恋人が欲しかった。高校時代と言ったらオナニーをしている時の記憶しかちょっと思い出せない。

母親に全裸姿で二日間まるまる寝ていたのを見られた時は頭真っ白で母親も見て見ぬふりをしてくれたので、何を思ったとかは覚えてないけどでもやっぱりショックだった。

兄が当時同居していたため、兄のニートがとても邪魔だった。オナニーができないから。高校時代は毎日エクスタシーだった。あれはもう二度とない。兄は優しいから気を遣ってオナニー時を避けてくれたりしていたけど、センシティブなので兄の存在を許せなかった。

今日(2020/4/30)なんでオナニーの話ばっかりするのかというと、ふと、高校時代に、中学時代ブイブイ言わせていた塾に凱旋した時の記憶が今日よみがえったからだ。その時、お世話になった英語の藤原先生に「彼氏できたの?」と言われたのだった。彼氏は、大学四年までできなかった。きっと、彼氏ができて、性行為の楽しみを知るころに漂わせる香りを身に纏っていたのだろう。所謂フェロモン。言い換えればワキガかもしれない。

でもそのフェロモンは自分自身で作り上げたものでしかなく、誰かのために咲かせたわけじゃないのだ。今となってはそのナルシシズムに「よくやった」と思っているが当時は恥ずかしくてしかたなかった。

オナニーしているのがバレたと完全に思い込んでいた。オナニーにしか当時楽しみがなかった、という事実は弱点である。恥ずかしいと言い切ってはいけないけど、やっぱり、その点をほじくられて会話してたらだんまりしてしまうと思う。高校時代の好きな人にはことごとく蔑ろにされたし、今でいえばセクハラみたいなことも日常的にされていた。恨みを晴らすまでの気概はない。

つまり、高校時代はオナニーとセクハラと数学の赤点とアーバンギャルドしか覚えてない。

高校二年の時、初めてライブに行った。アーバンギャルドのドラムロゴスだった。
松永天馬と目が合って、右肩を叩かれた。その後のニコ生で「ありがとおりもん」とだけ入力したらそのワードを連呼されて放送が終わった。不思議な日だった。

あとは……松永天馬似のスキンヘッド男優がブッサイクなパイパン女優と絡む動画を発見して興奮した話でもしますか?覚えてないですけど……


二次創作

高校二年で、担任及び複数教師からセクハラのようなことをされて、まんざらでもない自分もいて、その中で苦しんでいた時にはじめて小説が書けた。今回改めて投下する。

高校3年の時友達に送った妄想メールを基にちゃんと小説っぽく書こうと思いそうしました。某バンドをイメージして書きましたが、絶対に真に受けないでください。

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江崎杏子は何もかも嫌になった。猫が脱走した。2匹いたのにどちらもいらっしゃらない。オートロックの家なのになぜ?何のために、片道一時間をかけて高級猫缶を大量に某高級スーパーで買ったのだろうか。

最近までなにもかもうまくいっていた。杏子の所属するバンドは、メンバーが赤と白の水玉を基調としたファッションに身を包み、その中毒性の高いポップな音楽性と毒のある歌詞が見事評価されてメジャーデビューを果たし、メジャー初シングルやアルバムもヒットした。バンドのボーカルであり容姿に恵まれた杏子はたちまち女子高生らのアイコンとなった。

しかし目標が次々と課せられるわ、言葉に謎の責任が伴うわでなんとなく息苦しかった。インスタグラムには毎日違う服を載せなきゃいけないので服代がばかにならない。人気がどんどん高まっているのか、売り上げが伸びてはいるが、商売人よりも先に表現者である杏子及びメンバーはその状況に満足できないようでだんだんとバンドの中もギスギスしだした。それがファンにも伝わってしまったのだろうか、メジャーデビューして2年目の夏のツアーは客の入りが大変悪かった。

