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ゼレンスキー大統領・日本国会演説を翻訳しました。

こんにちは。ボグダンです。
2022年3月23日(水)日本時間18時から行われたゼレンスキー大統領の日本国会演説。すでに様々な媒体で翻訳が出されていますが、ウクライナに生まれ、日本で育った僕なりに大統領の言葉を日本語にしました。

※トップの写真は、アントンくん(Anton Saveliev)撮影の2015年のキエフです。

細田衆議院議長!山東参院議長!岸田総理!
ウクライナの大統領として、史上初めて日本の国会でお話できることを大変光栄に思います。

東京とキエフは8193キロメートルの距離があります。この距離は、飛行機で移動すると平均で15時間程度かかります。もちろんルートによって異なりますが。しかし私たちが自由を感じる気持ちについて、お互いの距離はどのくらいあるでしょうか。生きたいという願う私たちの距離は?平和を望むことについての距離は。

2月24日、私たちは日本との距離を1ミリも感じませんでした。私たちの気持ちの伝達には、数秒もかかりませんでした。日本の皆様はすぐに助けの手を差し伸べてくださいましたよね。心から感謝をしております。

ロシアがウクライナ全体の平和を破壊したとき、私たちはすぐに世界の現実を認識しました。本当の反戦への運動。本当の自由のために。本当にグローバルなセキュリティのために。すべての社会の調和のとれた本当の発展のために。日本はアジアにおけるリーダーになりました。日本はすぐにロシア連邦によって行われたこの残忍な殺戮を止めるために動き出してくださいました。ウクライナに平和が訪れるよう、日本はすぐに働きかけを開始してくださいました。ウクライナの平和は、同時にヨーロッパの平和を意味します。これは非常に重要なことです。地球上のすべての人にとって重要なことです。ウクライナの平和がなければ、世界の誰もが、自信を持って未来に目を向けることができないからです。

チェルノブイリで起こった事故が何であるかを皆様良くご存知だと思います。1986年に大爆発が起こった原子力発電所の放射線放出。その結果は、地球のさまざまな部分で観測され、記録されています。チェルノブイリ発電所周辺の30キロメートルのゾーンは今でも閉鎖されています。ここはとても危険な地区です。この地区には森がありますが、そこには何千トンものがれきや救助に使われた車両などの汚染物質が、地面に大量に埋められています。

2月24日、ロシアの装甲車両がこの土地を走り、放射性物質が大量に含まれたホコリが空中に舞いました。チェルノブイリ発電所はロシア軍に占領されました。彼らは暴力と武器という大きな力でそれを行いました。想像してみてください、大惨事が起こった原子力発電所を。破壊された原子炉は覆われ、クォークで閉じ込められています。放射性廃棄物貯蔵施設は今でも稼働を続けています。ロシアはこの施設すらも戦場の場にしました。そしてロシアは、この30キロメートルの閉鎖された地帯を利用して、私たちの防衛軍に対する新たな攻撃を準備しているのです。

ロシア軍がチェルノブイリを離れたとしても、彼らが与えた被害を調査する為だけにウクライナは数年単位の途方もない時間が必要になります。何千トンもの放射性物質が保管されている施設のどの部分が損傷したのか、そして、放射性物質が大量に含まれたホコリがどの様に地球上で広がったのかを知る事が必要だからです。

皆様!ウクライナには4つの原子力発電所があります。4つの発電所には15の原子炉があります。そして今、それらすべてが脅威にさらされています。ロシア軍は、ヨーロッパで最大のザポリージャ原子力発電所をすでに戦車を使って爆撃しています。その結果、何百もの産業プラントが被害を受け、その多くはとても危険な状態です。ガスや石油のパイプライン、炭鉱も砲撃されるかもしれない状況にあります。

先日、ロシア軍はウクライナのスームィ地域の化学プラントを爆撃しました。その結果、アンモニアが流出したことが確認されています。我々はシリアで使用されたサリンによる化学攻撃の可能性があることについても、警告を受けています。

そして、世界の政治家の中で一番の議論はロシアが核兵器を使用した場合、どのように対応するかという事。核兵器の前では、どんなに自信を持った人でもどんなに自信を持った国でも大きな危機感を覚えます。

私たちの軍隊は28日間ウクライナを英雄的に守ってきました。世界最大の国ロシアからの本格的な侵略を、28日間我々自身で受け止めているのです。しかし、ロシアは大きな可能性を秘めた国ではありません。彼らは最も影響力がある訳でもありません。そして彼らの道徳心は皆無に等しい。

ロシアは、ウクライナの平和な都市に対して、1000発以上のミサイル発射と無数の空爆を行いました。数十の都市を破壊しました。いくつかの都市は完全に消滅しました。ロシアの占領下にある多くの町や村では、亡くなった友人や隣人を埋葬することができず、破壊された家の庭などに埋めることでしか弔いができない状況です。

ロシアはすでに数千人のウクライナ人を殺害し、その中には121人の子供が含まれます。

約900万人のウクライナ人が、ロシア軍の攻撃から逃げる為に故郷である家を離れることを余儀なくされました。

ウクライナの北、東、南の地区にはほぼ人が住んでいません。

ロシアは我々の交易路である海をも遮りました。貨物船輸送の海路を封鎖する事によって、自分達(ロシア)の力を世界の国々に見せつけているのです。

皆様!

