「集客」の責任は誰にあるのか

音楽イベントにおける「集客」(あまり好きではない言葉だが便宜的に用いる)の責任は誰にあるのか

これはもう決まっている

「企画者」である

企画者はイベント会社の人ということもあるしミュージシャン自身ということもある。ライブハウスの店主ということも多い。

とはいえ誰が企画者であろうともこの原則が揺らぐことはない

しかしながらおかしなことを言う人も多い

自分で企画しておいてまわりの人が客を呼ばなかったら怒り出す企画者というのがこの世にはいるのだ

何度かそういう目にあったことがある

まだ関西に住んでいたころ某店の店主からこっぴどく叱られた

ぼくはその日サイドマンとして行っただけだった。お店に行くのも初めてだった。

お客さんは来なかった。

その日のライブは店主がバンドリーダーの管楽器奏者に依頼してブッキングされたものだったという。店主はそれはそれはぶちぎれていたがぼくは正直言って意味がわからなかった。自分で企画しておいてこの人はなぜぼくらにきれているのだ?

なぜか叱られたわりにその店主からは気に入られてその後何度かオファーの電話がかかってきた。

もちろん全部無視である。そんな店に出演するわけがない。責任を負わない者とは仕事できない。

もうひとつ、大阪の有名なライブハウスでも似たような目にあった。

そこの店長(オーナーではない)がぼくに熱く企画を語って依頼してきた。

ぼくは内容に感激して引き受けた。

一度目はかなりお客さんが来てくれてうまくいった。

二度目は少しお客さんが減ってしまった(それでもその店の平均よりは多かったと思う)

どちらの回もぼくが呼んだお客さんが9割以上である。

にもかかわらず二回目にそこのオーナーは「今日はお客さん少ないなあ!今日は楽やな!」とバイトに言っていた。ぼくに聞こえるように、である。その日のチケット代だって4割くらいはその店が持っていくのに。その店長だってにやにや笑いながら「今日は残念でしたねえ。ま、次がんばってくださいよ」とぬかした。「残念でしたねえ」だと?お前はどこの誰だ?他人事か?お前は何人お客さんを呼んだのだ?あ?

もちろんぼくはそれを口に出すほどに子どもではない。丁重に謝罪してお店を後にした。そしてそこの店にはそれ以降二度と出ていない。それから何度もオファーがあったがいくら老舗だろうが伝統があろうが有名店だろうが出るわけにはいかない。そんなつまらないことで、と言われるかもしれない。でも筋を通さない人とは仕事できない。ぼくは執念深いのである。


東京に引っ越してからも変な人にでくわした。

自分がその人を好きだからという理由だろうか。某ボーカリストを三日連続ブッキングしてその伴奏者としてぼくを呼んだ人がいた。その人はもともと普通のお客さんで別にイベント業で食っているわけではない。つまり素人である。

この人はそれなりにはがんばったが結局自分一人ではお客さんを集めきれずミュージシャンに泣きついてきた。それだけではなくぼくたちから見ればスポンサーからもらったお金を不正な使い方をしていた。

それだけではなくボーカリストに自分の聴きたい曲を何曲もリクエストし多大なる負担をかけた。それに対するギャラはもちろんない。

ぼくが三日間でもらった額は。。。とてもじゃないが普通の生活ができるような金額ではなかった。

その人は本業のサラリーマンでは立派な仕事をしているのかもしれない。でもミュージシャンにもスポンサーにもおかしなことをする人とはもう付き合うことはできなかった。やはりおさらばである。


愚痴のようになってしまって申し訳ない。これは全てもう何年も前の話である。ぼくも若かった。なめられていたというのもあるだろう。実力不足だというのもあるだろう。今ではそんなことを言われることはなくなった。当時は駆け出しなのだから「ぺーぺーのくせに何を生意気言っとるんや呼んでもらえるだけありがたいと思え」と言われたらそれも一理ある。「オファーしてくれた恩を忘れず精一杯お客さんを呼べ!」と言う人もいるだろう。それはそのとおりかもしれない。だがそれは雇う側である企画者が絶対言ってはいけない言葉なのである。雇われる側がそう思うのは自由だが。

もちろん現実的には企画者だけでお客さんを呼ぶわけではない。有名人だってそうだ。SNSやテレビで自分のコンサートの宣伝をする。ぼくだってそんな大きい規模ではないけれども自分が企画者でなくても本当に聴いてほしいと思うイベントのときは宣伝する。インターネット上だったり常連のお客さんに声をかけたりする。主たる責を負うのは企画者だがそうでなくても少しくらいは力になりたい。もっともぼくがネットで書いたところでお客さんが来ることは極めてまれだが。

そうやってみんなで作りあげられるのが理想である。とはいえ責はやはり企画者にある。企画者は集客の失敗の原因を絶対に他人に押し付けてはいけない。

埼玉の某店と東京の某店と京都の某店についてお話をしたい。

いつもぼくにオファーしてくださるお店である。

このライブハウスたちはたとえお客さんが0でも固定のギャラをくださる。お店からのオファーなのだから当たり前だろうと一般的には思われるかもしれない。しかしそんなことをするライブハウスは世の中には少ないのである。つまりリスクをきちんと背負っているということである。そしてぼくにお客さんの数について責めてきたこともない。これが筋を通すということであると思う。

ミュージシャンがどうしても出演させてくれとライブハウスにお願いしたらミュージシャンに集客の責任がある。お店を儲けさせてサイドのミュージシャンに自腹を切ってでもギャラを払う。当たり前である。お客さんが「この人をこのライブハウスに出演させてくれ」と言ってイベントを企画したらそのお客さんが集客をしてお店を儲けさせてミュージシャンにギャラを支払う義務がある。当たり前である。ライブハウスがミュージシャンに出演を依頼したらライブハウスが集客してミュージシャンにギャラを払う。これもまた当たり前である。現実はもちろんすぱっと割り切れるものではなくみんなで協力してお客さんを集める。ただし責を負うのは企画者である。企画者は企画者でない人に文句を言ってはいけない。

ほんと、これだけのことだと思うのだがなあ。

追記:

なんかつっこまれそうやからその前に書いとこ

そこそこ名のあるライブハウスが仕事がないミュージシャンや若手のミュージシャンにチャンスを与える意味でオファーをかけるということがある。そういうチャンスをもらったという恩があるのだから集客をがんばるのは当然だろう、という声があるのはもちろん承知している。

でもなあ、わかってほしいのはそれを企画者が言っちゃいかんのよってとこですよ。もしその結果集客状況がよろしくなかったのならやっぱり企画者の責任なんですよ。企画者がそのミュージシャンの良さをお客さんに伝えられなかったということなのだ。そしてそのミュージシャンが演奏してもお客さんなんか来ないということを見抜けなかったのも企画者の責任なのだ。その日は黙ってギャラを渡して次からオファーしなければいいだけなのだ。




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