バンドは杏子だけが女で、あとは男のみ。紅一点の影響力はないと考えたいが実感としては大きく、ゆえにとても気を遣う。もともと杏子は病気がちで、精神に負担がくると体調に影響する質だった。今までは、今考えると何もかもうまくいっていたので多少の気遣いも苦じゃなかったが最近だんだんとしんどいものになってきた。

それに、最近バンドの一人である松下崚馬に告白された。紳士的な印象はあったが、予期しない出来事だけに驚いた。最初は女にモテなさすぎて目に入った女を片っ端から口説いているのかと思ったし、バンドのリーダーとしてしか見れなかった。しかし、杏子は崚馬の書く独創的な歌詞が好きだったし、その言葉を歌うことに誇りを持っていた。慕ってはいたのだ。最近になって時折自分にそそがれる眼差しから彼の真剣さを実感し、嬉しいようなでも駄目なような気持でいた。

ある日の出来事。ツイッターでバンドのエゴサーチをしていたら、崚馬と女の仲睦まじげなランチの光景を捉えた写真があった。なによりも先に目に入ったのは女の胸の馬鹿でかさだったが、その次に目に入ったなんとも嬉しそうな楽しそうな崚馬の顔が頭からこびりついて離れない。気づいてしまった。杏子は崚馬のことが好きだと。

そんなことを考えながら今日を生きていたら猫がいなくなった。辛い時も幸せな時もずっと共に生きてきた猫。スコティッシュフォールドなもんでなかなかお高い値段だった。メジャーに出て初給料で買った猫。オリコン1位になった時にもう一匹買って、一人暮らしだった家もたちまちにぎやかになり全然寂しくなくなった。心のよりどころがいない。猫は死期が近づくと姿を消すと聞くし、もう二度と会えないのかもしれない。そう思うとやるせなくなってきた。

明日になれば、また新曲の会議だ。杏子はとある曲を担当することになっているが、やる気が出なくてアイデアも浮かばなくて全然できていない。明日が曲の〆切のようなものだから、明日までにできていないと崚馬に怒られる。でも、あいつに怒られてたまるか。そう思うと、衝動的にバンドのLINEにこう送りつけてしまった。

「バンド辞めます。」

それから魂が抜け、一気に杏子を眠気が襲った。ひたすらに杏子は眠った。半年ぶりの睡魔で一週間ぶりの睡眠であった。

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松下崚馬は焦っていた。江崎杏子が来ないと思い、LINEを見たら辞めるだなんて。絶対に自分が告白をしてしまったことが影響していると考えた。しかしながら、一昨日はあんなに自分にデレデレしていてくれて、自分を受け入れてくれたような気がしたのに。

バンドは新曲の話ができなくなり、アルバム制作どころかバンドそのものを休止したく思っていたがメジャーの風当たりは強く、所属事務所は新曲のノルマを達成してもらわないとクビにするし契約に関して違約金を請求すると言った。さらにこんなスキャンダルを活かさずにどう過ごすのだと言った。

しかたがないので松下崚馬属するバンド「瓶詰地獄」は杏子に代わるボーカルを募集することにした。

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瓶詰地獄info @bottled_hell

【拡散希望!重大発表】

江崎杏子に代わる瓶詰地獄のアイコンを募集しています!

詳しくはこちら → https://bottled_hell.net

少女よ。君が時代を踊らせ。(by 松下崚馬)

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オーディションには古今東西のあらゆる可愛い子ちゃんがやってきた。中には今まで楽曲提供してきたアイドルや対バンしたバンドやアイドルも男女問わずオーディションに参加してくれてメンバーたちは驚くと共に感謝感激した。しかしながらこのオーディションでメンバーたちは杏子の存在のデカさに気づく。ネクスト江崎杏子がなかなか見つからないのだ。容姿端麗で、陶器のような美声を持ちなおかつ宅録ができるような才能の持ち主はなかなかいなかった。

困っていたその時、なんと江崎杏子がスタジオに戻ってきたではないか。

喜ぶ松下崚馬。安堵する他のメンバーであるギタリスト瀬戸忍にキーボード久保田解。しかしながら、瀬戸と久保田は違和感を抱いていた。江崎杏子にしては……胸が大きすぎないか?

