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はじめまして、ボグダン・パルホメンコです。〜「ぼくのおじいちゃんのこと」後編〜

こんにちは。ボグダン・パルホメンコと申します。ウクライナで生まれ、日本で育ちました。現在はキエフ在中です。日本の皆様に分かりやすく、ウクライナの現状や歴史、皆が抱えている不安や懸念、今後の動向を現地からお伝えしていきます。

noteの更新第二回目は、ぼくのYouTubeチャンネル「BOGDAN in Ukraine」の中から、2022年3月11日に公開したおじいちゃんとの対談後編をお届けします。

ボグダン:
日本では、東日本大震災以降、「絆」ということばがつかわれるようになりました。震災は、愛する家族がいつ亡くなるかわからないという現実を私たちに突きつけました。

おじいちゃんは、家族の「絆」をどのように考え、日々、過ごしていますか?

ウラジミール:
1995年の神戸の震災以降、私たちの家族には日本人の知り合いが増えました。私の奥さんはその人たちに会いに日本に7、8回行ったし、日本からウクライナを訪れた人もたくさんいました。

その時に、ホテルに泊まった人もいたけど、私のマンションに泊まった人も多いんです。いま、戦争が起こって、その人たちから、「何かできることはありますか?」と連絡があります。

そんな絆、愛情、ささえあいを、毎日感じて感謝しています。

311の震災のときには「日本のみなさんのために、私は何ができるかな」と考えた。今日は逆のポジション。みんなからの応援を受けてる。私は、近いうちにこの暴挙は終わると信じています。私はいまのこの戦争の状況が信じられません。

なぜなら、じつは私たち、家族どうしで戦っているんです。私の妻の家系はレニングラードにいます。息子の家系はモスクワに。

若い頃のおばあちゃんとおじいちゃん

さっきも言いましたが、こういう状況は、新しい人類が誕生するために起きているのかもしれない。変化後の新しい世界に、ぼくは立ち会えないかもしれないけれど。

私の孫たちは、将来、変化したあとの世界でいま経験していることを誇りに感じるだろう。

今回の戦争という状況のおかげ、というか、その影響で、私たちはお互いに愛情を深め合うことができた。いま、キエフに残っている人は、全員ボランティアをしている。助け合いの精神ができている。そのおかげでやっていけている。

ボグダンありがとう。大阪生まれのステファンにも、ありがとうと言いたい。

キエフに残り、キエフにいる人々を支え、キエフの現状を世界に伝えている彼らの行動は、大きな意味がある。私がいまこうして日本のみなさんに話せるのも孫たちのおかげです。

いまのこの状況は、世代間の絆も育てていると思う。孫たちにとっては最初の戦争だけれど、私にとっては、ふたつ目の戦争。私たちの世代に新しい世代がジョイントしてくれて、世界を変えようとしてくれている。ありがとう。

そして、日本のみなさんが、私たちを熱心にサポートしているのをニュースでもみていますし、強く感じています。

ありがとう。

僕の個展の会場で、ママのナタリアと。

今回の変化は非常に大きく、これについていくのは大変だと思う。私自身、88年の人生で、大きな方向転換が4回あった。変えたいからじゃなくて、状況によって変えざるを得なかった。ぼくが過去に4回適応したように、孫の世代が速いスピードで成長し、変化に適応しているのを見て誇りに感じています。

いま、世界は、金銭的労働主義のもと、ファイナンスが全体を支配している。ものすごくがんばって働かないと何も手に入らない。でも、それがだんだんと変わってきて、現状では、「インテリジェンス60:労働40」くらいにシフトしてきていると思う。

日本でも、このシフトを実現している企業は成功している。世界全体がシフトしていることを示すいい例だと思う。現実の流れを否定するのではなく、適応して前進し、しかも進歩している企業たち。それにたいして感謝を伝えたい。

