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【精神科の入院にまたメス入るらしい?】

『減らす』としか書かれておらず、具体策が不透明で、気掛かりな記事を発見しました。



5%を実数で考えてみる

精神科の病院は、東京都均衡ですと300床くらいが中堅というか主流でしょうか。
300名が入院できる病院だということ。

その5%とすると、15名です。
記事によると、その15名を退院・退所させる目標を作ったようですね。

4年間で、15名。1年あたり4名程の退院を目指すということ。
これはかなり、だいぶ、現場が苦労する数字ではないかと感じました。




長期入院って?

ターゲットは『長く入院している人』ですが、長期入院患者と呼ばれたびたび俎上に上がります。
5年・10年と入院を続けている人が想定されているでしょうか。

5年とか10年とか病院にいる、信じられませんよね。
ところが、精神科の業界ではそれほど珍しいことではないのです。むしろ短いくらい。

この入院文化は、昔からの日本の風土だとかジョーシキだとかが作り上げたものだと思います。
“病院のせい”というよりは、日本人が皆共犯‥なんて言ったら強すぎますかね。話がそれました。

近年は、長期入院撲滅キャンペーンが進み、新規で入院する方で1年を超える入院をする方は稀…というか、少なくなってきています。
ですので、このような目標数値が掲げられた際、ターゲットとなるのはもっぱら"古参"の患者さんたちです。




1名の退院に1年かかるのは
珍しくない

精神科入院歴50年
ワタシが出会った最長の方です。
昔は、精神疾患に対する人の理解が貧しく、地域で暮らしにくい文化でした。
治療法も今よりは不確実だったため、思うような回復が見られない状況もありましたし。

巡り巡って、病院で暮らす時間が延びたのです。
これが、長期入院。

入院といっても、10年も20年も過ごしていれば自分の生活空間になります。
病院には誰かしら人はいますから安心できますし、毎日のご飯を作らなくても過ごせます。買い物や外部交流も無理しなくて良いですから、社会生活から離れるのは必然。

そういう人たちが、社会の荒波に飛び出すのが退院というビッグイベントです。

退院に当たっては、まずは、様変わりした社会の仕組みを覚えます。
Suicaを初めて購入します。
携帯電話をかっ飛ばしてスマホを持つこともあるかも。
家を探します。
家賃や光熱費の払い方を覚えます。
ゴミの出し方を知ります。
通院の方法を教えてもらいます。
通院にはバス電車が必要なので乗り方と路線を覚えます。
時間がわからないので腕時計や目覚まし時計を買います。
自治会って何か知ります。
お金の取り扱い方を覚えます。
障害年金や通院など制度に必要な手続きをします。
入院友だちと別れ、
新しい通院友だちと懇意になります。
病院によっては、主治医が変わります。
もちろん病棟の看護師とは別れ、外来や他の機関の支援者と関係をつくります。
etcetc.....

加えて、病状のせいで覚えが悪くなっていることも珍しくありません。
どうでしょう。
1ヶ月やらそこらでできるタスクとは考えにくいもの。

長期の入院患者さんが退院するためには、存外時間と労力が必要です。
関わる人も、医師だけではなく看護師、ソーシャルワーカー、家族、本人、友人などなど多岐に渡りますから、皆の意見をすり合わせるにも一苦労。

年間4名といえど、かなりの目標数値であることが予想されます。



あと、やっぱり…

隣の部屋に「精神科の患者さんが越してきたよ」と、聞いたら、どんなカンジがしますか。
この偏ったイメージも退院の弊害です。
アパートを探すときも、精神科の患者だとわかるとだいぶ断られます。

ちゃんと普及啓発できていないワタシたち専門職にも問題は大きいですが、正しい知識に触れようとしない一般の人の姿勢にも見直すところはあるのだろうと思います。


そして…こんなコト言ったら地域で働いている人に怒られちゃうけど…

地域の支援力も大きく改革が必要なのかもしれません。
ワタシも地域で精神障害者の支援をしていたことがあるので、その言い分も心から理解できるのですが…ちょっと力不足が否めないかな、と。
国の補助金が少ないなどの理由で給与も少なく、それゆえに人材が揃わない…などの理由があるのかもしれませんが…理解・知識不足などで対処に困り、すぐに病院→入院という構図を作ってしまう傾向があります。(あくまでも確率論の話ですよっ。頑張っている支援者もたくさんいます)

日本の意識改善、専門職の意識向上どちらも大切なのだろうと思うのでした。

と、いう現実を、制度を作るえらい人たちにはぜひ学んでいただき、新しい制度を構築してもらいたいと思うのでした。これが、まとめw


ぱれぱれ