江崎杏子は容姿端麗であるものの、貧乳であった。気づかぬ松下崚馬はメンバーをレコーディングを促す。作曲の話をすると「忘れた」というし、歌わせてみたらことごとく音は外すし、ますます怪しい。これは偽物だと瀬戸と久保田は確信するもあまりにも胸以外の外見が江崎杏子なので不気味に思い何も言えなかった。新曲は残りの三人でなんとかして、江崎杏子の歌声も機械で弄って誤魔化した。ボカロが浸透した昨今、声なんてどうにでもなるのだ。

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一方。3日くらい寝て起きては猫を探し、また3日寝ては猫を探す日々を送っていた江崎杏子は、強制的に友人に渋谷に来るように言われて、3時間遅刻するもしぶしぶ渋谷に行くことにした。すると。PARCOに貼られている大広告に撮影した覚えのない自分の写真がでかでかと載っていた。なんだあれは。そして自分にしては胸が大きすぎないか。ふと自分の胸部を見る。ない。あんなものはない。あれは誰だ。あれは私の偽物だ。きっと奴は自分を江崎杏子だと偽って松下崚馬をたぶらかしメンバーを騙し瓶詰地獄を乗っ取ろうとしたのだ。なんのために?……こんなことあってはならない。本物の江崎杏子はすぐさま瓶詰地獄をググった。ホームページを確認した。ライブは渋谷さくらホールでちょうど1時間後だった。

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新生:瓶詰地獄になってから初めてのライブが始まった。国歌からメジャー第1作めにつながるような流れのリミックスが流れ、久保田解、瀬戸忍、松下崚馬の順で登場した。そしてリミックスのメロディがピークに達し最高にボルテージが上がった時、江崎杏子が登場した。でかい乳房を携えて。

ライブの客はなにか違和感を抱きながらもそれが何かを感じ取れずにいた。本番一曲目が始まった。二曲目も始まった。三曲目も始まった。だけどいまいち盛り上がりにかけた。それもそのはず、まがいものの江崎杏子だから、すべて口パクなのだ。振り付けもへたくそ。だけどなぜか許せる。それはおっぱいが揺れるから。大きな乳房が揺れるのを見るのは、他の事をどうでもよくさせる作用があるらしい。

MCに入る。久保田解が喋る。自己紹介しましょう。瀬戸忍に振る。オタ芸を披露する。そして松下崚馬に振る。先ほどより誇張したオタ芸を披露する。はい、ここで江崎杏子のツッコみの出番。だが。

……何もしない。

さっきまであれほど稽古に稽古を重ねたところなのに。さすがにまずいと思ったまがいものの江崎杏子、なんと彼女もオタ芸を披露するも、誰も彼女を笑えない。収拾のつかない空気になり、松下崚馬は無理矢理次の曲にすすめようとした。次の曲は、バンドを有名にしメジャーの決め手となった曲『林檎病』だ。イントロが流れる。強張った顔のままにせものの江崎杏子が口を開いた瞬間、マイクが奪われた。

奪ったのは……江崎杏子だ。

「この下手くそ! 口パクくらい器用にやりなさいよ」

ライブの客は同じ人間が二人いることに驚き慄いていた。メンバーも同じく。

にせものは言った。

「誰よ、この女! 瓶詰地獄の歌姫は私よ!」

くぐもった、本人と比べるとあまり可愛くない声が会場に響いた。どの口が言っているんだとほんものは困惑した。首の辺りに線を見つけたほんものは、それを確信してにせものの皮を剥いだ。