人類は、こんなふうな変化は、できればやりたくないのかもしれない。でも宇宙はシフトしていく段階にあって人間をそう仕向けていると私は思う。

私がこの戦争の前からずっと考えていたのは、物欲主義から精神主義へどうやってシフトするかということ。まだまだそれが足りないと思っていましたから。

例を挙げて話してみます。

たとえば「重力」。りんごは地面に落ちます。これは、大きいものに小さいものが引きつけられるという法則のせいです。

地球からロケットを飛ばすのには、ものすごいパワーが必要です。なぜなら、すごく大きい地球にちいさいロケットが引っ張られてくっついているわけだから、その地球から離れて飛ぶためにはものすごいパワーが必要なわけです。

科学の研究は、物質を扱って、研究することができます。観察したり実験して見せたりもできる。でも、精神的なものは、どうやって見せたらいいか、わからない。私は科学者ですから、物質のことを説明するのは得意だけど、精神的なものをどうやって見せたらいいかは、よくわからない。自分で触れられないものを、どうやって感じたらいいんだろう。こういうものを人間が理解するのは大変です。

私は「音叉」をよく実験で使います。音叉を鳴らすと、周りにある音叉が共鳴します。ひとつの音叉を打つと、まわりの音叉が全部その周波数になる。人間も一緒。いいものはいいものと共鳴する。悪いものは、悪いものと共鳴する。

自分がポジティブな発信をすると、自分と同じようなものが集まってポジティブな変化をひきおこす。ネガティブならネガティブで同じことが起きる。これも「共鳴」だと私は思います。

また、「種をまいて収穫する」という言い回しもよくつかいます。よいタネをまけば、よい収穫がある。悪いタネをまけば、悪い収穫がある。とうもろこしのタネをまいても、小麦にはならない。自分がネガティブなことをやれば、自分にネガティブなものが集まってくる。

だから、いま、ボグダンがポジティブにフォーカスしてみんなに発信しているのはとてもよいことです。それに共感して集まってくれる人がかならずいるはずです。彼らもかなり疲れてると思うけれど(笑)。

ペットフレンドリータクシーの広告撮影時のステファンとヨルカ

もうひとつだけシェアさせてください。

やる前に目的を決めなくちゃいけない、ということです。たとえば、ライオンが餌を食べたいときのことを想像してみましょう。狩りをするとき、「食べたい」という目的がまずある。「食べたい」「狩りをしなくては」「獲物はどこだ」、という順番で動いていくことになる。ライオンは、狩りのタイミングから逆算して、狩りの1時間前には何をして、2時間前には何をして、というふうに行動しているそうです。人間も、まずは目的を決めるのが大切。

それから、情報を収集して、分析して、最終的には、サービスや行動として実現されていく。

すべては頭のなかで思うことからはじまる、ということを理解してください。頭の中にイメージをつくることが大切。成功したいなら、成功したいことを考える必要がある。ですから、いまの戦争を終わらせたいのなら、いまのことだけを考えるのではなく、それが終わった後のことを考える必要があります。

ボグダン:
ウクライナが核を放棄したことについてどう思う?

ウラジミール:
核兵器は危ない火遊びです。ウクライナは、世界第3の核兵器大国だった。放棄したのは正しい判断だったと思う。私たちはブダペスト覚書(1994年)と共に核を放棄した。ブダペスト覚書には、ロシア、イギリス、アメリカが署名している。

これらの国が、いざという時にはウクライナを守ってくれるという約束だった。その協定に署名したロシアが、守るべきウクライナのことを攻めてしまった。ですから、いま、とてもつらい状況にある。マリウポリの街なんて、焼け野原になって、建物がほとんど残っていないような状態になっている。

ロシアがずっと攻撃するから、赤十字も物資を運べない。マリウポリでは、家が焼かれたから、地下や防空壕に潜って生活をしている子供たちがいるんですが、水やごはんがないから、病気になって死んだりしている。

