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「配信ライブの見方がわからない」の声にどう答えるか

音楽業界ではライブ配信が隆盛である。右を向いても左を向いてもライブ配信である。家から出られないお客さん、遠方のお客さんに喜んでいただけてこちらもうれしい限りである。俺は多いときには月に2〜3度自分で音響もカメラもやって配信するし、会場がやってくれるのを含めれば回数は増える。幸せなことに今のところおおむね好評である。

と思いきやこれがすこぶる評判悪い、という側面も実はある。スマホやパソコンに慣れていないお客さんはとにかく配信なんぞわからんとおっしゃるのである。わからなければ調べればよいではないかと思うのだが、おそらく何をどう調べてよいかもわからないと思われる。まあそりゃそうである。俺だって動物の森のことを1ミリも知らない。最近はやりのスイッチというやつも意味不明である。あのゲームを急にやれと言われても意味不明である。だから気持ちは非常によくわかる。

このタイプのお客さんは手取り足取り教えないとライブ配信のチケット料金を払いその日に観賞するということは不可能である。

しかしである。

そもそも今ライブ配信というものが流行っているのはみなさんご存知のとおり新型コロナウイルスの広がりによって世の中が変質したからである。通常のライブと違って配信は「対面である必要がない」からで素晴らしいのである。つまり会わなくていいからやっているのに会って教えなければいけないのは全くもって意味がないのである。

では電話かメールで対応しようということになる。しかしである。コールセンターなどでアルバイトをしたことがある人ならおわかりだと思うが、スマホやパソコンに慣れていない人に会員登録やクレジットカード決済や当日ログインして配信画面にたどりつく手段を教えるのは至難の技である。教えるのが専業の人ですらそれである。当日音響設備を四苦八苦しながら整えて演奏してお片付けもしなければいけない俺たちにそんなことをするひまがあるだろうか。もちろんそんなひまはない。当日見方がわからないと言われてももちろん対応はできない。おそらくそれを言ってくるお客さんもぼくが配信サイトのログインの仕方をしゃべりながら演奏していたらびっくりするだろう。

ミュージシャンなんでしょ?そんなことしなくていいでしょ?スタッフがすればいいじゃない?と言われる。もっともである。しかしである。音響会社がやってくれているイベントならいいが、自分が主催するイベントにスタッフなんぞ連れてくる余裕はないのである。マネージャーなんぞいないのである。なんせ全部俺一人でやっているのだから。

お前がえらくないのが悪いのだ、零細ミュージシャンだから悪いのだ、と言われればその通りですとしか言いようがない。しかし俺はネットに疎いお客さんにも見て欲しいのである。配信を見たい、お金は払う、という意志はあるのに知識がないせいで見られないというのは悲しいことだ。しかし個々への対応は非常に難しい。時間が解決してくれるだろうか。あと5年すればもう少し簡略化されたサービスが増えてくるだろうか。

俺のような零細ミュージシャンでも多い時は100人以上がネットでチケットを買ってくれて配信を見てくれる。しかし個人的な体感ではそのうちの20%の人が当日何らかのトラブルでなかなか配信をご覧になれない。ご自宅のネット環境が安定しない、そもそも違うページを見ている(ツイキャスなのにYoutubeを見ている等)などなど。

そういう人たちをフォローして配信を見られるようにするという事業を立ち上げる人が今後一定数いるのではないかと推測している日々である。しかしスマホ操作を教えるだけで数千円とる業者もいるのである。これもそういうことになるかもしれない。

実はそんなに難しくないんです。ほんとうに。うちの親は70歳手前ですが色々調べてなんとか配信見てくれています。おそらくみなさんも大丈夫です。ツイキャスにもZaikoにもヘルプってあります。検索したらいくらでも出てきます。ぼくが一人一人のお客さんをフォローすることは難しいですが、悪徳業者にひっかからないためにもぜひ少しだけでも調べてみてください。

とはいえ「その調べ方がわかんねえんだよ」と言われたらどうしようもないなあ。しかしせっかく見てくれようとしているお客さんだからなんとかしたいものなのだが、さて今後どうしていこうかと悩みどころである。

そういうお客さんは全部無視していくというのも一つの手であろう。わからんやつは置いてくぞ!というやつである。実際有名な人たちはそうしているっぽい。山下達郎が「見方がわからない」という人を相手にしたりするわけがない。しかしなあ。俺のようなミュージシャンがそんなことをしていていいのか?とも思うのである。

なかなか結論は出ない。世間の趨勢を眺めながらじっくり考えていくとしよう。

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