そこには、ニキビまみれの、若い江崎杏子よりもずっと若い、目がうつろな少女が露わになった。ほんものは言った。

「ねえ、あんたは何がしたかったの?」

すっぽんぽんのにせものは泣きながら

「わたし。瓶詰地獄が好きで。曲だけじゃなくてすべてが好きで。こんなに好きなもの他にないの。その気持ちを崚馬さんに伝えたら、返事がきて。だからつけあがっちゃった。それから崚馬さんがどんどん好きになって、どんどん杏子おねえさんが羨ましく、憎たらしくなって……。欲望はとどまることをしらないの。好きなだけで幸せだったのに。いろいろ知恵ついたら、こんなことできるんだって思いついてやっちゃった。そしたら杏子おねえさんが邪魔で仕方なかったの。自分をさしおいて、杏子おねえさんの誹謗中傷ばかりツイートしちゃってた……。ほんとごめんなさい」

江崎杏子に向けられる誹謗中傷はそんなに珍しいものではなかったのでどれがにせもののものか特定できなかったけど、彼女がどんな奴であるかはこの言葉を聞いてなんとなくわかった。この子は、キチガイだ。相手にしてはならないしするまでもない。だけど敢えてこうしてやるのだ。

「あんたのやったことは謝った程度じゃ絶対にゆるさないから」

「……はい」

「お仕置きに堪えたら考えてあげる」

「はっ?」

「お仕置き!」

ほんものは思いっきりにせものの乳房を公衆の面前で揉みしだいた。ついにせものが声を漏らしたこともあって、ライブの客及びバンドのメンバーは目のやり場に困った。

恥ずかしさの絶頂にいるにせもののニキビまみれの頬にめいっぱいほんものはキスをした。口紅がべっとりついた。

「イヤァアアアアアアアアアアアアア」と言いにせものは退散した。

それからライブは再開した。休養を取った後のほんものの歌声は天下無敵で、客はというと例を見ない盛り上がりようだった。

ライブが終わった後、「おっぱいで気づけよ、」と江崎杏子はメンバーを叱りつける。「気づいたけども……」とごにょごにょ言う瀬戸と久保田をよそに、「ごめんな」と松下崚馬は素直に謝った。

「崚馬はおっぱい好きなんだね」

「いや、そうじゃない」

「どうして?」

「僕は、遠視なんだ」

「ふうん」

「巨乳は、見えなかった。残念ながらね」

「あの日どんなことしたの」

「それは言えない!」

「なんで!」

まーた始まった、とよそ目で見る瀬戸と久保田。

「いつか言ってみせる!」

「嫌だ。今言って」

「嫌だ! 今は嫌だ!」

もしかして……二人は両想いなのかしら。しかしこれは嘘。全て四月一日の早朝にファンが書いた嘘。ニキビまみれの少女がついた嘘。いつだってにせものはほんものに好かれない。いくら愛しても愛してもらえない。信じても信じても裏切ってくれさえしない。だから少女は嘘をつくのだ。

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こんな映画もとい大々的なコマーシャルというかプロパガンダヴィデオを撮りたいなと。切に願っている。©curelibido

以下おまけ

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ぽぴー @popipopipopiiiiiii

@berry_berry_gall 杏子おねえさん! 先日はすみませんでした。おねえさんにキスされたところのニキビ、翌日すぐに治りました! よろしければ化粧品をおしえていただけないでしょうか?

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この文章は実は以前にも別名義で公開していたが、これによく似た文章を有名なアーバンギャルが公開していたのには笑った。

実はこの文章は、出来た直後に松永天馬のフェイスブックのダイレクトメールで送った。そしたら「ありがとう。」だけ言われた。


アーバンギャル辞める

恋と革命ツアーを最後に、わたしはアーバンギャルドを見放した。というのも、受験勉強でそれどころじゃなかったし、「絵を描く夢を諦め」たからである。絵を描くのは、アーバンギャルドのためであって、そこに人生を賭けることができるかと言われたら、親や担任も説得できなかったので、やけくそで何もかもを諦めた。ちまちま描いてた絵は大体破って捨てた。

