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台北でひとり ⑧ 『なぜアートを売りたいの?』

「台湾に行ったらT氏に会うといいよ。」

そんな風に言われたのは去年。事前にT氏に連絡したけれど、今回ぼくが周遊する台北とは離れた『高雄』という街が彼の拠点。台北と高雄では新幹線で1時間半の距離。東京から名古屋までの時間。ということで今回は諦めていたのだけれど、2日目の真夜中3時くらいかな、ふと思い立って、

「明日会わない?」

と連絡してみる。ひととの出会いこそ旅である。すると即答で「いいね」と返ってくる。どんな手を使っても時間を作るから高雄に来なよ。と。

台湾の新幹線は何度か乗ったことがあったので比較的スムーズにチケットを買えたし、台湾の名物グルメのひとつでもある『台鉄弁当』もゲット。

スパイスの効いた甘い味噌ダレにつけた排骨(パーコー)つまりスペアリブが白米の上に乗っかったシンプルなお弁当ですが、これがたまらない。八角が苦手なひとには地獄。みんながみんな食べ始めるので車内が八角の香りに包まれるので、苦手なひとは新幹線に乗る際はマスク必須。

高雄は台湾第二の都市ということだけあって、見た感じ台北と変わらず。南下していることもありちょっと蒸し暑い。植物も南国。

駅まで迎えに来てくれたT氏に誘われ、案内されるがままに高雄の街をドライブ。彼が経営するいくつかのお店をまわりながら、PARK GALLERY がどうしたら台湾でビジネスできるかを一緒に考えてくれた。例えば、彼のお店の壁やシャッターはキャンバスとして使えるとか、彼の知り合いが経営するアミューズメントパークの一角にポップアップストアを出すことは容易であることなど、いろいろ提案してくれた。ぼくも彼の期待に応えたくていろいろと高雄のこと、彼のことを聞いた。

高雄でアートをやるのは容易じゃない。

日本語が話せるというスキルを活かして『高雄』に今までなかったさまざまなサービスを生み出して来たT氏。翻訳の仕事で得た報酬は、高雄に暮らす若い学生に向けた無償の日本語教室に投資した。その教室で日本語を教わった学生は彼の経営する日系の飲食店や雑貨屋で働き、日本の文化を造詣をさらに深め、そのお店をさらに盛り上げて行く。日本語のニーズがある台湾の街で、彼はニーズを生み出し、技術で埋めて行く。アートのニーズはない。でも、高雄と日本とのあいだに、あたたかい何かがある。

それを「サービス」という。と彼。

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台湾に日本のアートのニーズはあるか?という問いに対して、
ニーズは探すものではなく作るものだと、彼はシンプルに応えた。

そのメッセージを見て、距離やお金は関係ないと、高雄行きを決めた昨晩。

その後もT氏とたくさんの質問をやりとりしたけれど、

「 JUNYA はなぜアートを売りたいの?」

という質問が一番こまった。

部屋が狭い日本で、壁に釘も打てない部屋で、壁に飾るアートを売るということはどういうこと? アートの価値がわからないひとたちがたくさんいる日本で、なぜアートを売るの? と。何をサーブできるのと。

このアミューズメントパークのホテルなら部屋は広いしアートが売れるだろうとのこと(営業してみようかな)。

別荘地帯。ここの富裕層になら売れるんじゃない? とのこと(営業してみます)。

結局ぼくは何も応えられず。

話は次第に、『高雄」の話に。

日本人の台湾観光は『台北』一辺倒で、高雄への導入はない。その『高雄』へ日本人を呼ぶためにはどうしたらいい? と。これはぼくが日本でやってる仕事(スキル)を活かせるかもしれない。すこし考えてみることにする。それが僕のサービスである。

T氏はレストランばかりでごはん食べてるのかなって思ってたけど、この日のおもてなしは高雄名物の葱油餅(写真参照)と缶コーヒーだった。これはとんでもなく美味しい。これを日本で売れないか、日本の缶コーヒーを輸入できないかというニーズの話も興味深い。← 大阪のねぎ焼きと缶コーヒーの方がうまいで

帰りの新幹線で考えたことをレポートにまとめてみる。なかなか難しいけれどおもしろい。高雄のこと。アートのこと。ニーズのこと。言葉のこと。ぼくのこと。でも、とりわけ答えられなかったアートのことの方が気がかりで、ぼくはもうこのまま PARK GALLERY をやめたくなったりした。

このままアートを売るのは違うのかもしれない。

というより、ぼくはアートを売りたいんじゃなくて、アートをきっかけにアート以外の何かがやりたいのだ。つまりぼくが売りたいのは想像力かもしれない。想像力となると売りたいものではない。わからない。

この旅をきっかけに本当に大事なものは何なのか考えることになる。帰って来たいまも考えてる。

高雄から帰って台湾の友人 hikky とごはん。

日本語がじょうずなのはもちろん、日本語のニュアンスもわかってくれる hikky と『ニーズ』の話。

「そういうことはあまり問題じゃない」

と言われて、紹興酒いっきのみ。

hikky と waiting room へ。たまたま店にいた trix(ex.透明雑誌)と ablu に会って、やりたいこと(売りたいもの)、出会いたいものを思い出す。

ぼくは、友達の作るいいものを一生リコメンドしたい。売りたい。

と思い出す。

おやすみなさい。