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【 レビューあり 】 Non. 『夏のみどり しろの冬』 福島県

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ZINE REVIEW by 加藤 淳也(PARK GALLERY)

47都道府県、全国から ZINE を公募し、展示・販売する COLLECTIVE 。47都道府県というのがポイントだ。

よく聞かれるのが「地域性ってあるんですか?」という質問。
ZINE 自体に<地域性>というものが出るか、と聞かれればそれは一概には言えないと思うけれど、住んでいる地域の<環境>が、作り手の感覚や作風に影響しているとは言えると思う。田んぼの真ん中で閉塞感の漂う都会を表現することはやはり難しいし(逆もしかり)、日頃の人との会話の数、見てる色数、音の数、その全てが、毎日の食事のように栄養になっているとぼくは考えている。多ければいいわけではない。自家中毒に陥ってしまうから、少ないのはあまりよくない。


五感をフルに使うような作家活動をしているならなおさら。

今回の参加者の中には、「ある地域」から「ある地域」に移住をして、そこが拠点となっている人が何人かいる。

ぼくも子どものころ親の転勤でいろいろなところに行ったということもあって、引っ越しで変わる環境、逆に言うと、環境がもたらす影響に対してすごく興味があるから、「移住者」の ZINE は比較的、好意的に見ている。

今回紹介する福島在住のフォトグラファーの Non.さんもその一人で、2018年の COLLECTIVE に参加してくれた時はまだ静岡が拠点だったと記憶している。その時は連名で、詩と写真の ZINE だった。

今回はソロとしてはじめての参加。しかも福島からエントリー。
届いたのは『夏のみどり しろの冬』というタイトルのフォトジンで、福島に引っ越して2年の、慣れない土地の中で、夏の眩しい光とみどりと、冬のきらめいてまばゆい白く透き通る冷たい空気を切り取った1冊。旅行のはじまりとも終わりとも言えない霞んだ線路の景色からはじまり、夏から冬にかけて移ろう季節の、みずみずしさが色と光となって写真に映り込んでいる。

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言葉自体は少ないけれど、どこか詩的な写真が並ぶ。いや、写真だけれど旅先から誰かに向けた手紙のような、そんな景色が続いていく。映画のワンシーンのような切り取り方は前作にも近いものを感じるけれど、前作よりもう少し「土地のにおい」がするというか、「わたしは、いま、ここにいる」という強い意志のようなものを感じることができる。

東北は春夏秋冬のコントラストが強いから、秋をあえてなくし、夏から冬を撮ることで、そこに暮らしている人たちの『リアル』が生まれる。抜けるような夏と、静かな冬。

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そこに暮らしている人からすれば何気ない景色かもしれないけれど、Non.さんからすれば、いまもまだ新鮮で、大切な景色なんだということがていねいに伝わってくる。

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そんな彼女の新鮮な視点で、これからももっとたくさんの街や季節、小さな幸せを切り取っていくのだと思う。これからも ZINE や SNS でロードムービーのような景色たちを見られるのを楽しみにしながらまた次の ZINE も期待したい。

レビュー:PARK GALLERY 加藤 淳也


---- 以下 ZINE の詳細と街のこと ----


【 ZINE について 】

福島に引っ越して2年。慣れない土地の中、夏の眩しい光とみどり、冬の白く透き通る冷たい空気がきらめいてまばゆい。そんな夏と冬を撮り、個人としてはじめての photo zine を作りました。

価格:¥1,300(税込)
ページ数:28P
サイズ:148 × 210mm


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作家名:Non. (福島県郡山市)

1989年静岡県静岡市出身、現在福島県郡山市在住。
フィルムとデジタルで映る景色の日々を撮り続けてます。
使用カメラ:contax139quartz,fujifilm xt-100

https://www.instagram.com/non_wish21

【 街の魅力 】
東北の玄関口である、福島県の真ん中にある街。春夏秋冬の季節の移ろいがはっきりし五感を刺激されます。個人店も増えお店とお客との距離も近く、のんびりと居心地が良く感じられます。
【 街のオススメ 】

① 和久屋 … 郡山市の街中にある老舗の民芸店。福島の民芸品を多く取り扱っており、やさしい店主が郡山を見守ってます。

② 開成マルシェ … 5〜12月まで月に1回開催されるマルシェ。人々が集まり、地元の美味しい食材が目にも味も楽しめます。

③ 安積歴史博物館 … 旧福島尋常中学校本館。昭和52年に国の重要文化財に指定されてます。ブルーが特徴的な講堂や教室は当時のままで館に入る光が柔らかで落ち着く場所です。
【 同じ街で活動する人 】
郡山写真部 … 郡山市主催の写真部。郡山市の魅力を郡山市民の目線で写真を通して発信し続けてます。


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