谷地村啓がなにかしたとかはっきり言ってどうでもよかった。でも、恋と革命ツアーで泣いた時、谷地村啓と鍵山喬一と瀬々信は私をなぐさめて握手してくれた。不快だったけど。

それから2019年までアーバンギャルドをブロックしていた。途中で別垢を使って近況を見てリリース情報を知っては購入して、一応アルバムはコンプリートしている。(ただし少女三部作以後に限る)
アーバンギャルドについてやきもきした気持ちを時々捨て垢でツイートしては5ちゃんねるに貼りつけられ、吉田豪にダイレクトメールしたら一回だけ「谷地村さんの曲が好きなのはわかりますけど、しかたないことだと思いますよ(的なことを7行くらい)」と返事を貰ったことがある。
でも谷地村啓はどうでもいいのだ。社会性のない者は淘汰されることは自明の理なんだから。

今読み返せば、「世の中がつまらないんじゃない、君の生き方がつまらないんだよ」という松永天馬の言葉は神様からのお告げだったと思う。他にも「東京がどこにあるかって? ここに決まってんだろ」みたいな言葉も、一時期は神とか天の言葉だと思って、頑張ろうと思っていたが結局勉強できませんでした。私、面接がへたくそなのできっとAO入試も駄目なんですよ。担任が許してくれなかったし。

この5年の間、私は大学生をやり、契約社員をやった。サークルに入って同期や先輩や後輩に恵まれしあわせだったし、三人みたいに何かを成し遂げたことはないけど、自分はこの仲間には認められている、という確かな自信を持つことが出来た。他に、好きな人に振られたり、彼氏が出来たりした。そして彼氏と別れて、アーバンギャルドを思い出した。

最後にリリースについての所感

鬱くしい国、はワンピース心中と僕が世しか最初から好きじゃない。少女KAITAIの為に嫌だったけどビートステーションでライブを観てCDを買って握手会をしたけど、よこたんに無視されて辛かった。そして後日ファンクラブに入れば通販で買えることに気づき憤った。昭和九十年は箱男に訊けくらいしか聴いて無かった。今ではアルバムを通して聴けるようになったのはアーバンギャルドに対して信頼できるようになったからである。それは自伝を読んで裏付けることができるはずだ。昭和九十一年は通販で買った。HALの惑星くらいしか好きじゃなくて、大破壊交響楽を初めて聴いた時「何希望を見出してるんだよ、悲しめよバーカ」とアーバンギャルドに思っていた。中野サンプラザでKEKKONSHIKIをすると聞いて、もう解散するんだろうなと思ってファンクラブに入りなおした。よこたんのことが好きだったんだな、とあたしフィクションを聴いて再確認した。

中野サンプラザでは夢眠ねむ似の一個下の女の子が隣に並んでいたので戦々恐々しながら話しかけたら丁寧に対応してくれてうれしかった。近くにはタナカカオリさんがいて、ヴィヴィアンウエストウッドに身を包んでいて、心の中で舌打ちしたけど本当は羨ましくてしかたなかった。

中野サンプラザはB席で全然楽しくなかった。最近DVDを見て天馬さんが泣いているのを知った。サンプラザ以降アーバンギャルドをブロックした。でも愛と幻想を買った。特典の小説が気に入った。
愛と幻想がリリースされた半年後くらいに会社を首になった。それまで松永天馬のツイッターアカウントに仕事中も就寝前も呪詛を送った。既読がついた。

2019年はずっと松永天馬にダイレクトメールを送り続けたが、衆院選?あたりでツイッター社に報告されて送れなくなった。それまでに二度「もうやめてください」と言われていた。

2020年、ライブがコロナダウンする前に福岡インザで見ることができてラッキーだった。TOKYOPOP については以下。

また会いたいです。自伝3冊買ってしまったのでどれか一冊サインしてください。会いに行きます。

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