今日、世界の安全が完全に崩壊されない事を保障できるのは、ウクライナ、そして、パートナーとなる国との連帯だけです。それは世界でまだ自由が国民に保障される事を意味します。人々と社会の多様性の維持のために。国境の安全のために。私たち、私たちの子供たち、孫たちの平和を守るために必要なことです。

皆様もお分かりですよね?国際機関が機能しなかった事を。国連と安全保障理事会ですら機能しなかった事を。このままでは何ができるでしょうか。改革が必要です。正直さが必要です。話し合うだけでなく、本当に決断し、行動し、効果を発揮する必要があります。

ロシアのウクライナへの戦争で世界は今、不安定になりました。世界は多くの新たな危機に直面しています。そして今、あなたは明日は何が起こるか想像ができますか?

世界市場の混乱は、原材料の輸入に依存しているすべての国に問題を引き起こします。環境と食品の課題は前例のないものです。そして最も重要なことは、地球上のすべての侵略者、侵略国家が戦争や殺戮を起こした場合、非常に大きな罰を受けるということを理解することです。つまり戦争を始めるべきではないことを、明示的かつ潜在的に確信させることなのです。

彼らは世界を破壊してはならない。そして、責任ある国家(反戦同盟)が平和を守るために団結する事も絶対に論理的に正しい事なのです。

私は日本がこのような歴史的な瞬間に、現在のような原則的な立場をとってくださったことにとても感謝をしています。日本はウクライナを本当に助けています。ウクライナの平和を回復するため、日本はアジアの中で一番最初にロシアに圧力をかけました。ロシアに対する制裁を支持した方々に対して、私はさらなる活動を続けて頂きたいです。

今の状況を安定させるために、日本はアジアにおけるパートナーの国々と団結し、さらなる努力を行って頂くことをお願いします。ロシアがウクライナに行っている残忍な侵略の津波を止め、彼らを平和に向かわせる事が重要です。その為にはロシアとの貿易の停止を行い、ロシア軍へ資金が流れぬよう、ロシア市場から企業を撤退させる必要があります。ウクライナはロシアによって多大な被害を受けています。ウクライナという国、そしてロシアの殺戮からウクライナ市民を守っているウクライナ防衛軍の兵士へのさらなる支援が必要不可欠です。

私たちは今、ウクライナの再建についても考え始める必要があります。ロシアによって破壊された都市とそれによって荒廃した領土の復興について。

避難を余儀なくされたウクライナの人々は、慣れ親しんだ自分たちの故郷に戻る必要があります。彼らが育った場所。彼らのふるさと。その気持ちは日本のみなさんにきっとご理解いただけると思います。

我々は平和を保障する新しいシステムを開発する必要があります。平和を脅かす脅威が生じた場合に、予防的かつ強力に行動することがとても重要です。

現在の国際構造で、そのような安全や平和を保障する事は可能ですか?

この戦争の状況を見れば一目瞭然、あってはならないことが起きたのです。だから新しいツールを作る必要があります。攻撃に対して、予防的かつ強力に機能する新しい保障。これは本当に役に立つ物でないとダメなのです。この新しいツールを開発するために、日本が大きなリーダーシップを発揮する事が必要不可欠です。ウクライナのために、世界のために。私から日本へのお願いです。

世界が再び自信を取り戻すために。明日、世界がどうなるか想像できるように。世界が安定し、平和でいられるように。私たちにとっても、将来の世代のためにも。

皆様!日本の皆様!

共に努力をすれば、ウクライナと日本は想像以上にたくさんのことができます。

私は日本がどんなに素晴らしい歴史を持っているかを知っています。和を構築し、それを守り抜く方法を日本は知っています。あなた方は原則に伴う、人生をとても大切にします。そして環境を守ります。このルーツはあなた方の文化にあります。ウクライナ人は日本の文化が本当に好きです。わたしはこのことを明確な根拠をもって話しています。

私がウクライナの大統領に就任してから6か月後の2019年に、妻のオレナは視覚障害のある子供たちのためのオーディオブックを作成するプロジェクトを行いました。そこで彼女は日本のおとぎ話を選んで、ウクライナ語に翻訳した物を子供たちに読み聞かせました。この日本のおとぎ話はウクライナ人である私たちにとっても子供たちにとっても、大変理解のできる内容でした。そしてこれは日本が持つ広大な文化へのウクライナのファーストステップだと私は感じました。

私たちの価値観はとてもよく似ています。日本とウクライナとの間には地理的に大きな距離はあっても、同じ温かい心を持ったわたしたちに実際の距離は存在していないのです。ウクライナと日本が協力してロシアへのさらなる圧力を強めれば、我々には平和が訪れるでしょう。そして、私たちは国を再建することが出来るでしょう。そして国際機関を改革する事も出来るでしょう。

わたしたち全員にとって重要なその時に、今と同じように日本はウクライナと共にいてくださることを確信しています。

ありがとう!

ARIGATOU GOZAIMASU!

ウクライナに栄光を!

日本に栄光を!

本日このあと22時から、YouTubeチャンネル「BOGDAN in Ukraine」
で生配信
をします。今日のテーマは「ウクライナ分断について思うこと」。おじいちゃんと二人で話します。ぜひご覧ください!
















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