核を放棄したときは、こんなこと想像してもいなかった。でも、それをいまあれこれ言ってもしょうがない。いまのウクライナをサポートしてくれている人々や国に感謝します。

戦争がはじまる前は、キエフの中央にある独立広場のメインストリートで、軍隊が平和パレードをしているのがおなじみの光景だった。けれど、いまはまったく違う景色になってしまった。同じ兵隊でも、シチュエーションが180度違う。激戦が続いているし、死ぬ覚悟で戦っている。

でも、ウクライナが勝利して戦争を終わらせるときが近づいているのを私は感じています。この戦争が終わったとき、ウクライナは信用とか信頼を勝ち取ることができているだろうと私は思っています。

ですから、すべてを総合的に評価すると、たとえこんな状況になっているとしても、ウクライナが核兵器を放棄したことは正しい判断だったと思う。

私たちはルールを守ったのにブタペスト覚書にサインした他の国はそれを守っていない。これは正しくない。これは、世界の組織が機能していないということだと思う。

いま、ウクライナは前線で戦っている。ウクライナでのことははじまりにすぎなくて、これからウクライナ以外のいろんなところでいろんなことが起こって、世界のシステムは変わっていくでしょう。

だから、ウクライナ以外の国の人たちも、安穏としていないほうがいい。みんなのところでもこんなことが起こりはじめる。そうなる原因がいまのこの世界にはあるんだから。いま、ウクライナの空は、戦闘機が飛べる状況。

これをストップさせないでいる国たちに、感謝を述べたい──もちろん皮肉だけどね──。

でも私たちは耐え切る。それだけの強さを持っているから、負けない。おそらく、誰かが実際にウクライナみたいなポジションになってみないと世界は変わらない。だから、いま、ウクライナがその役割を担っている。

ウクライナはみんなが恐れていたロシアに対して、大きな恐怖心をのりこえて「NO」と言った。突きつけられたロシアはいま悪いことをしている。ロシアは、人口がウクライナの4倍、面積も10倍以上、それくらい大きい国。その攻撃をウクライナがひとりで受け止めている。

でも、ウクライナは勝利するでしょう。なぜなら、すべてをかけて、みんなで助け合って戦っているから。軍人もそうでない人も、みんながそれぞれができることをして戦っているから。

たとえば、お医者さんは、一回病院に行くと2、3日病院から帰ってきません。人々は長蛇の列を待ってまで、献血をしている。周りを見て困っている人を助けない家族なんていない。

そういったことがぜんぶ統合されて、ひとつのエネルギー、愛情になっている。これは、すごくいいことです。

ほぼ毎日、大統領はみんなの前に出て国民のために演説をしてくれている。演説の最後に、毎日、ヒーローの名前、ヒーローのいる町の名前をいう。その人たちが、すべてをかけてウクライナを守っているから。

そこで挙げられるヒーローたちは、多くの場合、もう生存していない人々です。

たとえば今日は13人のヒーローの名前が呼ばれた。みんな軍人で、半分はもう死んでしまった人です。このヒーローに挙げられた人々にも家族がいる。この家族のために、ウクライナからリスペクトとサポートがあるべきだし、きっと絶対あるだろうと確信している。

また、世界各国からの志願兵が集まっている。お金ではなく、平和をとりもどすという目的のためだけに来てくれている。

私は本当に感謝している。すべての人に感謝します。すべての行動に感謝しています。

あとひとつだけ言わせてください。

こうやってみんなが見てくれている。メディアの人たちもこれを見ていると思う。私たちのことを、あなたたちのビジネスとしてみるのではなく、世界を変えるための行動に移すことを考えてほしい。

お願いします。

みんな、ありがとう。

優しさ、幸福が、みなさんに訪れますように。

(おわります)

YouTubeチャンネル「BOGDAN in Ukraine」では、最新のウクライナの情報を発信しています。ぜひご覧ください。


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