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「高収入バイト」

高収入求人情報サイトで仕事を探した。売春のようなことをするつもりが、年齢制限で高層ビルから飛び降りる仕事しかなかった。

「先に18万渡してやる」
「私の命の価値ですね」
「チッ もっと安いわ ガキが」

お札が本物だと確認し、袖の下に入れた。私の高校はブレザーだが、変にアイデンティティを露出しても興醒めにしかならないとのことなので、ドンキホーテで買った白いセーラー服を着用して仕事に臨む。ペロペロの化繊はパンティラインを透かし、風が吹けば現物が見える。

「じゃあ、早速よろしく」
「あっでもちょっとトイレ行きたいです」
「あー? さっさと向こうで出してこい」

社員さんが指さした方向は出入り口よりすこし右の物陰。屋上にはトイレがないので、要するに立ちション。仕方なく従った。しゃがんでパンツを下ろし、放出する。風で飛ばされた黄色いアンモニア水は都会の街を舞い、誰かの雨になった。本当はトイレがしたい訳ではなく、逃げたかったのだがだめだった。

「出たな?」
「はい、すっきりです」
「じゃあ、やるぞ」

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音楽が流れる。ハンディカメラが私を追う。私はカメラに応えてしなをつくり、スカートをめくり、めいっぱい瞳を潤ませ、くるくると踊る。

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曲がやがて転調し、ステップの数が増える。もたつきそうになりながらもなんとか堪えていると社員さんに飛び蹴りを食らい、私は飛んだ。最初こそふわりと羽になったような感覚だったが、Gがつくと一気に加速した。
高層ビルから飛び降りると、いたはずのない女子高生たちが私を追うように次々とビルから飛び降りて、後ろから私を捕まえようとする。
お前らはカラスなのか。肉に群がる黒衣装たち。しかし実は悪魔ではなかった。私の身体は女子高生たち全員で手繰り寄せられると体勢を整えられて、アスファルトの道路・車両進入禁止地帯に見事着地した。二本の足はしっかりと地面を踏みしめていた。
私は適当にかわいこちゃんを選んでキスして、さっき貰った18万を女子高生たちにばら撒いて道路を横断した。女子高生はゴミ収集車に全員轢かれて死んだ。
それを撮っているカメラがある。逃げるカメラを追いかけ、飛び蹴りした。カメラマンからハンディカメラを剥ぎ取り、映像を確認する。SDカードを抜き取り、袖の下に入れる。ハンディカメラはさっきのごみ収集車が近くにやってきたので、あのローラーの中に投げ込む。

その映像をあなたは見ている。私のアカウントのチャンネルで。視聴者はあなただけではなくたくさんいる。その数が多ければ多いほど広告収入で私は豊かになる。
ねえ。あなたもやってみない? まずは検索してみて。

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